
<2025年11月30日>カムチャツカ地震津波に関する宮城・沿岸15市町住民調査
7月30日に発生したカムチャツカ半島付近の地震では、県内沿岸市区町に津波警報が発表され、多くの住民が実際に避難行動を行ったことから、宮城県はアンケート調査を実施し、その結果が公表されました。沿岸15市町の住民のうち、ポケットサイン(デジタル身分証アプリ「ポケットサイン」内のミニアプリ)を導入し、アンケートアプリに同意している方に協力を頂きました。
主な結果を紹介します
1)地震発生時刻は朝の8時25分頃であり、津波警報の発表時に「自宅」(48.3%)にいた人が最も多く、次いで「職場・学校」(39.5%)にいた人が多かった。
2)津波警報を聞いたとき、津波について強く思った(25.7%)、または「少し思った」(52.3%)と回答した人を合わせると、78%の人が実際に津波が来ると認識していた。
3)津波に関する情報を知った方法として最も多かったのは、「テレビ・ラジオ」(67.7%)で、次いで「緊急速報メール」(48.8%)となっており、これら二つが主要な情報伝達手段であった。
4)津波警報が出た後に「避難した」人は25.5%、「避難しなかった」人は74.5%。避難しなかった理由については、「避難指示の対象ではなかった」(61.5%)が最も多く、次いで「自宅が安全だと思った」(31.3%)が多かった。
5)避難を行った人のうち、津波警報や避難指示を知ってから「15分以内」に避難を始めた人が39.3%、「15分~30分後」が36.1%で、約75%の人が30分以内に避難行動をとっていた。
6)避難の際の移動手段は、「自動車」(66.4%)が「徒歩」(29.5%)を大きく上回った。その理由としては「移動距離や荷物などを考慮したため」(41.8%)、「暑さなど、天候の影響を考慮したため」(26.3%)など、徒歩避難の原則(「歩いて避難するのが基本/ルールのため」:21.0%)よりも現実的な要因が優先されたことが示唆されている。
7)避難先で困ったこととしては、「暑かった(冷房がなかった)」(27.1%)、「混雑していた」(18.0%)、「飲料水が足りなかった」(14.9%)などが挙げられた。
8)津波ハザードマップを見たことがある人は96%。「よく見て内容も理解している」が40.5%、「見たことはあるが詳しくは覚えていない」が55.3%となっており、全体の95.8%が見たことがあると回答しているものの、内容の理解度についてはさらに高める余地があることがうかがえる。
https://www.pref.miyagi.jp/documents/61385/pressrelease.pdf
<2025年11月23日>11月9日の三陸沖地震および津波について
1月9日(日)17時03分ごろ三陸沖で地震が発生しました。震源地は宮古の東約130km付近でマグニチュードは6.9(速報値6.7から更新)、震源の深さ約16km(速報値約10kmから更新)でした。最大震度は震度4(岩手県盛岡市、矢巾町、宮城県涌谷町などで観測)、沿岸では震度3程度を観測、西北西―東南東方向に圧力軸を持つ逆断層型で、プレート境界で発生したとみられています。その後、岩手県沿岸に津波注意報が発表され、一部地域で避難指示も出されましたが、当日8時過ぎに解除されました。実際に観測された津波の高さは久慈港・大船渡で20センチ、宮古・釜石で10センチでした。この地震発生後も、震度1以上の地震が複数回観測されており、気象庁は1週間程度は同程度の地震に注意するよう呼びかけています。
この地域では、マグニチュードが7を超えると「北海道・三陸沖後発地震注意情報」が出されることになっていますが、今回は発表対象にはなりませんでした。三陸沖は、過去に明治三陸地震津波(1896年)や昭和三陸地震津波(1933年)といった、M8クラスの巨大な「津波地震」が繰り返し発生し、甚大な被害をもたらしてきた地域です。1992年7月には今回と類似した群発的な地震が発生、被害は少なかったものの、三陸沖が地震と津波の活動的な地域であることを改めて示す事例となりました。
<2025年11月16日>10月に発生した仙台市内での浸水被害について
仙台市沿岸部での豪雨・浸水被害について報告いたします。今年10月1日、仙台市沿岸部では「1時間に約100mm」という局地的な猛烈な雨が観測され、道路や住宅地で冠水・浸水被害が発生しました。具体的には、宮城野区福室・JR高砂駅周辺で「膝下までの冠水」「車両の立ち往生」が報告されています。住宅の床上浸水に加えて車の水没、店舗・福祉施設での被害も出ました。短時間降雨の激甚化により1時間100mm級の非常に強い雨が沿岸部で発生、このような「記録的短時間大雨」が排水・下水設備を瞬時に超えるため、浸水が起こりやすくなっています。
仙台市が公表している「内水浸水想定区域マップ」でもその危険性が示されており、過去50年間における最大級の雨が降った場合の浸水予測で低地・沿岸部での浸水リスクが明示されています。
https://www.city.sendai.jp/gesuido-kekaku/kurashi/machi/lifeline/gesuido/gesuido/gaiyo/shinsui/naisui.html
住民からは、「排水ポンプ場の整備を早急に進めてほしい」という声が出ており、今後、沿岸部における排水ポンプ設備・下水道設備の強化が求められています。市や県が進めている「流域治水」の視点で、河川・下水・沿岸・都市雨水を一体的に捉えて対策を講じる必要があります。一方で、被害事例を踏まえて、住民の避難・移動ルート、低地にある建物・住居の浸水対策(床のかさ上げ、雨水逆流防止バルブ等)の強化も重要です。沿岸部ということで、津波・高潮・豪雨が複合するリスクがあるため、豪雨だけでなく「海の状況(高潮・満潮時)」「排水の出口が海の場合の逆流リスク」なども合わせて想定しなければなりません。
<2025年11月9日>能登半島地震での「古マグマ」の関与
東北大学の髙木涼太准教授らの研究グループが、能登半島地震の震源域地下において、これまであまり注目されていなかった「古い固化マグマ(高速度体)」が重要な役割を果たしたという研究成果をご紹介します。
https://www.tohoku.ac.jp/japanese/2025/10/press20251016-01-noto.html
能登半島では2020年12月頃から活発な群発地震が続いていましたが、2024年元日にマグニチュード7.6の能登半島地震が発生しました。なぜこのような複雑な地震活動が起きたのか、なぜ群発地震が大地震につながったのか、その要因は不明でした。これまでに観測された地震波の伝播速度を解析すると、震源域の地下に“地震波が周囲より速く伝わる部分(高速度体)”が存在することが示されました。この高速度体は、かつての火山活動で形成された「固化した古いマグマ」である可能性が高いとされています。過去の群発地震がこの高速度体(壁)を「避けるように」発生していたこと、最終的にはその高速度体内部で断層破壊(=本震)が起きたこと、そのため“群発→本震”という関連で、これが鍵になっていた可能性があると報告されました。 つまり、①過去の火山活動で地下にマグマが溜まり、冷えて固まったマグマ体が残存 →この「硬くて密な」構造が地震波速度を速くする“高速度体”を形成。②このマグマ体が、群発地震がどこを通って移動・拡大するかを制約する“壁”のような役割を果たす。③その中でマグマ体自体、あるいはマグマ体まわりの応力・割れ目・流体圧の蓄積が限界に達し、断層破壊(本震)が起きたことが推定されそうです。④つまり「火山活動の残痕(古マグマ体)」が、今回の大地震の発生メカニズムに深く関わっていた可能性がある、ということです。
一般に「海溝型プレート境界地震」や「活断層直下型地震」などでは、プレート運動などによる応力で発生を議論していましたが、流体に加えて、地下に残るマグマや古火山構造といった“火山的痕跡”(不均一性)が、重要な役割を担うことがありそうです。今年、トカラ列島や山口県北部でも群発地震が発生しましたが、群発地震は、世界各地で発生し、大きな被害をもたらす大地震につながるのではないかという懸念がありますので、さらに研究を進めていただきたいと思います。
<2025年11月2日>双葉ツーリズム研究所(F-ATRAs)の紹介
先日、福島での町歩き(復興ツーリズム)に参加してきました。企画したのは「双葉ツーリズム研究所」です。東日本大震災・原発事故後の福島県浜通りの復興に観光を活用することを目指す団体で、デスティネーション・マネジメント・カンパニー(DMC)として、世界中の旅行会社や国内サプライヤーと連携し、地域の観光資源を活かした旅行商品の開発、造成、販売、プロモーションなどに取り組んでいます。代表理事の山根辰洋さんは東京都出身。2013年から復興支援員として双葉町役場に勤務、任期終了後も双葉に残って地域再生のために活動を続け、2016年には双葉町出身者と結婚され双葉町民になりました。2019年、一般社団法人双葉郡地域観光研究協会(F-ATRAs)を設立し、双葉町や浜通り地域の観光ツアー、お祭りなどの運営に取り組んでおられます。2021年より双葉町議会議員もお務めです。
山根さんが力を入れる「観光業」は、人づくりとまちづくり。震災や双葉の現状を外部へ伝えたり、地域住民と外部の人とをつないだりする中で、地域再生や社会づくりへ貢献されています。町の文化や歴史を価値あるものとして継承し、双葉を訪れる人の増加につなげることが今後の目標です。2024年2月には、国際色豊かにインド出身のトリシット・バネルジーさんとスワスティカ・ハルシュ・ジャジュさん(いずれも東北大学大学院修了者)が研究所のメンバーとなり活動されています。双葉町をまち歩きしながら紹介するガイドツアー「双葉町タウンストーリーウォーキングツアー」は、下記のWebサイトから予約ができます。
https://f-discover.com
<2025年10月26日>BOSAI人材育成プログラムの推進状況
東北大学が企画している「BOSAI人材育成プログラム」を紹介させていただきます。既存の防災・減災知識に加え、最先端の総合知や研究を組み合わせ、将来の社会変化にも柔軟に対応できる防災・減災のエキスパートを育成するプログラムです。東北大学は、一昨年、南相馬、富岡、大熊、双葉、浪江の浜通り5市町と連携協定を結び、福島県浜通りに活動拠点を整備する方針を掲げており、災害による犠牲者をなくすため、想定外の事態にも柔軟に対応できる人材を浜通りから育てていきたいと考えています。
初級・中級・上級のコースを設定、プログラムのおもな特徴と目的は、
①総合知の活用:既存の防災知識だけでなく、最新のテクノロジーや研究成果(先端研究、防災対応ロボットなど)を統合し、実践的なスキルを習得します。
②将来の社会変化への対応力:不確実性の高い将来の社会変化を見据え、柔軟な発想と行動力を持つ人材を育成します。
③災害時ゼロ目標の実現:災害発生時の被害を最小限に抑え、犠牲者を出さない社会の実現を最終目標としています。
④地域に根差した実践:福島県の浜通り地域でのフィールドワークや、震災遺構の視察などを通じて、実践的な学びと知見を深めます。
⑤多様な主体との連携:大学だけでなく、行政、企業、NPOなど多様なステークホルダーが連携し、革新的な防災イノベーションの創出を目指します。
「BOSAI人材育成プログラム」は、東日本大震災の経験を教訓に、国際的な防災・減災の取り組みをリードする東北地方の大学を中心に、多岐にわたる分野で展開されています。
<2025年10月19日>中越地震から21年が経ちます
中越地震とは、2004年10月23日に新潟県中越地方を襲った最大震度7の地震で、多くの土砂災害、集落の孤立、および災害関連死を引き起こしました。死者68人、重軽傷者4795人、住宅の全壊・半壊など12万棟を超える被害、3,800カ所以上で土砂災害が発生し、61集落が孤立、約10万人以上が避難生活を余儀なくされました。
おもな課題は、多発する地震・余震の中で、安否確認の遅れ、情報共有の困難さ、山間部での孤立、災害関連死の発生、高齢者・障害者への支援不足、交通網の寸断、そして地域コミュニティの「共助」の維持などがありました。これらの課題から、デジタル技術を活用した安否確認システムの整備、避難所の環境改善、災害関連死対策としての車中泊支援、企業BCPの強化、そして高齢化地域におけるコミュニティ支援の重要性が認識されることとなりました。
先月9月8日、天皇皇后両陛下の長女の愛子さまが新潟県中越地震の被災地を訪れ、当時の被災状況や復興への歩みを伝える展示館を視察されました。ぼうさいこくたい(防災推進国民大会)に出席するため新潟県を訪問しておられた愛子さまは、小千谷市や旧山古志村の長岡市山古志地区にある「やまこし復興交流館おらたる」を訪れ、被災当時の状況や、住民たちが全村避難を経て、地域の再生に力を尽くしてきたことを伝える展示をご覧になりました。担当者が当時の避難所の様子を写したパネル展示を説明すると、愛子さまは「段ボールベッドはあまりなかったのですね」などと話されていました。
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20250908/k10014916751000.html
<2025年10月12日>イオンモール仙台上杉のオープン
大型商業施設イオンモール仙台上杉が10月8日にオープンしました。スーパーやレストラン、衣料品店などおよそ140店舗が出店、イベントが開催できる屋内外一体の交流拠点を設けています。東北大学旧雨宮キャンパスの跡地の利活用としてのイオンモール仙台上杉の整備は、中心都市部での商業施設を中心とした新しい生活・利用環境の創生であり、緑地整備(杜の再生)、加えて、防災・減災、安心、地域活性化、コミュニケーションの場として多角的に整備されまた。
イオンモール仙台上杉は、地域の防災拠点としても期待されています。2021年に、東北大学とイオン財団、イオンモールの3者が協働、全体会議を設けて各分科会の活動状況報告や結果の共有、さらに連携を推進し、2024年10月からの第2期では、防災・減災と地域連携の2つのテーマに絞った分科会活動を再開しています。今後も、地域の防災拠点として、平時の防災教育推進と、災害時の帰宅困難者の待機場所確保を計画し、停電対策として非常用発電機を設置し、断水対策として耐震性のある受水槽を設けるなど、災害時の復旧・復興に役立つ機能を備えること等を継続して検討する予定です。
<2025年10月5日>地震火災防災プロジェクトXcross Innovation BOSAI
仙台市と10の事業者が、新たな防災に関する連携組織を設立しました。名称は「Xross Innovation BOSAI(クロス・イノベーション・ボウサイ)」。8月28日に、取り組みの共創意思を対外的に示すキックオフイベントを仙台市役所で開催しました。
https://www.khb-tv.co.jp/news/15993547
参画事業者は、イオン株式会社、日本郵便株式会社、みやぎ生活協同組合、株式会社七十七銀行、国立大学法人東北大学、株式会社ローソン、東京海上日動火災保険株式会社、明治安田生命保険相互会社、アイリスオーヤマ株式会社、株式会社ポーラです。
防災立国・日本を支える新たな「共創型コンソーシアム」で、参画事業者の顧客網や強みを掛け合わせ、災害リスクの削減に直結する革新的な取り組みを、産学官金民が一体となって生み出します。これにより、災害リスクを有する地域において、あらゆる関係者・ステークホルダーが連携した取り組みを持続的に実施・展開し、災害リスクを大幅に削減するイノベーション・エコシステムの構築を目指しています。
地震火災による被害リスクが最も深刻とされる「長町-利府線断層帯地震」(仙台市内において最大で死者845人、焼失棟数17,825棟)等を想定し、10年で死者数を5割以上削減する具体的目標を掲げ、感震ブレーカーの普及や情報連携体制の構築に取り組みます。100社以上(見込)の企業・団体が連携参加し、日本“防災立国”の新しい中核モデルとして期待される内容です。
Xross Innovation BOSAIホームページ
<2025年9月28日>SUNDAY MORNING WAVE公開録音(2025.09.04)
9月4日BRANCH仙台 まちづくりスポット仙台を会場に行った公開録音の模様をダイジェストでお送りします。
<2025年9月21日>御嶽山噴火災害について
2014年9月27日に、長野県と岐阜県にまたがる御嶽山が噴火、噴火警戒レベル1(平常)の段階で突如発生したため、多くの登山者が巻き込まれました。発生から11年が経ちます。当時、週末の観光シーズン(好天に恵まれた紅葉シーズン)でしたので多くの方が山頂付近におられ、死者58名、行方不明者5名、負傷者69名を出す戦後最悪の火山災害となりました。
噴火は地下の熱水が爆発的に沸騰する水蒸気爆発でした。小規模な水蒸気噴火は、マグマ噴火と比べて兆候をとらえるのが難しく、予知が困難です。規模としては大きくはないのですが、噴火によって火砕流も発生し、山頂の南西斜面を約3km流下しました。また、山頂付近は噴石で覆われ、多くの登山者が身動きがとれなくなりました。噴火後、自衛隊や消防、警察による大規模な捜索活動が行われましたが、山頂での厳しい自然条件や、噴火の二次的な危険性の高まりにより多くの困難がありました。
この災害を受け、御嶽山では火口付近へのシェルターの設置や、監視体制の強化など、さまざまな安全対策が進められました。現在、登山客や観光客に対して、活火山としての御嶽山の性質や、過去の噴火災害の教訓を伝えています。また、火山研究の推進と人材育成を目的とした「次世代火山研究・人材育成総合プロジェクト」が東北大学などで開始され、火山監視・予測技術の高度化や防災体制の強化が進められています。
<2025年9月14日>『「震災伝承施設」深化の会』について
近年、自然災害が激甚化・頻発化する中で、「いのちを守る」行動を促す災害の自分事化が喫緊の課題となっており、災害伝承の役割はますます高くなるとともに、震災の記憶や教訓を伝える震災伝承施設の期待も従前にも増して大きくなっています。そのような中で、内閣府と国土交通省では地域において災害やその教訓をわかりやすく伝える活動を『NIPPON防災資産』と認定する制度を導入し、昨年9月に「3.11伝承ロード」が優良認定していただきました。この認定を機に、災害の自分事化に貢献する、より深化を目指した伝承活動となるように、震災伝承施設の本気の伝承活動を紹介する『第1回「震災伝承施設」深化の会~伝承活動による災害の自分事化に向けて~』を、8月30日に、東京臨海広域防災公園の防災体験学習施設「そなエリア東京」で開催しました。深化の会の趣旨説明のあとに、下記4伝承施設からの活動紹介がありました。
①いのちをつなぐ未来館(釜石市)
②東日本大震災津波伝承館(陸前高田市)
③気仙沼市東日本大震災遺構・伝承館
④いわき震災伝承みらい館
その後、佐藤翔輔先生がファシリテーターとなり、現状の強みと弱み(課題)や課題解決に向けての協力体制などについての話し合いがありました。
<2025年9月7日>高知県での取り組み
南海トラフ巨大地震に関連した高知県での活動を報告させていただきます。今年3月に国の新たな被害想定と対策の報告が出されたあと、各地で詳細な検討が始まっています。
地震などによる被害想定について検討する高知県の委員会(第3回)が先月高知市で開催され、想定される震度、津波や液状化の被害をどのように試算するか、意見が交わされました。
▽調査手法の妥当性について
▽救援物資の輸送などに使う緊急輸送道路の周辺は液状化リスク
▽最近急増している海外からのクルーズ船による観光客対応など、議論を行いました。
今回は、この検討会に先駆けて、座長である名古屋大学の福和伸夫名誉教授(地震工学)と私(津波工学)が初めて、一緒に沿岸部を視察しました。南国市のスポーツセンターに隣接した820名収容の津波避難タワー、高知港も含む3重防護ライン(第1ライン:高知新港沖合の4つの防波堤。第2ライン:桂浜津波防波堤など浦戸湾湾口部の防波堤や外縁部の堤防。第3ライン:浦戸湾内の護岸)の整備状況を視察いたしました。
その後、南海トラフ巨大地震で全国で最も高い最大34メートルの津波が想定されている黒潮町を訪れ、対策の現状を視察しました。黒潮町佐賀地区の沿岸部に設置されている国内最大級の津波避難タワー(建物高さ25m)を訪れ、階段を上って避難スペースを視察し、タワー周辺の環境について町の担当者に質問しました。また、大西勝也町長らとタワーの維持管理や、避難所の環境整備など町が取り組んでいる防災対策を巡って意見を交わしました。
https://www3.nhk.or.jp/lnews/kochi/20250819/8010024423.html
<2025年8月31日>青葉山さんかく隊について
https://www.city.sendai.jp/aobayamaeria/hukugoushisetsu/kentou/documents/event-leaflet.pdf
仙台市では、青葉山エリアに新しい音楽ホールと中心部震災メモリアル拠点の複合施設を整備する計画を進めています。2031年の完成を目指して、さまざまな準備の活動が行われています。その1つが市民参加のワークショップです。設計プロジェクトの一環として、みんなで話し合いながら、施設の使い方、過ごし方、やってみたいアイデアなどを考える全4回の市民ワークショップが開催されました。
まず、キックオフ企画として、建築家の藤本壮介氏とコミュニティデザイナーの山崎売氏のトークイベントが6月8日に開催され、その後にワークショップが行われました。
第1回6月21日「どんな場所になるといい?」
第2回 7月6日「施設の使い方や過ごし方を考えよう!」
第3回 7月21日「屋外の広場でどんなことをしたい?」
第4回 8月9日「やってみたい活動のアイデアを考えよう!」
最終回は東北大学災害科学国際研究所の多目的ホールで開催され、施設や青葉山エリアでやってみたい活動のアイデアについて意見交換されました。
<2025年8月24日>トカラ列島近海の地震活動
https://www.static.jishin.go.jp/resource/monthly/2025/20250703_tokara_1.pdf
今年6月頃からトカラ列島近海での地震活動が非常に活発化しました。群発地震と呼ばれる震源の浅い場所で発生する地震で、特に、悪石島から宝島にかけての領域では、6月21日から地震活動が活発になり、7月2日には西端でマグニチュード(M)5.6の地震が発生し、小宝島で最大震度5弱を観測、3日には、東端でM5.5の地震が発生し、悪石島で最大震度6弱を観測しました。6月からの活動で震度1以上の地震は2000回を超えています。地震活動は小康状態になってきましたが、落ち着いたように見えても急に増える可能性もあるため、引き続き注意が必要です。
今回の地震活動域の周辺は、過去にも活発な地震活動が継続したことがある地域で、1995年12月、2000年10月、2021年12月に、それぞれ最大でM5.5、M5.9、M6.1の地震を伴う活動が観測されています。これらの地震活動では、活発な期間と落ち着いた期間を繰り返しながら、数か月程度以上継続したこともありました。今回の一連の地震活動は、1995年以降に発生した地震活動の中で、最も地震回数が多いことになります。悪石島から宝島にかけての領域は火山列の延長上に位置していて、地震に伴う地殻変動も観測されており、地下のマグマや熱水などの流体が上昇してきた可能性も考えられるとしています。
<2025年8月17日>アニメツーリズムから復興ツーリズムへ
アニメの聖地を訪れることで作品世界をより深く感じる「聖地巡礼」、「アニメツーリズム」が、いま新たな社会的意義を持ち多くのファンを取り込んできています。特に東日本大震災から14年が経過し、「防災・減災の記憶継承」が課題となる中で、「物語の舞台」を通して災害の記憶を語り継ぎ、次世代に意識をつなぐ「復興ツーリズム」への可能性が見直されています。
この中、8月23日(土)10時から、仙台市戦災復興記念館(地下1階展示ホール)で「アニメツーリズムから復興ツーリズムへ~舞台背景を知りより作品を楽しもう・防災減災意識を高めよう~」と題したトークショーが行われます。アニメーション産業と地域のつながりを考えるとともに、「作品を通じて震災を知らない若い世代に防災意識を伝えるには?」をテーマに、アニメファン・地域・防災関係者が交わる新たな交流の場の創出について議論を深めたいと企画されました。登壇者は鈴木則道氏(アニメツーリズム協会 専務理事)あおき えい氏(TVアニメ「オーバーテイク‼」監督)、そして私です。
事前申し込みが必要ですので、下記からお申込み下さい。
アニメフェス仙台 参加エントリーサイト
<2025年8月10日>カムチャツカ半島地震と津波について
7月30日午前8時25分頃にカムチャツカ半島沖で発生した地震(M8.7)とそれによる津波は、日本を含む太平洋沿岸地域に大きな影響を与えました。揺れのないまま津波注意報が出され、その後警報に切り変わりました。被害状況としては、養殖筏などの流出がありました。地震の規模が大きく、津波の影響が長時間にわたって続きました。また、遠地津波であるため、地震発生から時間が経ってから最大波が到達する傾向もみられました。カムチャツカ半島沖を震源とする津波は、発生から1時間程度で日本の太平洋沿岸に到達し、特に岩手県久慈港では130cmの津波を観測しました。大規模な津波遡上は見られませんが、局所的な増幅や強い流れにより漁業施設等への被害は懸念されます。
カムチャツカ半島、千島海溝沿いで発生した津波の既往の事例も踏まえ、津波の日本への伝播経路としては、到達順に以下が考えられます。
(1)カムチャツカ沖の津波の波源から直接、太平洋岸まで到達する経路
(2)津波波源から千島列島、北海道太平洋岸、本州太平洋岸に発達している大陸棚に入射し、屈折・反射を繰り返して到達するエッジ波
(3)カムチャツカ半島沖から北太平洋西側に発達する天皇海山群、およびハワイ海山群に津波が到達し、同心円状に発生する散乱波。
津波は、このような複雑な伝播経路を経て到達するために、海面変動の継続時間は非常に長くなるとともに、最大波が第一波から遅れて到達することが大きな特徴です。2006年の千島列島沖地震津波では、天皇海山群からの散乱波が、第一波観測後5時間以上経過してから、最大波として観測されました。
<2025年8月3日>津波リスクへの「パラメトリック型保険」の手法を開発
津波工学研究室の学部生 三木優志さんが中心に進めた研究成果をご紹介します。
近年、気候変動の影響により自然災害による経済損失は増加し続けています。しかし、災害リスクに対する保険の整備は十分とは言えず、補償ギャップ(経済損失と保険金支払いの差)が世界的な課題となっています。この課題に対し、「パラメトリック型保険」は有力な解決策のひとつです。パラメトリック型保険は、事前に定められた災害指標(震度や津波の高さ風速)に基づいて保険金が支払われる仕組みであり、従来型保険では補償対象外となる損失にも対応できるほか、基準が明確なため透明性が高く、災害後の現場での被害査定や調査が不要なので迅速な支払いが可能です。日本では2018年から取り扱いが始まりました。
一方で、パラメトリック型保険ではベーシスリスク(実際の損害と保険金支払いの不一致)が大きな課題となっています。支払い金額の不足は災害復旧の妨げとなり、一方で過剰な支払いは保険料の上昇に繋がる可能性があります。また、津波のように複雑で広域な自然災害に対しては適用が難しく、普及は限定的でした。本研究ではこの課題に対し、最適化モデルによってベーシスリスクを最小化する手法を提案しました。津波リスク評価には確率論的津波リスク評価(PTRA)を採用し、将来発生し得る複数の津波シナリオに基づき、損害額と保険金支払いの関係を定量的に分析する手法です。津波の高さや浸水深といった支払いのための指標を用いて、最適な支払い条件を導き出しました。
<2025年7月27日>FUKUSHIMAサイエンスパーク構想の新たな取り組み
https://www.tohoku.ac.jp/japanese/2025/07/news20250710-fukushima.html
東北大学は、2022年3月に福島県と締結した包括連携協定に基づき、「FUKUSHIMA サイエンスパーク構想」を推進し、福島県浜通り地域の創造的な復興に貢献してきました。この取り組みをさらに加速させるため、2023年9月以降順次、浪江町を含む浜通り地域1市4町との包括連携協定を締結しました。
今回、これらの取り組みの一環として、浪江町の協力を得て、研究活動の核となる施設を浪江町が整備する産学官連携施設内に、また、学生の研修・社会貢献活動の核となる施設をその隣接地にそれぞれ整備します。これらの施設を拠点として、今後一層、浜通り地域の復興及び社会課題の解決を目指した取り組みを進めるとともに、研究者や学生が浜通り地域を訪れる機会を増大し、関係人口の増加、まちの賑わい形成にも貢献していきます。
この研修施設は、浪江町立産学官連携施設とともに、FUKUSHIMAサイエンスパーク構想下の浜通り拠点の1つとなるものです。本学の学生・教職員の教育研究、社会貢献活動への支援に加えて、本学が浜通り地域の創造的復興にかける熱い想いを具現化し、浜通り地域における本学の「顔」としての役割を果たすことができればと考えています。
現在、研修施設建設に当たってのコンセプト及び実現のための方策について検討しています。
<2025年7月20日>台湾・高雄への視察と交流
https://irides.tohoku.ac.jp/media/files/_u/topic/file/20250618_report.pdf
台湾では、1999年集集(チチ)地震や2009年モーラコット台風水害(八八水害)など、日本と同様に自然災害が発生しており、防災の取組や防災教育や啓発の活動も盛んです。先月6月18日から21日にかけて、正修科技大学(1965年に創立された台湾高雄市にある私立大学)および国立科学工芸博物館(八八水害対応及び復興展示)を訪問し、セミナー開催、防災研究及び教育に関する意見交換を行いました。
6月19日には、正修科技大学を表敬訪問し、国際連携、国際教育、修復技術などを紹介いただき、今後の連携について打ち合わせを行いました。その後、土木工学科で、地元学生(約50名)および海外からの留学生(インドネシア、タイ、フィリピンなど約10名)の参加の下、セミナーを開催しました。東北大から講義、話題提供、さらに、アワタラ(アワタイムライン;災害発生を想定し、関係機関が連携して、防災行動を時系列で整理した計画)を使ったワークショップを実施いたしました。夕方には、学長を含む大学執行部と面談をし、防災関係の協力・連携、学生の交流について意見交換を行いました。
6月20日午前には、国立科学工芸博物館内に常設されているモーラコット莫拉克(Morakot)台風災害伝承館の視察を行いました。1999年の九二一大地震の後に、もっとも大きな被害をもたらしたのが2009年の八八水害です。8月7日にモーラコット台風が襲い、8月8日から9日にかけて中南部や東部に豪雨が降り続き、甚大な被害を受けました。 その5年後の2014年に国立科学工芸博物館の中に八八水害対応及び復興展示が設置され、現在まで内容がさらに充実され、展示が拡大されています。
今回の訪問では、同台風災害の復興委員長であり、展示監修をつとめたDr.Jen CHUEN CHERN自ら展示の説明を頂き、当日の被害規模と緊急対応の難しさ、復興への道のりに関して詳細な説明を受けました。その後、副館長を交え、防災教育や啓発、展示、国際交流などの今後の連携について意見交換を行い、3機関の連携の方向性について合意しました。
<2025年7月13日>東北大学×希望の丘醸造所(株式会社利久)コラボビールの販売
東北大学はこれまで「社会とともにある大学」としてのアイデンティティのもと「社会との共創」を掲げ、地元企業や同窓生等との共同企画商品を販売してきました。今回、牛たんでお馴染みの株式会社利久(宮城県岩沼市)が手掛けるビール醸造所「希望の丘醸造所」との共同企画のもと「Kawatabi Cold IPA」の第3弾を醸造しました。ビールはコールドIPAのクラフトビールをベースとし、東北大学川渡フィールドセンター(宮城県大崎市)産のお米ひとめぼれを一昨年に続き使用しており、さらにクリスピーでフルーティかつ、キレのある仕上がりになっています。このビールは、7月27日(日)夕方、楽天モバイルパーク宮城で行われる楽天×西武戦で披露される予定です。この日は「東北大学Meet-up Day」でもあり、先着20,000名様に「EAGLES SUMMERユニフォーム2025」をプレゼントする予定です。ビールの売上の一部は東北大学基金に寄附され、本学の教育研究に活用されます。
株式会社利久は、東日本大震災の際に、本社工場、倉庫、事務所のライフラインが2 週間停止し、休業を余儀なくされました。実は、新しい岩沼本社工場が2011年2月に稼働したばかりでした。多賀城店、松島海岸通り店が津波の被害を受け、県内店舗も当面営業できませんでした。また、仙台駅も被害受け、お土産処は当面休業となりましたが、 数日後、岩沼警察署の駐車場をお借りしキッチンカーで炊き出しを実施、自社便で食材、製品が配送できるエリア店は順次営業を開始していきました。現在の防災対策・緊急連絡網の整備も充実しており、各エリア避難先の選定、工場内の被害を抑える対策の整備(ストッパー等)も実施しておられます。
<2025年7月6日>津波観測情報「欠測」の運用開始
7月24日から、気象庁は津波観測情報の「欠測」を新たに導入します。大きな地震が起きて津波が発生する場合、気象庁は全国に設置されている地震計のデータを元に震源や地震の規模を素早く推定し、地震から3分ほどで大津波警報や津波警報・注意報を発表します。どこにどのくらいの高さの津波が来ると予想されるのか、いつごろ到達するのかといった情報のあとに、沿岸で実際に観測された津波の高さの情報がもたらされます。今回、津波の情報に、新たに「欠測」が加わります。「欠測」とは、沿岸の観測点で「何らかの理由」により津波の観測データが得られなくなっていることを意味します。具体的には、①地震発生後に地震動・地殻変動により津波を観測できない場合②観測中だった津波の観測が途中で被災し不可能になる場合③メンテナンスなどで観測が停止している場合などが「欠測」として扱われます。気象庁はこの「欠測」をあえて発表することで、「観測できないだけで津波が来る危険はある」「家に戻りたいが、別の場所には津波が来ているので避難を続けよう」といった自分の命を守る判断、行動につなげてほしいとしています。
https://news.tv-asahi.co.jp/news_society/articles/900025876.html
去年元日の能登半島地震の際、石川県珠洲市長橋は、海底が露出するほど地盤が隆起したことで観測不能になっていました。また、輪島港でも地盤が隆起し1.2メートル以上とされていた観測値が取り消され「欠測」として扱われました。また、東日本大震災では、北海道や三陸沿岸での検潮所が津波の第一波で破壊され、観測を続けることができませんでした。そのために、最大波等の実態がわかりませんでした。このように、地盤の隆起や沈下以外にも、巨大な津波により観測点が破壊された場合や観測機器の故障、通信障害など「欠測」となる理由はさまざまです。
<2025年6月29日>仙台管区気象台の鎌谷台長のご紹介
今年4月、仙台管区気象台の台長に女性として初めて就任された鎌谷紀子(かまやのりこ)さんをご紹介します。鎌谷さんは、2022年4月から地震津波監視課長も務められました。まさに24時間365日地震を監視し、津波警報などを出す気象庁の現場トップとして、25代目にして初めての女性課長でもありました。地震津波監視課長は、気象庁に近い危機管理宿舎で生活し、大きな地震が起きると直ちに駆けつけ、緊急の記者会見を開き国民に警戒を呼びかけるのも重要な任務になります。もし首都直下地震が起きて首都圏の交通機関が麻痺しても、すぐに緊急出勤できるよう歴代の地震津波監視課長は休日も気象庁から遠く離れず都心で過ごしているそうです。鎌谷さんが課長を務めていた時期にも、さまざまな地震・津波が発生していますが、能登半島地震でも混乱の中、冷静な口調で、「今後の地震活動や降雨の状況に十分注意をして、やむを得ない事情がない限り、危険な場所に立ち入らないなど、身の安全を図るよう心がけてください」と注意を呼びかけられました。
鎌谷さんは東北大学大学院で火星の内部構造の博士論文を書かれており、地球科学に大変に関心を持ち、気象庁に就職されたそうです。大学院修了後、およそ31年ぶりの仙台生活となりますが、就任挨拶の中で、「東日本大震災では友人と遊びに行った場所で多くの人が亡くなり衝撃を受けました。二度とこのような悲しいことがないよう住民1人1人に防災情報を正しく理解してもらえるよう努めたい」と抱負を述べられています。
<2025年6月22日>東北大学の校友歌「緑の丘」
東北大学の校友歌「緑の丘」をご紹介します。東日本大震災の後、復旧・復興に頑張っている東北大学の同窓生、在校生、教職員の皆さんを元気づけたい、応援したいという思いから、当時の里見進総長が、本学同窓生である小田和正さんに依頼し、作詞・作曲していただきました。今では、入学式・卒業式をはじめ、同窓会の集まりなどで歌われています。
https://www.tohoku.ac.jp/japanese/midori/
小田さんは、東北大学工学部建築学科に入学され、在学中は混声合唱団のテノールとして活躍されました。その後、日本のニューミュージック界を代表するシンガーソングライター、映画の監督・制作も行うアーティストになりました。多数の大ヒット曲があり、世界的な視野での音楽創造を志向され、東北大学100周年記念文化貢献賞の芸術・文化部門を受賞されています。校友歌「緑の丘」のCDも制作されました。小田和正さんご本人の歌声、混声合唱団バージョン、ピアニスト榊原光裕氏によるピアノインスト、そしてカラオケ用インストの計4曲を収録しています。入手希望の方は、東北大学生協の店頭にて限定販売を行っておりますのでご利用ください。
東北大学校友歌「緑の丘」:作詞・作曲 小田和正
なだらかな 坂道を上れば 川内
広瀬川から 幾重にもかさなる 緑の丘
目に浮かぶは 忘れ得ぬ 立ち並ぶ 白い教室
すべてのことが そこから 始まって行った
そしてまた 友たちと 語らうは 遙かな夢
果てしなく 道は続くとも いつの日か そこへ行く
明けてゆく 青葉山に かけがえのない 今を想う
僕らの時は 限りなく ゆっくり 流れてる
この街に 愛されて この街を 愛して
我らが青春の日々 風わたる 東北大
やがてみんな それぞれの 目指す場所へ 旅立って行き
そしていつか 杜の都 仙台は ふるさとに なって行く
<2025年6月15日>藤崎百貨店のSONAERU WEEK
6月12日は「みやぎ県民防災の日」「市民防災の日」でした。今年もシェイクアウト訓練などの防災訓練が実施されました。本日は、藤崎デパートの取り組み“SONAERU WEEK”をご紹介します。いつ起こるかわからない"もしも"に備えるアイテムの紹介や、東北大学災害科学国際研究所の佐藤健教授や保田真理プロジェクト講師が協力させていただき、"もしも"から"あなた"を守るための情報や、理解を深められるパネル展示、お子様がご参加いただけるゲームを開催されました。
https://www.fujisaki.co.jp/event/sonaeruweek.html
それに加えて、特設会場や通常の売り場で、さまざまな防災グッズが販売されています。
いくつかご紹介させていただきます。
■『OTE』(非常持ち出しリュック)
玄関ドアにマグネットでくっつけられる防災バッグです。普段はさりげなく玄関にくっつけておいて、緊急時にはリュックのように背負って持ち運べます。防災グッズ13点・防災用キャップ・強力ヘッドライト・乾電池・不織布マスク・5年保証-超防災用ウエットティッシュ(大町館5階 家具インテリア売場)
■「マイレット」トイレ処理セット アートトワレ
一見すると『アート』であり写真立てですが、中身は災害時のトイレ処理セット5回分が内蔵されています。(大町館4階 家庭用品売場)
■「Plus Jack」お守りホイッスル effe bottle colum ネックレス
香水などのガラスの瓶をモチーフにしたボトルシリーズ。真鍮のキャップがアクセントになって毎日身につけられるようなシンプルなデザインです。また人の耳に聞こえやすい2kHz~5kHzのがれきの下からでも遠くまで響く高音域4kHzを中心に音が鳴るようにしています。(大町館4階 家庭用品売場)
■「アスレティア」 スカルプ リフレッシュローション
スプレーして揉むだけで、汗でベタついた頭皮をすっきりリフレッシュ。まるでシャンプーをしたような気持ちよさへと導きます。(本館2階 ビューティ雑貨売場)
<2025年6月8日>災害時炊き出しネットワークについて
昨今の自然災害の頻発化・激甚化に伴い、被災地における食糧供給体制確保の重要性は一層高まっています。特に、避難所等での「炊き出し」は、被災者の生命線ともなる支援です。このほど、宮城県飲食業経営審議会では、東北経済産業局と協働で、「炊き出しネットワークシステム」の構築を行いました。
本日は、 宮城県飲食業経営審議会代表理事の佐々木強太さんと事務局長の澤田てい子さんをゲストにお迎えし、この「災害時炊き出しネットワーク」についてご紹介します。
仙台デザイン&テクノロジー専門学校の協力のもと、地域飲食店の炊き出し能力を「見える化」するアプリ開発によって、より円滑な支援のしくみが築かれ、全国規模のネットワークとして展開されることが期待されます。
https://www.tohoku.meti.go.jp/s_joho/topics/250521.html
<2025年6月1日>大阪・関西万博での復興庁テーマウィーク展示
5月19日、20日に大阪・関西万博のイベントに参加させていただきました。4月13日に開幕した大阪・関西万博では、世界中の国々の人々が半年間にわたり集い、いのち輝く未来社会を世界と共に創造することを目的として半年間開催されています。その中の「未来のコミュニティとモビリティウィーク」企画で、復興庁が被災地発の未来社会に向けた復興をテーマとした展示を5月19日~6日間、万博会場内の「EXPOメッセ」で実施しました。オープニング式典には、伊藤忠彦復興大臣、関西万博復興PRアンバサダーであるプロフィギュアスケーターの荒川静香さんらが登壇しました。
「震災伝承・災害対応」「食・水産」「最新技術」や「福島国際研究教育機構(F-REI)」などをテーマに復興のストーリーを紹介する展示となっています。導入シアターでは、東日本大震災が発生した当時の様子や、その後の復旧・復興の過程で起こったことを、迫力の大型映像で振り返ります。次に、3.11の経験を生かした災害対応やまちづくりを世界中に伝えるべく、被災地の災害対策やまちづくりについて、発災前から現在・未来に至る過程を「復興のストーリー」として展示、ビデオ解説として私がそれぞれの復興の特徴を説明させていただきました。「Kizuna-食・水産-ゾーン」では、被災地が誇る食・水産品と出会い、試食体験も行われ大人気でした。
また、万博会場の東ゲートゾーンにデジタルモニュメント「成長する『奇跡の一本松』」を常設。公式サイトからメッセージを入力すると、一本松を彩るモザイク画の一部となってメッセージがモニュメントに表示される仕組みになっています。さらに、被災3県の伝承施設でも、メッセージ投稿端末が置かれメッセージを送ることができます。参加型の展示であり、皆様の思いや応援メッセージがリアルタイムで表示されています。誰でもどこからでも書いたメッセージが一本松に届いていきます。
https://expo2025-portal.reconstruction.go.jp/themeweek/monument/
<2025年5月25日>企業版ふるさと納税を活用した地域防災対策や官民連携のスキーム構築
https://www.chisou.go.jp/tiiki/tiikisaisei/portal/pdf/r5/06_otsukasyoukai.pdf
企業版ふるさと納税は、企業が地域に貢献し、地域とのつながりを深めることを目的としています。寄付金は自治体に直接寄付することができ、寄付金受領証明書が発行されるため、住民税や所得税の還付・控除の対象となります。このような企業版ふるさと納税を活用して、地域防災対策や官民連携が始まっています。
1つは、災害発生時に被災自治体へふるさと納税を活用して支援、そして、平時でも事前防災や啓発・教育への活動です。(能登半島地震の際には1007社が支援)
例えば、三菱化工機株式会社は、主要拠点の所在地である茨城県神栖市および三重県の防災に役立ててもらうため、企業版ふるさと納税制度を活用して、ポータブル水再生システム「WOTA BOX」(災害時に個室シャワーとして利用可能な小規模分散型水循環システム)一式を両自治体に寄贈しています。
https://www.kakoki.co.jp/news/2024/07/post-366.html
また、IT企業大手の大塚商会では、全国の自治体に防災資機材の寄贈を続けています。
https://project.nikkeibp.co.jp/onestep/casestudy/00062/
企業版ふるさと納税制度を活⽤して、⾃治体との防災に関する官⺠連携を図り、⾃治体DXをサポート。必要とされる電気・ガス・⽔道に関する、⽔循環型の⼿洗い・シャワー設備、LPガス発電設備と、情報提供の集約として避難所運営の為のプラットホームを提供しています。
<2025年5月18日>ミャンマー地震によるタイ・バンコクでの被害
https://irides.tohoku.ac.jp/research/prompt_investigation/2025myanmar-eq.html
3月28日午後3時20分頃(現地時間午後0時50分頃)にミャンマー中部で発生した地震により、震源から1000キロ以上離れたタイの首都バンコクでも長くゆっくりとした揺れの「長周期地震動」で被害が出ました。タイ政府の発表によれば、首都圏の被害は死者23名、負傷者36名。主に建設中のビル一棟の倒壊によるものであり、倒壊した建物の下敷きになった人々の捜索活動が続いていました。災害科学国際研究所では、4月25日、ミャンマー地震についての速報会を開催し、その中で、アナワット先生らが、バンコクでの被害状況と緊急調査について下記のような報告がありました。
①タイの人々は⾧周期地震動によるこれほどの大きな揺れを予想していなかったため、パニック状態になり、次に何をすべきか全く分からなかった。
②東京都心部と同様に深刻な交通渋滞とすべての鉄道システムの停止のため、都内中心部で働いていたすべての人が同時に家に帰るのに⾧時間がかかった。
③タイの人々は地震に対する正しい理解がなく、何をすべきか分からず、今後の基礎教育に組み込む必要がある。
④ 高層ビルに住み、働いている人の多くは大きな揺れを経験しただけでなく、建設中の30階建てビルの崩壊の画像やビデオによって、精神的な被害もかかっている。
最近の研究成果(千葉大学大学院の丸山喜久教授)により、現地の観測データをもとに専門家が分析したところ、最も影響が大きかったとみられる60階前後の超高層ビルでは、揺れ幅が1m60㎝程度と、東日本大震災の際、震源から400キロほど離れた東京 新宿で発生した超高層ビルでの揺れに近い状況だとしています。今回の地震計のデータを日本の「長周期地震動階級」に当てはめると、上から2番目の「階級3」に相当します。現地の状況について丸山教授は、高層ビルの柱や壁が損傷したといった被害の情報もあるとしたうえで、「制震構造」の導入が進んでいないことなどが影響しているのではないかと指摘しています。
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20250428/k10014791611000.html
<2025年5月11日>在宅避難を想定した「ホームサバイバルトライアル」
本日は、防災士研修センターが中心に進めている体験プログラム「ホームサバイバルトライアル」を紹介させて頂きたいと思います。我が国では、多くの防災の取組がなされていますが、広がりが限られていたり「とりあえず」の防災であったりと、一過性であるとの指摘がなされています。その中、家庭でできる防災準備として食べ物などの備蓄品を買うだけで安心していないでしょうか?そこで、防災士研修センターが提唱する「ホームサバイバルトライアル」とは、電気・水道・ガス等の家庭内のライフラインを一定期間制限した状態を自ら作り出し、その中で生活して「疑似被災体験」をする試みです。日ごろ「無意識」に使っているものが使えないことにより、超不便な生活の体験となり、備えの重要性に「気づく」ことに繋がります。今までの「想像して備えること」に加えて「体験して備えを見直すこと」で、現状の備えの欠点、自分に合った備えはどうあるべきかを知ることができます。現在までに下記のような体験談が寄せられています:
●部屋が真っ暗だとどこに何があるかわからなかった。
●ランタンが一つしかなく子供が暗闇を怖がってしまった。
●ラジオの電源が入らず、情報も音もなく不安になった。
●暗い状況で調理をするのは緊張した。子供の食べこぼしがひどかった。
体験からの気づきを通して、備えを見直してみましょう。
https://www.bousaishi.net/Advanced/20231227_HST_check-list.pdf
<2025年5月4日>改訂『津波ー脅威、メカニズム、防災と備えー』出版
2020(令和2)年3月に成山堂書店から、『逆流する津波 ―河川津波のメカニズム・脅威と防災』という本を出版しましたが、その後も国内外で津波が発生し、新しい状況や知見が得られましたので、このたび『津波ー脅威、メカニズム、防災と備えー』という新たなタイトルで改訂版を出版しました。
https://www.seizando.co.jp/book/12372/
津波、そのメカニズムから脅威、津波全般に関しての防災・減災の考え方や取り組みを<基礎編><応用編><対策編>の3部構成でまとめています。初版でご紹介した事例に加えて、改訂版では新たに、2024年に起きた能登半島地震についても触れています。また、昨年8月には、宮崎県日向灘沖でのマグニチュード7.1の地震の後に津波注意報が出され、その後、南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)が発表されました。各地で1週間にわたり緊迫した状況下で、地震や津波への備えの再点検や避難への確認が求められました。このような経験と教訓も詳しく紹介しています。さらに、海上保安庁が撮影した多くの貴重な写真の中から6枚(名取や釜石)を掲載、最後には、全国の津波に関する伝承施設や博物館の情報もまとめました。より理解しやすくなったかと思います。
自然災害は、常に進化すると言われています。本書により、津波への知識を深めていただきたいと思います。番組のリスナー5名の方に、この本をプレゼントさせていただきます。
https://www.datefm.co.jp/sys_data/articles/959200008769.html
<2025年4月27日>震災復興と宗教関係からの支援
東日本大震災や能登半島地震において、宗教者からも支援活動があり復興に貢献された事例も多くありました。東日本大震災では、発災直後からお寺などの宗教施設が避難所として利用されるなど、宗教と災害にはさまざまな関わりがありました。また、信仰の大切さを知る人々の善意を集約し、復旧復興の支援に役立てることができたと報告されています。東北大学の文学研究科で始まった臨床宗教師養成のプロジェクトには、①「傾聴」「スピリチュアルケア」の能力向上、②「宗教間対話」「宗教協力」の能力向上、③宗教者以外の諸機関との連携方法、④適切な「宗教的ケア」の方法などの講座があります。また、能登半島地震では、被災寺院が多く、その支援や被災者への義援金集めの取り組み、被災者にお茶を振る舞う『行茶活動』や足湯などを通じて被災者の声に耳を傾けた活動があります。
東北大学の災害科学コアリサーチクラスターで2024年4月より今年3月まで研究を進めていた井川裕覚(いかわゆうがく)先生がいらっしゃいます。
以下、井川先生からのメッセージです;
「東日本大震災が起こり、被害の大きさに無力さを痛感しましたが、それでも復興支援に関わろうとする宗教関係者がいることを知りました。この経験から、私は寺院の「外」に目を向けるようになり、医療現場でのケアや高齢者の孤立予防などの社会活動に関わってきました。私の専門は実践宗教学、宗教社会学です。とくに近代社会で多様な価値観が併存し公共空間が形成される過程で、宗教がいかなる機能を担ってきたのかという視点から、社会福祉の歴史研究を行ってきました。今後は、宗教の地域コミュニティをつなぐ機能や、災害復興における宗教文化の役割などを考えていきたいと思います。」
<2025年4月20日>ミャンマーでの大地震
3月28日、ミャンマー標準時12時50分(日本時間15時20分)に、ミャンマー中部のマンダレー近郊を震源として発生した直下型地震になります。国内を南北に通るザガイン断層のずれによって生じた地震であり、改正メルカリ震度階はIX(猛烈;多くの人が混乱に陥る。頑丈な建造物が一部損壊し、多くの建造物が半壊する)に達しました。ミャンマーにおいては1912年メイミョー地震以来最大の地震であり、死者についても1930年バゴー地震以来最大のものとなりました。モーメント・マグニチュードはアメリカ地質調査所(USGS)によれば7.7、タイ気象局によれば8.2になります。ザガイン断層で起きた地震では最大とみられ、マンダレーを中心とした南の領域は1839年を最後にマグニチュード7クラスの地震が起きていなかったため、いわゆる空白域だったとしています。ミャンマー国内で多数の死者が出ているだけでなく、震源から1,000km以上離れたタイの首都バンコクでも被害が生じ、都心部で建設中だった高層ビルが倒壊、多くの死亡が報告されています。このビルについて、「鉄鋼などが使用された資材に問題があった可能性がある」と政府が見解を示し、専門家の調査チームを3月30日に発足させています。
日本ファクトチェックセンターによれば、この地震の映像とされる動画や画像が多数拡散していますが、その中には生成AIでつくられた「ディープフェイク」やミャンマーのものではない映像も多数混じっているということです。災害後には実際の被害と異なる映像が拡散するため、注意が必要です。
<2025年4月13日>南海トラフ地震対策検討WG報告書について
内閣府から、南海トラフ地震対策検討WGの報告書が出されました。2023年4月から今年3月27日まで、29回にわたり会議が行われました。
現状での被害想定として、死者は最大約29.8万人(冬・深夜)、全壊焼失棟数は最大約235万棟(冬・夕方)、経済被害は資産等の被害が約224.9兆円、経済活動への影響は約45.4兆円になります.被害形態は多岐にわたり、サプライチェーンへの影響や国内・外の主要産業にも大きな影響を及ぼします。一方で、中山間地域、半島・離島では地域・集落の孤立等が発生、生活への影響の長期化が懸念されています。また、過去の南海トラフの地震では、時間差をおいてM8クラスの地震が発生した事例(いわゆる半割れケース)が知られており、半割れケースの場合、後発地震への備えにより、被害は大きく変化します。10年前から防災対策がどれくらい進展したのか?能登半島地震など最近の経験を含めて、どのような対策が必要なのか?今後の課題を整理しました。
●おもな防災対策の進捗状
住宅の耐震化率/約79%(平成20年)→約90%(令和5年)
津波避難意識の向上(早期避難率)/20%→29~53%(R5)
海岸堤防の整備率/約39%(H26)→ 約65%(R3)
自主防災組織による活動カバー率/約80 %(H25)→ 約90 %(R5)
企業のBCP策定率/大企業約54%(H30)→約76%(R5)中堅企業 約25%(H30)→約46%(R5)
南海トラフ巨大地震対策は一定程度進展している一方で、社会状況は大きく変化しており、過去の自然災害の経験から得られた教訓を踏まえて、主な対策を整理しています。今後の課題として、従来の行政主体による対策だけでは限界があり、防災に関わる特定の主体による取組だけでは到底太刀打ちできないとしています。
<2025年4月6日>防災庁の設置に向けて
防災庁の設置については、強い関心があります。防災業務の企画立案機能を高め、平時から不断に万全の備えを行う「事前防災」に徹底的に取り組むとともに、災害発生時の司令塔機能を抜本的に強化するため、令和8年度中の防災庁設置に向けた検討を行っています。
https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/bousaichou_preparation/dai1/siryou1.pdf
石破総理大臣は防災庁の役割に、(1)避難生活環境の改善、(2)発災後の速やかな官民連携体制の構築、(3)防災DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進の3つを掲げています。さらに、頻発化・激甚化する風水害や切迫する南海トラフ地震等の大規模災害への対応強化のため、事前防災、災害応急対策から復旧復興まで災害対応全般の司令塔として、対応を総括する次官級職員「防災監」の新設を考えています。また、大規模災害への対処の強化/地域防災力の強化促進/避難生活環境の整備等/官民連携や防災DXによる災害対応機能強化/その他の体制強化として 防災教育の強化促進、船舶活用医療の運用開始を見据えた体制強化などを挙げています。
現在「防災庁設置準備アドバイザー会議」を立ち上げ、政府として強化すべき防災施策の方向性と、そのために必要な組織体制の在り方について議論されています。
<2025年3月30日>仙台市の震災遺構「荒浜小学校」
2011年3月11日に発生した東日本大震災において、校舎2階まで津波が押し寄せ、大きな被害を受けた仙台市立荒浜小学校ですが、幸い犠牲者はおりませんでした。児童や教職員、住民ら320人が避難したその校舎を震災遺構として公開し、震災の教訓と地域の記憶を後世へ伝えています。校舎周辺と1階と2階で、校舎の被害状況や被災直後の様子を伝える写真などから、荒浜小学校を襲った津波の脅威を知ることができます。また、4階では、地震発生から避難、津波の襲来、救助されるまでの経過を写真や映像で振り返るとともに、災害への備えについて学ぶことができます。また、荒浜地区の歴史や文化、荒浜小学校の思い出なども紹介しています。さらに、屋上では、荒浜地区全体を見渡しながら、海との位置関係を見るとともに、被災前後の風景を比較することができます。
2023年1月に展示をリニューアルして再オープンしました。リニューアルのポイントとしては、4階教室を利用した展示室「明日への備え」に防災教育コーナーを新設、クイズ形式で防災知識を深められる展示を設置。災害への備えや発生時の対応を学べるアニメーションを流しています。天井にある津波のしぶきの跡や教室の天井に挟まったままの空き缶など、津波の爪痕を示すパネルを設置。震災前の荒浜地区や住民の暮らしをイラストで描いたパネルを設置しました。
https://www.youtube.com/watch?v=1J8sLAPN3sE
https://arahama.sendai311-memorial.jp
校舎周辺には、津波によって浸食された地形や破壊された住宅の基礎をありのままの姿で保存した「震災遺構仙台市荒浜地区住宅基礎」や、犠牲者追悼のために設置されたモニュメント「荒浜記憶の鐘」、震災前後の写真と歴史を刻んだモニュメント「荒浜の歴史」があります。また、地下鉄東西線荒井駅のせんだい3.11メモリアル交流館は、交流スペースや展示室、スタジオといった機能を通じて、みんなで、震災や地域の記憶を語り継いでいくための場所となっています。
<2025年3月23日>仙台市のTeam Sendai
https://www.facebook.com/p/Team-Sendai-震災記録チーム-100079519326878/
仙台市職員等の自主的研究グループ「Team Sendai」(ちーむせんだい)の活動を紹介したいと思います。職員同士の学び合いや市役所内外の人たちとネットワークづくり等を目的として、2010年9月に発足されました。その半年後に東日本大震災が発生しました。
当時、それぞれが災害対応業務に追われる中、自分の部署以外でどんな現場対応が行われているのかがわからず、先が見えない不安を抱える職員も少なくありませんでした。そこで、次の災害に備えるためにも、まずは、災害対応業務を体験した職員に話を聴こうと、翌年1月から聴き取り調査を開始されています。さらには、職員の体験を職員同士で聴き合う「語り部の会」等を開催し、伝承活動にも力を入れています。「冊子」「朗読」「映像」「クロスロードの問題」など、手法は様々です。特に、震災の未体験者でも疑似体験しやすいメニューで、イベントや研修会、自治体への出前講座等で紹介されています。
今年も1月に、震災の教訓を若手職員に伝える研修会を開催されました。
https://www3.nhk.or.jp/tohoku-news/20250122/6000030034.htmlß
おもに震災後に採用され、宮城野区役所に勤務している若手職員およそ20人が参加しました。はじめに震災直後に市役所に入庁し、いきなり避難所に派遣されて運営業務にあたったという職員がまとめた体験記を、入庁して1年目の女性職員が朗読しました。女性職員は朗読で「何をしていいかわからず、自分のふがいなさに落ち込んだ。避難所で被災者からいろいろなことを聞かれたが答えられないことが多く、苦痛だった。この経験をこれからの役所生活に生かしていきたい」と、同じ新人の立場であるみずからを重ねて詠み上げていました。
<2025年3月16日>いのちとぶんか社
2022年に設立された「いのちとぶんか社」は、「ぶんかでいのちを守る」をモットーに、災害時に役立つ防災の知恵を伝えるとともに、東日本大震災の事例や文化コンテンツを通じて、「自然と共生」をテーマに、これからの”生き方”を考えるきっかけをつくる活動を行われています。「和文化を社会的意義のあるものへ」を人生のモットーにしている
葛西啓之さん、葛西優香さご夫妻が代表です。葛西啓之さんはプロの和太鼓奏者、優香さんは、東日本大震災・原子力災害伝承館の研究員もされおり、2021年10月に福島県浪江町に移住されました。
昨年11月に、お二人に依頼されまして、防災講演会「逗子の防災・津波対策を考える!〜福島県浪江町の取り組みを事例に〜」に参加させていただいたことが縁になります。2部構成で、第一部で基調講演をさせて頂いたあとに、葛西優香さんコーディネートによる、鈴木曉さん(逗子市経営企画部防災安全課 課長)、上野幹一さん(浪江町市街地整備課 計画係長)と逗子での防災活動、福島浪江での復興状況などを話し合いました。第2部で、和楽器コンサート『和楽器で学ぶ「自然との共生」』が開催されました。
ある時は美しく、またある時は人間にとって脅威となる自然です。日本人は昔から自然の美しさと恐さを理解し、自然と共生するために様々な文化を生み出してきました。この防災講演会は、「人間と自然との共生」について感じ、考える時間を提供されました。
今後、葛西さんご夫妻と連携を進めていきたいと思っております。
<2025年3月9日>仙台市の「くらしともしもの研究所」のご紹介
仙台市災害文化創造事業の一環となっている取組です。この創造事業は、音楽ホール・中心部震災メモリアル拠点複合施設をめざした活動です。
https://www.city.sendai.jp/shinsaifukko/hukugoushisetsu/kentou/kentoujyoukyou.html
「くらしともしもの研究所」は、災害など「もしも」何かが起こった時でもしなやかに対応できる日々のくらしのあれこれを研究されています。
https://note.com/kurashitomoshimo
災害は誰にでも起こりうることと認識した上で、災害が起きても乗り越える術を持った社会文化を育むことをめざしています。いつ来るか分からない災害に、いつも備えておくのはとってもストレスになることがあります。いつもの楽しい時間でも、どこか頭の片隅に「もしも」のことを考え続けるのは大変なことです。そこで、日々のくらしを楽しくしていく工夫の中で、それが災害時にも役立つことはないか、災害など「もしも」何かが起こった時でもしなやかに対応できる日々のくらしのあれこれを研究しています。以下が、研究所の取り組み事例です。
①もしものときにもおいしいレシピ
長期保存のきく料理のレシピを公開。防災のためだけに食料を保存するのではなく、普段から「おいしい」と思える長期保存のできる食材や作り置きの料理を準備しておく、それが災害時にも役に立ちます。
②野外コワーキング
仙台フォーラス前のスペースを借りて、電気を使わないこたつに入って麻雀をする実験を行いました。
③のりっぱで遊ぼう
「のりっぱ」は研究所の近くにあるのり面の原っぱの愛称です。のりっぱで焚き火をしてみたり、身近にある自然の素材で工作をしてみたり、子どもが自由な遊び場を楽しめる場所を通じ、災害などの「もしも」に備えています。
<2025年3月2日>仙台防災未来フォーラム2025と世界BOSAIフォーラム2025
https://sendai-resilience.jp/mirai-forum2025/about.html
「仙台防災未来フォーラム」は、東日本大震災の経験や教訓を未来の防災につなぐため、発表やブース展示、体験型プログラムなどを通じて市民のみなさまが防災を学び、日頃の活動を発信できるイベントです。3月8日(土)に開催される今年度のテーマは、「一人ひとりが主役 ともに創ろう防災の輪」。東日本大震災からの復旧・復興に加えて、気候変動をはじめとした環境問題や水害など様々なテーマから広い意味での「防災」について知る・考えるプログラムを実施します。
また、3月7日~9日の3日間、仙台国際センターと緑彩館を会場に第4回「世界防災フォーラム」が開催されます。今回のテーマは「気候変動」で、災害リスクを減らすためにどのような行動をすべきか議論を通じて考えます。今回初の企画として「震災を伝える上映会~あの日を忘れない~」と題し、『生きる』と『ただいま、つなかん』の2本の映画を上映します。また、54のセッション、学生・若手による40のポスター発表、75の展示などあります。さらに、100年前の手紙プロジェクトがあります。
https://worldbosaiforum.com/project/letter-project/
関東大震災当時、アメリカでは西海岸を中心に日本人移民排斥運動の機運が高まっていました。一方で関東大震災における海外からの支援のうち、7割近くをアメリカが占めていたことをご存知でしょうか。100年前に全国の学生から寄せられた750通の返礼の手紙を調査しています。手紙をつづった学生の所属高校のリストも公開しておりますので、お心当たりの方はご連絡ください。いつ起きてもおかしくない、と言われている首都直下地震は、関東大震災と同じように首都圏を直撃します。災害時の国際支援についてより多くの人に関心をもっていただくことは、大規模災害に備える上でも、世界の平和を考える上でも重要だと考え、このプロジェクトを進めています。
<2025年2月23日>仙台BOSAIxTECHの活動について
https://sendai-bosai-tech.jp/about/
仙台市は、東日本大震災の経験をもとに、「BOSAIxTECH」をキーワードに、防災×テクノロジー×ビジネスを融合した新たな防災課題の解決策を持続的に生み出す場(プラットフォーム)を形成しました。2022年2月に設立され、会員同士が連携しながら、アイディア創出や試作開発・実証実験のサポート、ビジネスマッチング、情報発信、交流会など多岐にわたる活動を実施しています。現在の会員数は267になります。企業の方には防災現場のニーズ収集や製品開発の支援、自治体の方には実証実験の視察体験や情報共有の機会を相互に提供し、学術機関の方には専門的な知見をいただくなど、各関係者が一体となって、新たな防災ソリューションの創出に取り組んでいます。技術的な制約や収益性の課題でこれまで実現が難しかった防災課題にも取り組み、ここから生まれた事業を仙台から全国、世界へと展開していきます。このプラットフォームを通じて、「仙台防災枠組」が掲げる理念の実現と、防災関連産業の発展の両立を目指します。
以下、実証実験事例を紹介します。
①垂直測位技術を活用して、消防隊員の屋内位置把握に関する実験を浜松市にて実施/要救助者の安全確保のみならず、救急隊員の安全確保や的確な位置把握が重要課題。
②現場の職員からの災害情報を「無線」と「地図」で可視化/多賀城市とミライエ・デジタスが共同開発。
③ジオラマ×デジタルによる防災接点の「身近」化に関する検証/ジオラマをプロジェクションマッピング、ARの技術を掛け合わせることで、防災以外の様々な関心や動機の入口から、防災関連コンテンツに触れる機会を創出する。
<2025年2月16日>震災アーカイブとJAPAN SEARCHについて
https://www.shinrokuden.irides.tohoku.ac.jp/symposium/20250111/
https://www.bousai.go.jp/kaigirep/kentokai/daikibosaigai_jyouhou/pdf/dai1kai/siryo3.pdf
国内外に分散する東日本大震災の記録等を、国全体として収集・保存・提供している国会図書館による【ひなぎく】は東日本大震災後に設置され、当時の記録等を国内外に発信するとともに後世に永続的に伝え、被災地の復興事業、今後の防災・減災対策、学術研究、教育等への活用に貢献しています。東北大学災害科学国際研究所の「みちのく震録伝」などと連携し、活動を推進しており、毎年、震災アーカイブシンポジウムを開催しています。今年は1月11日に『残すべき「記録」と「記憶」』というテーマで開催されました。
さらに、国立国会図書館は、日本全国のデジタルアーカイブと連携し、さまざまな分野のコンテンツを検索・閲覧・活用できるプラットフォーム【JAPAN SEARCH(ジャパンサーチ)】を開設し運営しています。ジャパンサーチは、書籍・公文書・文化財・美術・人文学・自然史/理工学・学術資産・放送番組・映画など、我が国が保有する様々な分野のコンテンツのメタデータを検索・閲覧・活用できるプラットフォームです。すべてのデータベースを横断してキーワード検索する「横断検索」、「画像検索」、「楽しむギャラリー」やジャパンサーチで見つけたお気に入りのコンテンツのブックマークを作成する機能「マイノート」など、さまざまな魅力的な機能を持っています。
ジャパンサーチ
<2025年2月9日>地震調査委員会 地震長期評価の更新
https://www.jishin.go.jp/evaluation/long_term_evaluation/chousa_25jan_kakuritsu_index/
1995年の阪神淡路大震災を契機に、政府の地震調査委員会の長期評価部会は1997年に検討委員会を設置し、日本各地の活断層や海溝型地震を対象に長期的な地震の発生確率を試算し、その結果を年1回公表しています。今年は1月15日に公表されました。宮城県沖で想定されるマグニチュード7.4前後の大地震の30年以内の発生確率を前年の「70%~80%」から引き上げ「70%~90%」としました。
宮城県沖や三陸沖での地震は、海溝型地震に分類され、数十年から数百年という短期間で地震を繰り返すのが特徴です。特に宮城県沖地震の平均発生間隔は約37年で、領域も含めたエリアで、2011年3月11日に東北地方太平洋沖地震が発生しています。宮城県沖地震は発生間隔が短いため、1年当たりの発生確率の上がり幅が大きくなると述べています。
ここでの地震確率による推定では、過去に発生した地震の発生間隔の平均から確率を割り出す計算方法「単純平均モデル」が用いられていますが、南海トラフ地震については、過去の地震の時期の間隔を推定して次を予測する「時間予測モデル」が使用されます。時間予測モデルでは、大きな地震の後では次の地震までの間隔が長く、小さな地震の後では間隔が短くなるという理論が用いられます。つまり、前回の地震で解放されたひずみが大きいほど、次の地震が起きるレベルまでひずみが溜まる時間が長くなるという前提です。
https://www.jishin.go.jp/resource/terms/tm_time-predictable_model/
<2025年2月2日>津波が港湾ネットワークにもたらす影響
https://www.tohoku.ac.jp/japanese/newimg/pressimg/tohokuuniv-press20240106_01_network.pdf
東北大学での最近の津波研究成果を報告させて頂きます。シンガポールのナンヤン工科大学の博士を取得した後に津波工学研究室の研究員として活動しているチュア・コンスタンスさんの研究成果です。津波が世界の港湾ネットワークに与える影響を、地球温暖化による海面上昇も考慮して包括的にリスク評価する手法を新たに開発しました。マニラ海溝津波が発生すれば東日本大震災時より経済損失が大きい可能性も出てきました。
マニラ海溝での巨大地震・津波シナリオを用いて分析したところ、現在の海面水位では最大11港湾が被害を受ける一方で、地球温暖化による将来の海面上昇時には最大15港湾が被害を受ける可能性が示されました。港湾は海面水位の大きな変動に弱く、港湾が機能を停止するとその港湾が航路に含まれるネットワーク全体に影響が及び、海運業は深刻な打撃を受けて大きな経済損失となることがあります。東日本大震災の際、津波が港湾や船舶に与えた経済被害は最大1兆8,000億円にのぼり、港湾の機能停止により1日5,100億円の海上貿易の損失が数カ月間にわたり生じたと推計されています。しかし、これまでそのリスク評価は十分になされていませんでした。世界の港湾ネットワークの位相、港湾同士の接続性、地球温暖化による海面上昇等を考慮して、津波が港湾および世界の港湾ネットワークにもたらすリスクを包括的に評価する手法を開発したことになります。さらに、新たな指標「媒介中心性変化率」を導入し、津波で影響を受けにくい港湾の機能を評価して代替港湾を示すことも可能にしました。この研究成果は、2024年12月4日、npj Natural Hazardsという学術誌に掲載されました。
<2025年1月26日>宮崎県日向灘沖での地震と津波
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20250113/k10014692181000.html
https://mainichi.jp/articles/20250114/k00/00m/040/184000c
1月13日夜、日向灘を震源とする地震が起き、宮崎県で震度5弱の揺れを観測したほか、宮崎県と高知県に最大で20センチの津波が到達しました。この地震で、気象庁は南海トラフ地震との関連を調べるため評価検討会を開きましたが、巨大地震の可能性が平常時と比べて相対的に高まったとは考えられないとして調査を終了しました。長周期地震動の「階級2」(4つの階級のうち上から3番目の揺れ)が宮崎県宮崎市と小林市と熊本県人吉市で観測されました。
気象庁は当初、津波の心配はないとしていましたが、地震発生の10分後に一転して高知県と宮崎県に津波注意報を発表しました。実際に宮崎県で最大20センチ、高知県で同10センチの津波が観測されました。気象庁は「再評価によって事後的に津波注意報などを出すことはある。油断せず継続的に最新の情報を確認してほしい」と呼びかけています。ただ、津波注意報の有無は住民の避難行動に大きな影響を与え、発表が遅れれば逃げ遅れる危険性は高まります。今回、津波が宮崎港(宮崎市)に到達したのは注意報のわずか7分後でありました。なお、津波注意報は13日午後11時50分にすべて解除されました。
今回、地震の波形の振れ幅から地震の規模を計算したところ、当初マグニチュード6.9と推定され、南海トラフ地震との関連について調査する条件の6.8を上回ったことから、専門家からなる評価検討会を開きました。評価検討会が開かれたのは去年8月の日向灘を震源とするマグニチュード7.1の地震以来、2回目です。専門家らが国内外のデータをもとに検討した結果、震源は南海トラフ地震の想定震源域の西の端にある陸側と海側のプレートの境界で起きた一方、地震の波形全体から求めたマグニチュードは6.7と、巨大地震への注意を呼びかける7.0に達していませんでした。このため気象庁は、巨大地震が起きる可能性が平常時と比べて相対的に高まったとは考えられず、特段の防災対応を取る必要はないとして、地震からおよそ2時間半後に調査を終了しました。その後、地震の波形の振れ幅から計算したマグニチュードは6.9から6.6に更新され、震源の深さは36キロと変更になりました。
<2025年1月19日>阪神・淡路大震災から30年
1月17日で阪神・淡路大震災から30年が経ちました。直下型の地震が発生し、突然の強い揺れにより耐震性の低い多くの建物が倒壊、6000人を超える方が亡くなり、けがをした方も4万人あまりになります。当時の人命救助・救出活動の状況から、自助7割、共助2割、公助1割と言われたように、住民1人ひとりが自らの身を守るための知識を持ち、災害時に行動することの重要性を理解することが求められました。さらに、共助として地域住民同士のつながりを強め、助け合う意識を育てることが大切で、地域の防災力の向上には、コミュニティが災害に備えるための自主的な防災訓練や対策の重要性が強調されました。また、発災当初から復旧、復興の段階で、ボランティアが重要な役割を果たしました。被災地には1年で130万人、延べでは少なくとも480万人ものボランティアが駆けつけました。その後、1月17日が「災害ボランティアの日」に制定されました。加えて、建築基準の見直しや耐震補強の必要性が示され、耐震性を高めるための法律やガイドラインが整備されました。さらに、地域防災計画の重要性が指摘され、地震発生に備えた地域ごとの防災計画を策定し、実行することが必要になります。
1月15日に日本学術会議でシンポジウムが開催され、報告を行いました。30年が経過した阪神・淡路大震災に加えて、2024年に20年を迎えた新潟県中越地震、2011年の東日本大震災という3つの震災を取り上げて、当時の経験や教訓がどのように残され、伝えられていったのかを、過去から未来へ繋ぐ災害教訓のバトン・リレーとして整理しました。一人の人間が災害を何度も経験することは必ずしも多くありませんので、時間の経過とともに忘却が始まりますし、災害対応を経験した個人・地域は世代交代し、組織の人員は更新されてしまいます。したがって、効果的な災害対応を行うためには、過去の災害における経験を家庭・地域や組織の中で継承し、活かしていくことが重要であると伝えました。
<2025年1月12日>防災の国際標準化について
https://www.tohoku.ac.jp/japanese/2024/12/press20241219-01-bosai.html
2015年3月の国連防災世界会議で「仙台防災枠組2015-2030」が採択され、防災・減災を加速させる必要がある中で、産業界でも防災・減災を適切に進めるための信頼できる規格が必要とされています。この中で、経済産業省による「戦略的国際標準化加速事業」として、東北大学が中心となり、2019年から我が国における防災・減災の規格開発のための調査・研究が始まりました。第2回世界BOSAIフォーラムで、この議論が行われました。その後、2020年に国際規格の専門委員会で防災に関するワーキンググループ(WG6)を設置、2022年7月には災害の種類や防災に活用されるインフラの種類、活用分野、機能などを議論し、まとめた技術報告書が発行されました。
そしてこのたび、「インフラ、スマートコミュニティ」の原則と基本要件をまとめた『防災概念の国際規格』ができあがり、2024年11月にISO 37179“防災に貢献するスマートコミュニティインフラストラクチャーの原則と一般的な要件”として発行されました。国内外で高まる災害リスクを事前に軽減すること、災害後に速やかに回復すること等を目指し、スマートコミュニティおよびそのインフラストラクチャーに備えておくべき基本的な「防災概念」の国際規格(ISO)が発行されたことになります。規格には「ステークホルダーの参画」「科学的根拠」「ハード対策とソフト対策の組み合わせ」などの原則が盛り込まれており、コミュニティ開発・計画立案者、資金やサービスの提供者、インフラスなどの管理者などが利用することを意図しています。防災・減災における2030年までの達成目標を定めた国際アジェンダ「仙台防災枠組2015-2030」の考え方を踏まえて作成された規格です。今後、災害リスクを軽減し、コミュニティとそのインフラの回復力を強化することを目指し、開発・計画立案者、資金やサービスの提供者やインフラなどの管理者などに活用されることが期待されます。国内外の防災に関するインフラ製品・サービスの設計、実装の質向上が見込まれます。
<2025年1月5日>2025年を迎えて
元日で能登半島地震から1年が経過しました。以下が今議論されている課題です。
・状況把握の困難性や孤⽴集落発⽣等の地理的特徴や社会的特性を踏まえた災害応急対応や応援体制の強化・⾼齢化地域における災害関連死防⽌のための避難⽣活環境の整備等の被災者⽀援の強化・甚⼤な被害やリソース不⾜を踏まえたNPOや⺠間企業等との連携の強化・将来の⼈⼝動態等の社会的特性を踏まえた事前防災や事前の復興準備、復旧・復興⽀援の推進などです。
1月17日は阪神淡路大震災30年。この震災を引き起こした兵庫県南部地震は都市直下型だったため、強震による密集地域での建物や社会インフラの被害が深刻でした。また、地震頻度が相対的に少ない地域での突然の震災であり、人命救助、緊急対応や復旧の過程で多くの課題を残しました。これが、教訓として多くの資料に残されています。このほど、『阪神・淡路大震災から東日本大震災へ——経験・教訓のバトン・リレー』というタイトルで寄稿させて頂きました(岩波月刊科学)。関連のイベントとして、1月15日、日本学術会議でシンポジウムが開催されます。
3月7-9日は第4回世界BOSAIフォーラムが開催されます。このフォーラムは、東日本大震災を経験した東北の地で、災害で悲しむ人々をこれ以上増やしたくないという願いを込めて始まりました。スイスの防災ダボス会議と連携し、国内外から東北・仙台に産・官・学・民の多様な人々が集まり、「仙台防災枠組2015-2030」の実施を推進します。
3月8日、東北大学川内萩ホールを会場に、東日本大震災語りべシンポジウム「かたりつぎ~朗読と音楽のとき〜」が開催されます。
朗読:竹下景子 演奏:谷川賢作 映像:清水大輔(タイムラプスクリエーター)
https://www.shinrokuden.irides.tohoku.ac.jp/symposium/kataritsugi2024/