<2024年11月17日>大成建設技術センター訪問
東北大学の津波研究室では、卒業生と現役の学生さんとの交流を目的に、毎年同窓会を実施しています。今年は、卒業生で、社会人ドクター1年生でもある橋本貴之さんにご担当いただき、大成建設の技術センターを訪問させて頂きました。その後に懇親会を開催、今年は、卒業生と現役で約50名に参加いただきました。
2023年、大成建設(前身は大倉土木)は創業150周年を迎えました。1958年、技術研究部を設置、1979年横浜市戸塚区に技術研究所の全機能を移転されています。技術センターの見学ツアーを「テクノロジーが創る持続可能な未来~先進技術が実装された未来を体験するFuture Tech Tour~」をテーマにリニューアルされました。施設訪問の希望者も多く、国内外から年間3000人もの来客があるそうです。さらに、今年から、社内の家族向けの見学会も開催し、お子さんに大人気だそうです。建設を手掛けた東京国立競技場などの模型は圧巻でした。
https://www.taisei-techsolu.jp/tech_center/
技術センターには、構造のラボ、風のラボ、風音のラボ、火災のラボ、人と空間のラボ、音響のラボ、材料と環境のラボ、海と川のラボ、土と岩のラボ、などがありますが、今回は特に、「海と川のラボ~波や流れを知り、安全な構造物をつくる~」とZEB実証棟「人と空間のラボ」を詳細に見学させていただきました。ZEB実証棟は、経済性を考慮した更なるエネルギー性能の向上と、健康経営時代に相応しいオフィスへの進化など、次世代の執務環境を目指しています。現在、新技術とAI・IoT を活用したZEBとウエルネスの機能を同時に実証する都市型ZEB(ゼロ・エネルギー・ビル)として生まれ変わりました。
<2024年11月10日>BOSAI人材育成プログラムについて
東北大学は、福島県の浜通りを拠点に防災や減災に関わる人材を育てる教育プログラム「BOSAI人材育成」を始める予定です。学生、研究者ら幅広い世代を集め、東日本大震災と東京電力福島第1原発事故の教訓や激甚化する災害対応などを学び、被災地の復興のサポートを目指しています。昨年から、南相馬、富岡、大熊、双葉、浪江の浜通り5市町と連携協定を結び、浜通りに活動拠点を整備する方針を掲げているところですが、災害による犠牲者をなくすため、想定外の事態にも柔軟に対応できる人材を浜通りから育てていきたいと考えています。そのためにも防災の知識に加え、判断力、実践力、そして危機管理能力の向上が大切です。このプログラムは、本学が復興に向けて取り組む活動「FUKUSHIMAサイエンスパーク構想」の一環で、震災と原発事故の経験を踏まえてプログラムを構築し、浜通りでのフィールドワークや座学を想定しています。過去に国内外で起きた大規模災害の規模や構造を分析し、危機管理の考え方や情報伝達の在り方など基礎的な知識を身につけ、災害に対応したロボットなど先端技術・研究も含まれます。
先日10月4日、福島県双葉郡浪江町の「道の駅なみえ」の会議室において、「BOSAI人材育成」キックオフミーティング(主催:東北大学 グリーン未来創造機構)が開催されました。全体構想の説明、専門分野の異なる4人の教員と浪江町の担当者が、FUKUSHIMAサイエンスパーク構想や地域のこれまでの取り組み、今後の「BOSAI人材育成」構想の概要、また防災に繋がる最新の研究等に関する話題提供とディスカッションを行い、BOSAI人材に必要な資質・能力やその育成の方法等についての意見交換をしました。当日は教職員・学生など本学関係者が約30名、中央官庁や地方自治体、また企業や一般応募による参加者約30名の約60名にご参加いただき盛況となりました。翌日には、震災遺構の浪江町立請戸小学校、大熊町インキュベーションセンター、東日本大震災・原子力災害伝承館、中間貯蔵施設の視察を行い、知見を深めました。
<2024年11月3日>津波防災の日
平成23(2011)年6月に、津波対策を総合的かつ効果的に推進することを目的とした「津波対策の推進に関する法律」が制定されました。この法律では、津波対策に関する観測体制強化、調査研究推進、被害予測、連携協力体制整備、防災対策実施などが規定されています。そして、国民の間に広く津波対策についての理解と関心を深めるために、11月5日を「津波防災の日」とすることが定められました。この11月5日は、今から160年前の安政元年11月5日(太陽暦では、1854年12月24日)に発生した安政南海地震で、紀州藩広村(現在の和歌山県広川町)を津波が襲った時、濱口梧陵が稲むら(取り入れの終わった稲わらを屋外に積み重ねたもの)に火をつけて、村人を安全な場所に誘導したという実話にちなみます。この実話をもとにして作られた物語が「稲むらの火」です。
今年も津波防災の日の前後の期間にさまざまなイベントが開催されていますが、そのひとつとして、令和6年度「津波防災の日」スペシャルイベント~「能登半島地震、南海トラフ地震臨時情報発令等を踏まえた津波への備え」が11月5日、オンラインで開催されます。11月4日まで、参加申し込みが下記のHPで可能です。
https://tsunamibousai.jp/report/12/index.html
これに先駆けて、「世界津波の日」2024高校生サミットin熊本が10月23日・24日に開催されました。
https://tsunamisummit2024.pref.kumamoto.jp
地震や集中豪雨など大規模自然災害を経験した熊本で、命を守る対策と創造的復興を学ぶことを目的として開催され、世界各国の高校生が参加し、自然災害の脅威や対策を学び、議論するとともに、交流を通じてお互いのきずなを深めました。
<2024年10月27日>2023年東日本大震災伝承調査報告 第2弾
https://311mn.org/info47
東北3県における東日本大震災の2023年伝承活動調査結果を紹介させていただきます。調査を実施した3.11メモリアルネットワークでは、東日本大震災の伝承活動の現状と課題の共有、防災・減災活動の活性化を目的に、毎年実施しています。
今年2月に「2023年東日本大震災伝承活動調査」第1弾として、震災学習プログラム・震災伝承施設の受入人数推移の速報(その後詳報)を公開しています。第2弾詳報では、伝承活動の現状(Q1:基本情報、Q2:連携・相乗効果、Q3:学校における震災学習、Q4:企画や工夫、Q5:活動継続の見通し、Q6:今後に必要なこと・もの)について把握するアンケートを実施、3県26団体・25施設運営組織の担当者が協力してくださいました。おもな結果としては、東日本大震災を伝承する団体の92%が継続性の不安を抱えており、また、伝承継続に関する公的な資金支援を「不十分」とする回答は61%を占めていました。災害が多発する日本において、国民一人ひとりの防災意識の向上を担う震災伝承の取り組みに対して、東北の被災自治体だけの資金や人材の負担では難しい現状が明らかとなり、次世代への伝承を支える新しい仕組みへの期待が確認されました。
東北の被災沿岸部では、東日本大震災以降に活発な震災伝承活動が始まり、震災前にはなかった修学旅行や視察の訪問があり、新しい地域の価値となっています。なお、第1弾の来訪数調査により、2023年は震災伝承施設への過去最多の来訪数がありましたが、2024年になって来訪数が減少するケースも散見されるようになっています。また、発災直後から活動している震災学習プログラム実施団体(伝承団体)の来訪数はコロナ禍前から伸び悩んでおり、リピート訪問者からの高い評価とは裏腹に、本調査でも「継続性の不安」の大きさが再確認されました。
<2024年10月20日>「最後の乗客」の堀江貴監督を迎えて
仙台出身でNY在住の堀江貴監督が、東日本大震災から10年後のメモリアル作品として、オール仙台ロケで自主製作された映画「最後の乗客」が、今月11日から、全国ロードショー公開されています。
https://gaga.ne.jp/lastpassenger/
3月に仙台で凱旋公開された際には、私も舞台挨拶させていただきましたが、連日満員御礼となりました。その成果も受け、配給会社GAGAの支援のもと、ついに念願の全国ロードショー公開となったものです。是非、劇場へ足を運んでご覧ください。
東日本大震災から10年、東北のとある小さな街。まるで人気のない夜の道路でタクシーを走らせていた運転手の遠藤は、大きな津波被害を受けた「浜町」に行こうとする謎めいた若い女性客を乗せる。不審に思いつつも目的地に向かっていたところ、突然路上に幼い娘と母親の2人組が現れ、彼女たちも同乗することに。遠藤と3人が乗り合わせたのは偶然なのか?道行きの先に交錯するあの日の出来事とは―。
https://forum-movie.net/sendai/movie/5538
<2024年10月13日>グリーンランドで起きた謎の地震
https://www.bbc.com/japanese/articles/cp39dy0ll95o.amp
グリーンランドで起きた謎の地震が、9日間続いた津波によると判明したことが、BBCニュースで紹介されました。グリーンランドのフィヨルドで発生した大規模な地滑りが、9日間にわたって「地球を揺るがす」大波を引き起こしていたようです。
昨年9月に発生した地震波は世界各地のセンサーに表れていましたが、どうも通常のメカニズムではないようで、過去、大規模な地震が発生するような場所でもありません。科学者たちはそれがどこから来たのかを調査することになりました。その結果、山腹の岩が崩れて氷河の氷を巻き込んだ地滑りが、高さ200メートルの大波を引き起こしたことが判明しました。この波が狭いフィヨルドに「閉じ込められ」、9日間も行ったり来たりして振動を発生させたと報告しています。この結果は、学術誌「サイエンス」に掲載されました。
人工衛星画像でこのフィヨルドで地滑りが起きる前と後を比較し、大規模地形変化が明らかになりました。最終的には、2500万立方メートルの岩石が海に叩きつけられ、高さ200メートルの「メガ津波」を引き起こしたことが示されました。気候変動によってグリーンランドの山々を支える氷河が溶ける中で、このような地滑りが頻繁に起こっていると指摘しています。この調査に参加した英ユニヴァーシティ・コレッジ・ロンドン(UCL)のスティーヴン・ヒックス博士は、「昨年、私の同僚たちがこの波形を最初に見つけたとき、それは地震には見えなかった。私たちはこれを『未確認地震物体』と呼んだ」と説明されています。この地滑りはグリーンランドの気温が上昇し、山の麓(ふもと)の氷河が溶けたことが原因だということです。
<2024年10月6日>仙台市の音楽ホールと震災メモリアル拠点の複合施設
仙台市では、音楽ホールと中心部震災メモリアル拠点の複合施設「(仮称)国際センター駅北地区複合施設」を整備する計画を進めています。地下鉄東西線国際センター駅北側に整備することにしていて、開館は2031年度を予定しています。今年5月に策定した基本計画によりますと、せんだい青葉山交流広場を敷地とし、床面積最大3万2000m2の施設を建設する予定です。施設の基本理念は「人・文化・まちを育む創造の広場~文化芸術と災害文化がつなぐ 人と人、過去と未来、仙台と世界~」となっています。
この施設の業務委託に係る公募型プロポーザルの審査が実施され、9月8日に設計者を選ぶ最終審査が行われました。審査の結果、建築家・藤本壮介さんの設計事務所が、事業者候補に選ばれました。藤本壮介さんは大阪・関西万博の会場デザインプロデューサーを務めており、海外でも活躍する注目の建築家です。いくつものプレートが多層に重なりあう外観で、音楽ホールの壁がときに開放され、外部とつながる大胆なデザインを提案しています。2,000席規模の音楽ホールを取り囲むように、バルコニー席、ロビー、テラスなどが四角いプレートの形で寄り集まる構造になっています。最大の特徴は、3月11日などの特別な日に音楽ホールの壁が大きく開放され、建物全体が巨大な劇場空間になること。藤本さんはプレゼンで「震災を巡る様々な思いや記憶が、ある特別な瞬間、音楽の力によって一つになって響きあう。そんな場所をつくりたい」と話していました。
https://www.asahi.com/articles/ASS9G3W66S9GUNHB00WM.html
<2024年9月29日>南海トラフ地震臨時情報の振り返り
「南海トラフ地震臨時情報」の発表から1ヶ月以上が経ちました。津波が想定されている地域では自治体などの一部で対応に混乱が見られましたが、南海トラフ地震への備えの意識向上や対策の点検に繋がったと概ね評価されているようです。いくつかの自治体では、これまで「地域防災計画」に臨時情報の対応が含まれていなかったことから、事前避難の呼びかけなど新たな対応方針を決めて盛り込んでいく検討が行われています。しかし、一方で課題も指摘されており、南海トラフ地震の防災対応を所管する内閣府は、自治体や事業者にアンケートを行って情報の伝え方を検証するなど、改善に向けた検討を進めることにしています。
内閣府は9月9日、南海トラフ巨大地震の対策について検討するワーキンググループの会議を開き、初めて発表された「南海トラフ地震臨時情報」をめぐる行政の対応や社会の反応などについて検証を始めました。一連の対応について、委員からは「情報の内容についてもっと明確に伝えるべきだったのではないか」「事業者などの主体が事前の準備が十分にできていなかったから慌てた部分があったのではないか」などの課題が挙げられました。
一方、具体的な対応については、「ライフライン企業や交通事業者には全国で統一的な対応の指針を示してほしい」「地域ごとに想定される被害の大きさや対策の度合いなどを総合して判断すべきことだから、国が個別具体的な対応について明確な指針を定めることは難しいのではないか」「地域ごとに事前に対応を話し合っておくことが必要ではないか」などの意見がでました。また、観光業などに大きな影響が出たことについては「行政では損失を補填する対応は難しい」としたうえで、「“損害保険”のような制度をつくって社会全体で取り組むことも必要ではないか」といった意見も挙げられました。
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20240908/k10014574431000.html
https://news.yahoo.co.jp/articles/6f3058e6194dc4355d1888d965de04168dafe069
<2024年9月22日>津波避難施設について、内閣府調査の紹介
https://www.sankei.com/article/20240722-WTGFUKSSGVPWLMMQQRH23QVA2M/
地震などにより発生する津波に対しては、揺れや津波警報発表の後に、適切で迅速な避難行動を取ることにより人的被害を最小限に軽減することが可能です。そのため沿岸各地では、避難体制充実のために、緊急の津波避難タワー、命山、シェルターなどの施設が整備されるようになりました。特に、南海トラフでは巨大地震発生から津波の沿岸域への到達が早いので、このような施設が不可欠です。
先日、内閣府から、全国の自治体が設置した津波避難施設の数が昨年4月時点で550になったことが発表されました。前回調査(2021年)の502から1割増加したことになります。高台などが近くになく、避難が難しい地域の解消を目指す動きが加速している状況が伺えます。550の内訳は、津波避難タワーが431基、「命山」などと呼ばれる盛り土が73カ所、人工地盤が43カ所、避難シェルターが3カ所になります。 都道府県別では、南海トラフ巨大地震で被害を受けると想定される静岡県が140と最多で、高知県123、三重県38、和歌山県37となっています。また、日本海溝・千島海溝の巨大地震対策の一環で2022年に「特別強化地域」として指定したエリアでも整備が進み、北海道は前回調査の13から27とほぼ倍増したことが報告されています。
この他、おもに民間の建物を自治体が指定する「津波避難ビル」は1万4729棟あります。津波避難ビル等に係る事例集を内閣府が策定しており、津波避難ビル等を活用した津波防災対策の推進について提案しています。
https://www.bousai.go.jp/jishin/tsunami/hinan/pdf/jireishuu.pdf
<2024年9月15日>台湾の集集(チーチー)地震
集集(チーチー)地震は、台湾時間の1999年9月21日に、台湾中部の南投県集集鎮付近を震源として発生したモーメントマグニチュード7.6(USGS、台湾中央気象局はMs7.3)の直下での地震で、内陸型とプレート境界型の2つの性質を持つそうです。「921大地震」「台湾大地震」「集集大震災」「台湾中部大震災」などとも呼ばれ、台湾では20世紀で一番大きな地震でありました。まもなく25年が経ちます。
台湾はユーラシアプレートとフィリピン海プレートの衝突によって東西方向に圧縮され、そのおかげで南北に長い台湾山脈が形成されており、台湾で起こる地震はこの運動に起因しています。この地震で特に被害が甚大だったのは震源の南投県と、南投県に隣接する台中県になりますがが、震源から比較的離れた台北市と台北県でもビルが倒壊し多くの死傷者が出ました。死者は2400名、負傷者は11000名を超え、学校や道路などに大きな被害を出しました。各地で断層が出現したことでも注目されました。台湾の成長の原動力であるハイテク産業の中心である新竹(しんちく)も被害を受け、この年の経済成長を下方修正しなければなりませんでした。
集集地震の被災地域には、被災した学校を保存した遺構内にある「九二一地震教育園区」や「車籠埔断層保存園区」などの、震災伝承、防災啓発施設もあります。また、この震災を経て台湾の救難救助体制は充実し、世界各地で重大な災害が発生すると、台湾のレスキュー隊と医療団はすぐに被災地に駆けつけ、一般市民も惜しみなく義援金を贈っています。
<2024年9月8日>津波避難施設について、内閣府調査の紹介
地震などにより発生する津波に対しては、揺れや津波警報発表の後に、適切で迅速な避難行動を取ることにより人的被害を最小限に軽減することが可能です。そのため沿岸各地では、避難体制充実のために、緊急の津波避難タワー、命山、シェルターなどの施設が整備されるようになりました。特に、南海トラフでは巨大地震発生から津波の沿岸域への到達が早いので、このような施設が不可欠です。
先日、内閣府から、全国の自治体が設置した津波避難施設の数が昨年4月時点で550になったことが発表されました。前回調査(2021年)の502から1割増加したことになります。高台などが近くになく、避難が難しい地域の解消を目指す動きが加速している状況が伺えます。550の内訳は、津波避難タワーが431基、「命山」などと呼ばれる盛り土が73カ所、人工地盤が43カ所、避難シェルターが3カ所になります。
都道府県別では、南海トラフ巨大地震で被害を受けると想定される静岡県が140と最多で、高知県123、三重県38、和歌山県37となっています。また、日本海溝・千島海溝の巨大地震対策の一環で2022年に「特別強化地域」として指定したエリアでも整備が進み、北海道は前回調査の13から27とほぼ倍増したことが報告されています。
この他、おもに民間の建物を自治体が指定する「津波避難ビル」は1万4729棟あります。津波避難ビル等に係る事例集を内閣府が策定しており、津波避難ビル等を活用した津波防災対策の推進について提案しています。
https://www.bousai.go.jp/jishin/tsunami/hinan/pdf/jireishuu.pdf
<2024年9月1日>南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)の振り返り
8月8日、宮崎県日向灘沖で発生した地震(Mw7.0)およびそれによる津波で各地に影響を与えましたが、大きな被害は報告されませんでした。しかしその直後に、気象庁は、南海トラフ地震に関する評価検討会(南海トラフ地震臨時情報に関する検討会)を開催し調査を実施しました。
想定震源域とその周辺でMw6.8以上の地震が発生したと評価した場合やプレート境界において通常とは異なるゆっくりとしたすべりが発生した場合に、臨時情報として「巨大地震注意」を出します。Mw8.0以上が発生した場合には、「巨大地震警戒」、いずれも当てはまらない場合には、「調査終了」となります。今回初めてこのような調査を実施し、8月8日から15日までの1週間、地震臨時情報(巨大地震注意)を発表しました。科学的な背景として、1週間以内にM8以上の可能性が平時0.1%→0.5%に上昇、通常より確率が高くなるため、日常生活を続けながら、日頃からの地震及び津波の備えの点検(再確認)を促すものです。地震の直前予知は難しいですが、事前の注意喚起により少しでも防災対応の強化や避難などの準備や意識を向上すれば、被害は軽減できます。東日本大震災の2日前、3月9日に地震(M7.3)がありましたが、この時に、学校や職場で避難計画の点検などを行った所は、震災の当日落ち着いた行動が取れ、そのほとんどが正しい行動であったことが報告されています。このような背景の下に、実施された取り組みになります。しかし、一方で、さまざまな社会・経済への影響、地域での不安が出ていることも現状です。今回の発表により実施できた取り組み、その評価や課題の整理、そして改善の提案が重要となっています。
北海道の根室沖から東北地方の三陸沖の巨大地震の想定震源域やその周辺でMw7.0以上の地震が発生し、大規模地震の発生可能性が平常時より相対的に高まっている際に後発地震情報「北海道・三陸沖後発地震注意情報」が発表されることになっており、この情報をどのように捉えて、備えに活かすかも同様に大切です。
<2024年8月25日>津波研究に取り組む大学院生のご紹介
本日は、今年4月に東北大学大学院に入学した、津波研究室の菊田歩佳(ほのか)さんを紹介させて頂きます。スタジオにお越し頂きました。
出身は宮城県気仙沼市で、震災当時は小学3年生でした。震災直後は、避難所や仮設住宅生活も経験しました。防災に関わり始めたのは、中学生の頃からです。避難所設営訓練や救急救命講習など、防災学習を通じて実践的なスキルを学びました。高校生の頃は、地域の活性化に関心を持ち、地元の街歩きツアーを企画し、自ら語り部を行いながら街案内をしました。
津波の研究を志すきっかけとなったのは、高校3年生の時に参加した「世界津波の日」高校生サミットでした。津波リスクを抱える世界各国の高校生が集まり、津波に対する備えなどについて議論を行う中で、発展途上国では、津波対策において財政的な課題があることを知りました。そこで、津波の研究を行い、津波についてより理解することによって、効果的な対策を行えるようにすることで貢献したいと思い、この分野を志すようになりました。大学4年生から津波の研究を始め、津波の引き波について研究を行いました。沿岸部の人にとっては、潮が引いたら津波が来るというのは広く知られていることですが、引き波の観測の難しさなどから学術的な研究はほとんど行われていませんでした。津波シミュレーションを使って、東日本大震災の津波を再現すると、水深約30mのところでも海底面が見えるほどの引き波が発生していた可能性があることがわかりました。これまで行われてきた研究に少しでも新たな知見をもたらせるようにこれからも研究を重ねていきたいと思います。
https://www.tsunami.irides.tohoku.ac.jp/jp/member/kikuta
<2024年8月18日>石巻復興の森植樹祭2024
震災からの復興のための活動のひとつとして各地で行われているのが植樹活動です。沿岸の防潮林などは、津波や高潮等の災害を軽減できる役割の他、環境の保全やリクレーションの場としてなど多様な機能を持っています。さらに植樹作業はボテンティア活動の代表例であり、自分が植えた樹木の成長を見守ることもできます。その中で、代表的なものが石巻南浜津波復興祈念公園での「復興の森植樹祭」です。東日本大震災で甚大な被害を受けた宮城県石巻市南浜地区に、犠牲者への追悼、震災の記憶と教訓の後世への伝承、多様な主体の参画・協働の場を構築すること等を目的に、国、宮城県、石巻市が一体で整備した公園です。
この地域では様々な団体・ボランティアが活動していますが、イオン環境財団もその中の1つです。2019年から「復興の森植樹祭」に参加し、災害から地域を守る海岸防災林と、学習体験もできる森づくりを目指して、2028年まで10年にわたり植樹・育樹活動を継続する計画です。これまでに1,400名以上が参加し、4万本を超える植樹を行いました。今年は、9月23日(月・秋分の日)に開催し、ハマナス、ミソハギ、ハマギク、ツワブキ等、5,000本を植樹する予定です。
https://www.aeon.info/ef/greening_activities/domestic/ishimaki_miyagi/
イオングループの関係者の他、宮城県、仙台市の職員、宮城農高(名取市)の生徒、東北大のボランティアサークル、仙水グループなどの企業の皆さん、さらに青森県、東京都など遠方からも集まった方々が参加されています。
<2024年8月11日>仙台市深沼海水浴場、14年ぶりに再開
https://www3.nhk.or.jp/tohoku-news/20240715/6000028171.html
東日本大震災から13年が経ちましたが、仙台市唯一の海水浴場である深沼海水浴場が避難先などを確保したうえで、14年ぶりに再開しました。震災で大きな被害を受け、その後、災害危険区域に指定され泳ぐことができなくなっていました。7月15日の海の日、はじめに安全祈願祭を行って海の安全を祈ったあと、午前9時にオープンとなり家族連れなどが訪れ、久しぶりに荒浜の海を楽しんでいました。
東北大では、震災前から、仙台市と協力して、津波避難訓練を実施したり、防災情報設備の充実などを図ってきましたが、津波の浸水を受けて、居住禁止地域となってしまいました。震災後、仙台市は海抜10メートルの「避難の丘」を整備しましたが、2022年に宮城県が公表した津波浸水想定で高さ不足が判明。避難の丘をかさ上げし直している他、近くにある震災遺構荒浜小学校を活用して約2000人分の避難場所を確保しています。なお、安全確保の観点から、海水浴場内の滞留人数を800人に制限する対策も行っています。8月18日(日)までの35日間の開設です。
深沼海岸においは津波避難広報の実証実験も実施されています。上空を飛行するドローンから沿岸の状況を撮影したり、高出力スピーカーを搭載してドローンが上空を移動しながら避難広報を行うことで、避難広報担当者が危険地域に近づくことなく、対象地域内へ避難広報を行えることが実証されています。
<2024年8月4日>防災気象情報、シンプルで分かりやすい名称に統一
https://mainichi.jp/articles/20240618/k00/00m/040/092000c
線状降水帯の発生や、危険な暑さなど、気象に関する災害が続いていますが、気象庁と国土交通省は6月18日、洪水や土砂災害などの防災気象情報について、見直しを議論してきた検討会の最終とりまとめを公表しました。名称にばらつきのあった各種警報を整理し、シンプルで分かりやすい名称に統一することになります。実際の運用開始は2026年春ごろになる見込みです。
具体的な見直しの対象は、気象庁からの洪水、大雨、土砂災害、高潮に関する警報や注意報になります。それぞれの災害は過去の被害や予測・観測、防災体制によって、それぞれの基準や警報の名称がありました。一方で、内閣府は2019年から、災害の警戒レベルを5段階に分類しており、21年からは、「高齢者等避難」(レベル3)、「避難指示」(レベル4)、「緊急安全確保」(レベル5)など災害や被害状況ではなく危険度も含めた対応に応じた名称となっています。しかし、土砂災害では、レベル2が「大雨注意報」で、レベル4は「土砂災害警戒情報」と統一性がなく、危険性の高まりもわかりづらいものでした。また、大雨警報と洪水警報はレベル3なのに対し、高潮警報はレベル4で、警報の名称と警戒レベルの整合性も取れていませんでした。
最終とりまとめでは、警戒レベル5相当の情報は「特別警報」▽レベル4は「危険警報」▽レベル3は「警報」▽レベル2は「注意報」――と統一することが示されています。災害ごとに「土砂災害特別警報」「大雨危険警報」などとして発表すべきだとしています。また、災害の一因となる線状降水帯の発生について伝える「顕著な大雨に関する気象情報」は「気象防災速報(線状降水帯発生)」と名称を変更するのが望ましいとしています。
防災気象情報の体系整理と最適な活用に向けて
https://www.jma.go.jp/jma/kishou/shingikai/kentoukai/bousaikishoujouhou/report/R060618_report.pdf
<2024年7月28日>第2期復興・創生期間までの復興施策の総括
本日は、復興庁による13年間の復興施策に関する総括についての活動を紹介いたします。4月から始まったワーキング・グループの活動には、復興推進委員会メンバーに加えて、増田寛也日本郵政取締役・社長(前岩手県知事)など加わり、議論を進めています。地震・津波被災地域に係る総括の結果を取りまとめた後、原子力災害被災地域に係る総括の結果を取りまとめ、これらを合わせた最終報告とする予定です。各取りまとめは、復興推進委員会に報告し、今後の施策の参考にしていただきます。
現在の第2期復興•創生期間(令和3~7年度)での施策は下記のようなものです。
〇地震・津波被災地域
心のケア等の被災者支援などの残された課題、復興事業がその役割を担う地方創生の施策等を活用し、持続可能で活力ある地域社会を創り上げる
〇原子力災害被災地域
避難指示の解除等を踏まえた本格的な復興・再生、移住促進や、福島国際研究教育機構の構築等の新たな施策への取組
6月27日には宮城県で、気仙沼市の株式会社阿部長商店 と仙台市のアクアイグニス仙台 の視察を行いました。来年5月には「大阪・関西万博」での展示も企画されています。
https://expo2025-portal.reconstruction.go.jp
<2024年7月21日>福島浜通りでの「リビングラボ」
リビングラボとは、「Living(生活空間)」と「Lab(実験場所)」を組み合わせた言葉であり、研究開発の場を人々の生活空間の近くに置き、生活者視点に立った新しいサービスや商品を生み出す場所やサービスの活動のことで、1990年代前半にアメリカで生まれたと言われています。アメリカよりもヨーロッパにおいて定着・発展してきたようで、2016年1月時点で、ヨーロッパを中心に世界50か国・388のリビングラボが活動しています。近年では日本においても、行政、研究機関、企業が運営主体となったリビングラボが誕生しています。特に、横浜市内のエリアで15か所以上が活動しています。井土ヶ谷のリフォーム会社と住宅供給公社のコラボレーションにより生まれた「井土ヶ谷リビングラボ」、企画会社やフェリス女学院大学が運営に関わる「緑園リビングラボ」などが、代表例として挙げられています。空き家問題や女性の活躍など、それぞれのエリアの課題に沿った活動を展開しています。
このリビングラボの動きが福島県浜通りでも始まりました。昨年4月1日、福島国際研究教育機構(通称F-REI)が設立され、多くの実証事業が浜通り地域等の各地で実施されることとなります。国内外から多くの研究者及びその家族が浜通り地域等に移住・定住することが予想されることもあり、生活環境の向上のための取組の一層の推進が求められています。その中、浜通り地域等において、民間企業等の知見を最大限活かしながら、最新のサイエンスやテクノロジーを積極的に活用し、住宅、医療、教育、交通、買物・娯楽等の生活環境に係る地域課題の解消につなげるような取組「浜通り復興リビングラボ」事業が令和5年度より実施されています。
https://www.reconstruction.go.jp/topics/main-cat1/sub-cat1-15/20240402102332.html
先日、第3回シンポジウムも開催され、リビングラボ実証事業提案として民間企業11社から、下記のような12の提案が発表されています。
・国際航業(株):3D空間データ活用によるデータ配・流通サービス実証
・大日本印刷(株):ドローンによる調剤配達、遠隔地での服薬管理サポート
・MBTリンク(株):電力データ等を活用した健康管理/見守り支援
<2024年7月14日>防災運動会
防災運動会は通常の運動会に防災知識を取り入れた新しい活動です。運動会としての楽しさを残しながらも、防災に関する知識や知恵を身につけ、自分で助かる・他人を助けることの大切さを学べます。楽しいだけでなく役に立つ、それが防災運動会になります。
災害は地域や周囲の環境、家族や隣人との関係によっても対策が変わってきます。地震の頻度が高い地域か、台風が多い地域か、家族での被災を想定するか、会社にいるときの被災かなどによって競技をカスタマイズしたり、オリジナルで作る必要があります。「災害体験型アクティビティ 防災運動会」のWebサイトもあります。
https://asobi-bosai.com/project/bosai-undokai/
https://ikusa.jp/service/bosai-undokai
競技のメニューも工夫され、老若男女どんな人でも楽しみながら参加できる防災イベントになっています。親子で参加できる、会社のレクリエーションとしても楽しめる。何も知らない人が防災に興味を持つきっかけを作ります。種目も防災クイズ・ラリー、防災障害物リレー、防災借り物競走、非常食体験会、避難所ジェスチャーゲーム等が提案されています。
先月15日、みやぎ防災・減災円卓会議が発足以来の取り組みとして掲げる「市民向けの啓発活動」の一環として、深沼うみのひろば(荒浜小遺構そば)で「防災・減災運動会」を開催しました。東北福祉大学、宮城教育大学、ORI☆姫隊復興支援プロジェクト、わしん倶楽部、今野不動産、あんしん・くらし・すまい支援機構などのご支援をいただき、楽しく、学びの多いイベントになりました。
<2024年7月7日>地震保険について
先月、1964年新潟地震のお話の中でも触れた地震保険についてご紹介します。
通常の火災保険では補償されない地震・噴火・津波を原因とする火災・損壊・埋没・流出による損害を補償する保険が地震保険です。火災保険とセットで加入する保険なので地震保険単独では加入できません。本日はこの保険の歴史について紹介したいと思います。
https://www.bosaijoho.net/2023/03/16/earthquake-insurance/
■地震保険の歴史① 100年以上前から検討されていた地震保険
日本での地震保険創設は1966年ですが、制度の検討自体は100年以上前から議論されていました。最初の提案は明治初期で、政府が招聘したドイツ人経済学博士ポール・マイエットの「国営強制保険制度」でした。当時は「国営」「強制」を前提とする保険制度への反対の声が多く、成立には至らなかったそうです。1923年関東大震災が発生、甚大な被害が出ましたが、当時の火災保険では地震は免責条項となっており、保険金が支払われないことが社会問題化しました。また、戦時下の1944年昭和東南海地震や1945年三河地震などの大地震が相次ぎましたが、成立には至りませんでした。
■地震保険の歴史② 新潟地震をきっかけに成立した地震保険
現在まで続く地震保険創設のきっかけは1964年6月の新潟地震でした。地震保険について国会で審議され、2年後の1966年5月「地震保険に関する法律」が公布・施行、認可・発売開始は同年6月1日でした。
地震保険の改定は大地震被害の発生を受けて行われており、1978年宮城県沖地震で、補償内容に家屋「全損」だけでなく「半損」を導入、火災保険の保険金額に対する地震保険の割合は「30%〜50%」などの改定が行われ、現在に近い内容になりました。さらに、1995年阪神淡路大震災をきっかけに、1996年1月に「建物・家財の損害程度をそれぞれ単独で認定」「地震保険加入限度額の大幅引き上げ」などの改定が行われました。限度額も発足当時の建物90万円から現在は最高5000万円に、家財は60万円から1000万円に引き上げられました。また、保険料率は、地震リスクに応じて都道府県ごとに細かく定められ、予測手法や予測されるリスクの変化に応じてその都度見直されているのも特徴です。
<2024年6月30日>能登半島地震から半年
震災から5ヶ月が経過した先日、石川県から復興計画が出され、その後に各自治体で同様の計画が立てられる予定です。本日は、この県の復興計画の概要について紹介したいと思います。作成には外部有識者が招集され、そのひとりが東北大学都市・建築学の小野田泰明教授です。復興計画期間は県の成長戦略の目標年次である令和14年度末までの9年間で、「短期」(~令和7年度末)「中期」(~令和10年度末)「長期」(~令和14年度末)となります。
「地域が考える地域の未来を尊重する」、「あらゆる主体が連携して復興に取り組む」、「若者や現役世代の声を十分に反映する」など12の基本姿勢に基づき、創造的復興リーディングプロジェクトをはじめとする取り組みを通じて、創造的復興を成し遂げます。
https://www.sankei.com/article/20240527-OYWIXVZZOZKXLGFMFOG26325XQ/
地震により人口減少が20年早まるといわれる中、都市と地方の双方に生活拠点を持つ二地域居住を進める「能登モデル」の環境整備は注目されています。また、「復興プロセスを活かした関係人口の拡大」を掲げ、「地域の活力を維持向上させていくには、定住人口や交流人口の拡大に加え、関係人口の拡大を図ることが最重点課題」と明記しています。さらに、「能登農林水産業ボランティア」の受け入れ促進、金沢と能登を結ぶ高速道路や域内の「珠洲道路」「門前道路」の高規格化による能登への移動時間の短縮などがあります。
一方で、今回の地震では道路や上下水道などインフラ被害が深刻化しています。復興プランではインフラを元通りにすることにとらわれず、上下水道を市町による小規模分散型の水循環システムにするなど、集落単位で水資源やエネルギーを循環させる「オフグリッド集落」の整備を検討課題としています。
<2024年6月23日>屋内測位技術を用いた震災伝承施設の来館者行動解析法の開発
震災伝承施設や博物館の来館者に対して、出口調査(アンケート)を行うことがあります。これにより、来館者の属性や見学後の感想も含めた知識・態度や行動変容を確認することができますが、どのような展示や情報について関心や体験をもったかなどの追跡調査については難しく実施していないのが現状です。
このような状況の中で、来館者の動線・滞在時間を測定することができるBLEビーコン(発信機)を用いて来館者の各展示への滞在時間を測定している事例が出てきました。ビーコンとは狼煙(のろし)といった意味で、現代では煙の代わりに電波を使ったデバイスを表現しています。 そこで、津波研究室博士課程3年生の渡邉勇さんが、屋内測位技術と複数回の質問調査を組み合わせる手法(MMB法)「M's Tracking」を開発しました。この手法の要となる4つのキーワード〈Museum〉< Multistage(多段階)> < Multimode(多方式)> < BehaviorModificationTracking(行動追跡)> の頭文字をとって命名しました。来館者の見学前・見学中・見学直後、見学から 3ヶ月後の複数の時点において、質問紙調査と屋内測位技術の複数の方式を用いることで、来館者の見学中の行動・反応および見学後の行動変容を追跡して観測しています。
これによって、来館者の実態や学習効果に与える影響を詳細に明らかにし、施設の展示・見学・運営方法の改善に役立てることが期待されます。
<2024年6月16日>新潟地震から60年
1964年6月16日に発生した「新潟地震」。被害は新潟県を中心に山形県、秋田県など9県におよび、死者26人、負傷者447人、住家被害は全壊1,960棟、半壊6,640棟、浸水15,297棟、一部破損67,825棟、住家以外の被害も16,283棟となりました。また、船舶・道路・橋・鉄軌道・堤防などにも大きな被害が生じました。
この地震の被害の特徴は2つあり、1つは石油コンビナート火災、もう1つは液状化でした。日本の歴史上、最大級の石油コンビナート災害をもたらした地震で、化学消防体制が脆弱な時代背景もあり、143基の石油タンクが延焼し、その火災は12日間続きました。以後、石油コンビナート防災の指標のひとつとなりました。そして、液状化により、新潟市を中心に、アパート建物の傾斜被害、橋脚の落下など大きな被害が生じました。この地震を機に住宅地や工業地帯の液状化現象への本格的な研究が始まりました。また、日本で地震保険ができる直接的な要因となった震災としても知られ、この2年後、1966年(昭和41年)に地震保険制度が誕生しました。
新潟市では、企画展「新潟地震から60年 災害の記録をたどる写真展」が、
https://www.city.niigata.lg.jp/kita/shisetsu/yoka/bunka/kyodo/2024syashinntenn.html
また、新潟大学では、ギャラリートークや新潟地震60年・中越地震20年の公開シンポジウムも企画されています。
https://www.lib.niigata-u.ac.jp/tenjikan/news/1128/
<2024年6月9日>「防災グローバルフォーラム2024」およびプレイベントについて
自然災害リスクへの理解を深める、世界銀行「防災グローバルフォーラム2024」が今月16日から開催されます。
https://www.worldbank.org/ja/events/2024/06/16/understanding-risk-forum-2024
日本における防災の主流化は世界でも知られており、日本のリーダーシップのもと2005年には世界的減災の推進のため活動が進められ、兵庫フレームワークが国連加盟の168か国によって採択され、また2015年には仙台防災枠組が新たに採択され、世界における防災減災推進に貢献しています。フォーラムでは、世界から関係者が兵庫県姫路市(アクリエひめじ)に一同に集まり、自然災害からのリスクをより理解するための新たな取り組みや減災を実装する上での最新の課題などについて、様々な形での議論が行われます。
このフォーラムの1か月前イベントとして「ひめじ防災講座」が行われ、私も「地域での防災・減災を考える―過去の経験・教訓を繋いでいく」と題した講演を行ってきました。この防災講座には、長期保存パンを開発した姫路商業高校も参加しました。生徒たちは、東日本大震災で被災した宮城県名取市の農業高校の生徒たちと共同で開発、缶詰に入ったこのパンは水がなくても食べられるようになっているのに加え、高齢者や乳幼児も食べやすいよう柔らかく仕上げられていて、5年2か月の長期保存も可能だということです。
https://www3.nhk.or.jp/lnews/kobe/20231226/2020024143.html
<2024年6月2日>道の駅に防災コンテナ設置、災害時は被災地へ
国土交通省は、道の駅にトイレやシャワーなどの機能を備えたコンテナを増やそうと、設置指針を策定しました。コンテナは、トラックに積んだり、けん引したりして別の場所へ速やかに移動できることから、従来から災害時での活用が進められており、能登半島地震の被災者支援でも活用されています。福岡県うきは市の道の駅にあったコンテナを、被災した石川県穴水町の道の駅「あなみず」に運び、活用されました。
コンテナはトイレなどの機能を備えた防災用コンテナです。可動式で被災地にトラックで運べ、断水でトイレなどが使えなくなった場合に役立ちます。太陽光発電が可能で停電中に使えるものもあります。シャワー用の場合は浄水器、ボイラー、発電機を装備しています。平時は道の駅に設置して立ち寄った利用者に使ってもらい、災害時は被災地に運んで住民が利用することを想定しています。
道の駅は2023年8月時点で国内に1200カ所以上あり、うち39カ所を「防災道の駅」として選定しています。備蓄倉庫など災害対策のための設備に予算を重点的に配分しています。災害が増える一方、インフラ設備は老朽化しており、防災コンテナのような独立して使える設備の役割が高まっている現状もあります。今回の指針は「甚大な被害を及ぼす災害は広域での機動的な支援が重要」と指摘。自治体や民間事業者にコンテナ導入の検討を促しています。
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA246UT0U4A120C2000000/
<2024年5月26日>復興庁で総括WGの検討が始まりました
復興庁は、第2期復興・創生期間(2021~2025年度)終了後の新たな復興方針の取りまとめに向けた議論をするための総括WG(ワーキンググループ)を発足させました。まずは、2020年度までの復興施策の総括に関するWGで地震・津波被災地域の施策を先に議論し、夏頃に中間報告をまとめ、秋にかけて原子力災害被災地について議論します。メンバーには、復興推進委員会委員も入り、議論を活発化させます。
復興事業には、2011年度の発災から2020年度までの、集中復興期間(11~15年度)と、第1期復興・創生期間(16~20年度)に31.3兆円程度が投じられました。第2期復興・創生期間の事業規模は1.6兆円程度と見込まれ、地方創生の施策を活用した地域社会の構築や、避難指示の解除に伴う地域の本格的な復興・再生、移住促進などの取り組みが予定されています。総括に向けた議論のポイントとして「第2期後」を念頭に財源を確保するための国民負担などに理解が得られるかどうかを提示する必要があります。4月30日に開催された初会合では、今村文彦教授が座長として選出され、復興庁の予算や政策などの概要、現在の人口や経済活動などが紹介されました。作業部会は今後、月1回の頻度で開かれる予定で、これまでの復興の取り組みを総括し、26年度以降の復興の在り方を検討します。
https://www.minyu-net.com/news/news/FM20240501-854277.php
<2024年5月19日>能登半島地震津波関係で富山県での講演と現地視察
能登半島地震では石川県(能登半島)を中心に被害を出しましたが、その周辺の被害や影響も大きくありました。先日、富山県を訪問させて頂き,現場視察と富山県立大学主催の講演会を実施してきました。能登半島地震および津波の特徴やメカニズムの話しをし、その後に富山湾で観測された特殊な津波について解説を行いました。「富山湾の海底は急激に深くなる地形に加え、河川から流れ込んだ土砂が堆積していることから海底地滑りが発生し、局地的に津波が押し寄せた可能性が高い」と報告しました。そのうえで特徴的な富山湾の海底を考慮した津波ハザードマップを県内の自治体ごとに制作することや津波の影響範囲や到達時間などをあらかじめ把握しておくことが必要だと訴えました。その模様はNHK富山で放映されました。
https://www3.nhk.or.jp/lnews/toyama/20240419/3060016561.html
翌日、富山県沿岸での津波痕跡調査を実施しました。富山県立大学の呉修一准教授と東北大学の研究グループは、1月末に、富山湾の沿岸に設置されたカメラが捉えた津波の映像と、海岸に残された津波の痕跡を照らし合わせて、今回の地震に伴う津波の実態を調べられています。富山県西部の高岡市雨晴海岸に押し寄せた津波の高さは、およそ1.7メートルから1.8メートル、氷見市の海岸で高さ1.8メートル、射水市の新湊マリーナでは高さ1.5メートルになります。入善町や黒部市の海岸でも調査をし、護岸堤や打ち寄せられた石の状態などの津波痕跡を確認しています。
最後に、6月1日、気仙沼市で、令和6年度津波防災シンポジウムを開催します。
今後発生が想定されている、日本海溝・千島海溝型地震に関連し、「切迫する巨大地震と津波への備え~能登半島地震の経験をどう活かすか~」をテーマに、津波に備えるための取り組むべき課題や連携を考えます。是非、ご参加下さい!
https://www.pref.miyagi.jp/soshiki/sabomizusi/r6/r6_sinpo.html
<2024年5月12日>「東北大学サイエンスパーク構想」の本格始動
MICHINOOK構想、始動!~発見と創造は“未知ノ奥"にあり~
https://www.tohoku.ac.jp/japanese/michinoku/index_movie.html
「社会に開かれた大学」東北大学への期待に応える企画です。
東北大学は建学以来、「研究第一」「門戸開放」「実学尊重」の三つの理念のもと、「社会に開かれた大学」として先端科学を社会実装し、常に新しい社会価値を創造してきました。この中、2024年4月、この建学の精神を基盤に、新たに「発見と創造」を追求するためのエリアと構想「MICHINOOK(ミチノーク)」を始動しました。MICHINOOKとは何か。それは、ナノテラスとサイエンスパークがひろがる青葉山新キャンパスから、様々な復興プロジェクトが動く福島浜通りにかけてのエリア一帯を指し示す新名称です。語感から想像できるように「陸奥」や「未知ノ奥」を由来とします。そしてこの広大なエリアを基盤にして、東北大学は新たに「MICHINOOK構想」をリードします。具体的な動きとしては、東北大学自らがプラットフォームとなり、社会課題解決に向けた共創の場をつくります。その上に世界的な技術やイノベーションを追求する企業、大学、研究機関を誘致。研究開発から事業経営、制度設計まで一貫して遂行するイノベーションシステムを創出します。
まずは2024年4月、MICHINOOKの核となり、多くの企業や学術研究機関が活用する「ナノテラス」が青葉山新キャンパス内で本格稼働しました。そしてその隣接地には、サイエンスパークゾーン4万㎡が広がり、2棟の研究棟・産学連携拠点施設が竣工しました。さらに今後、このゾーンに様々なステークホルダーが集う産学連携拠点を次々と生み出していく予定です。
<2024年5月5日>大規模災害対策研究機構(CDR)について
https://www.e-tsunami.com
本日は、関西地域での防災・減災の取り組みを紹介します。
東海・東南海・南海地震などの大規模災害の発生が懸念され、危機管理の重要性が訴えられていた中、安全で持続的な地域社会を形成していくためにも、日頃より災害対策情報を知り、予防策を取ると同時に、情報ネットワークを構築する必要があるということで「東海・東南海・南海地震津波研究会」が発足、2006年3月31日に「NPO法人 大規模災害対策研究機構(略称CDR)に生まれ変わりました。これまで、セミナーの開催、調査研究、東北地域も含めた被災地への視察、『よくわかる津波ハンドブック』などを作成しています。理事長は河田惠昭先生、副理事長は関西大学副学長の高橋智幸先生、東北大学の越村俊一先生です。
4月10日に、第14回大規模災害対策セミナー『迫り来る南海トラフ巨大地震への備え』が開催され、講演をして参りました。迫り来る南海トラフ巨大地震への備えとして何をすべきか、何が出来るのか等について考える機会となりました。
講演1『地震防災のあり方とこれからの展望』佐竹健治氏(東京大学地震研究所)
講演2『津波防災のあり方とこれからの展望』今村文彦氏(東北大学副理事)
講演3『危機管理のあり方、減災と強靱化に向けてのこれからの展望』金田義行氏(香川大学教授)
<2024年4月28日>地震の時間予測モデル
https://www.jishin.go.jp/resource/terms/tm_time-predictable_model/
地震の短期予知(予測)は大変に難しいですが、過去の履歴(繰り返し性)に基づく、長期的な予測は数多く検討されています。ここでは、代表的な手法である「時間予測モデル」を紹介します。
時間予測モデルは、次の地震までの間隔と前回の地震のすべり量は比例するという仮定の方法です。つまり、大きな地震の後では次の地震までの間隔が長く,小さな地震の後では間隔が短いということになります。このように、前回の地震のすべり量から次に起きる地震の時間が予測されることより、「時間予測モデル」と呼んでいます。物理的には、プレート境界ではひずみが一定の割合で溜まっていき、ひずみがある大きさに達すると地震が発生する、という考えです。このため、前回の地震で解放されたひずみが大きいほど、次の地震が起きるレベルまでひずみが溜まる時間が長くなるというわけです。なお、地震調査委員会で行っている、活断層や海溝型地震の長期評価で、時間予測モデルを用いているのは、南海トラフの長期評価のみです。南海トラフでは、断層のずれの量の代わりに高知県の室津港の隆起量を用いています。室津港では、宝永地震(1707年)、安政南海地震(1854年)、昭和南海地震(1946年)の3回の地震での隆起量が知られています。時間予測モデルを使うと、次の地震までの間隔は88.2年となり、3回の地震の平均発生間隔(119.5年)より短くなります。
時間予測モデルによる次の地震までの間隔の推定は、平均発生間隔のみを用いた手法に比べ、物理学的な背景を加えたモデルになっており、発生時期の推定精度が高いと言われています。一方で、南海トラフでは使用できるデータが非常に少ないことや、地震の震源域には多様性がありますが、室津港の隆起量のみで評価できるのかなどの課題も指摘されています。
最近以下のような記事がありました。『「30年以内に70~80%で南海トラフ地震が発生」はウソだった…地震学者たちが「科学的事実」をねじ曲げた理由』~南海トラフだけに使われる「時間予測モデル」
https://president.jp/articles/-/79308
<2024年4月21日>能登半島地震での緊急アナウンスについて
今年元旦に発生した能登半島地震では、直後から様々な情報がテレビ、ラジオ、SNSなどから提供されました。その中でも注目されたアナウンスの1つが、当時のNHKでの内容であったかと思います。
「今すぐ可能な限り高い所へ逃げること!!」
アナウンサーの、いつもとは明らかに違う強い口調がテレビの画面から流れました。
東日本大震災以来初めて大津波警報が発表され、発せられた「命令調」の呼びかけ。
NHKの災害報道に携わる人たちが作り上げてきた「最大級の呼びかけ」が初めて音声化された瞬間でした。「大津波警報です!すぐに逃げてください!いますぐためらわずに逃げてください。東日本大震災を思い出してください!大津波警報が出ました!今すぐ逃げること!高いところに逃げること!テレビを見ないで逃げてください!」担当アナウンサーの山内さんの緊迫感が溢れる絶叫調の呼びかけは、SNSで絶賛されました。以下は、アナウンス室「命を守る呼びかけプロジェクト」事務局長の井上二郎さんからの報告です。
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「NHKアナウンサーがかなりキツく避難を呼びかけてくれたおかげで早々に避難しなきゃと思った」
「『大丈夫じゃないの?』と言っていた父も、避難を決意しました。避難してよかったです」
放送を見た子どもが泣き出したことで、危機感が倍増し「逃げなきゃ」と感じたという人もいました。
こうした好意的な意見の一方、「もう少し落ち着いた声で呼びかけるべきではないか」といった意見も寄せられたということです。
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その呼びかけを不断に見直したり、新たな展開を考えたりするのがNHKアナウンス室の“命を守る呼びかけプロジェクト"です。
https://www6.nhk.or.jp/nhkpr/post/original.html?i=41291
<2024年4月14日>東北新幹線脱線事故についての運輸安全委員会の調査報告
おととし3月、福島県沖を震源とする最大震度6強の地震で脱線した東北新幹線について、国の運輸安全委員会が事故の調査報告書を公表し、脱線の原因は地震の揺れで車輪が浮き上がったためだと推定されると結論づけました。
2022年3月16日、福島―白石蔵王間で東京発仙台行きやまびこ223号が17両中16両で脱線、乗客6人が負傷しました。68車軸のうち60軸が脱線、少なくとも10軸で車輪がレールから大きく逸脱した状態でした。脱線の原因となった地震のおよそ2分前に発生した地震で列車は停止した状態でしたが、地震により車体が激しく横揺れし、車輪が浮き上がってレールを乗り越える「ロッキング脱線」が起きたとみられると指摘しています。報告の1つとして、横転を防ぐために車輪に取り付けていた「逸脱防止ガイド」が被害拡大を防いだとして一定評価していますが、地震の強い揺れで車輪が浮き上がった際にレールが横移動したことで脱線し、その後も横揺れが続いたことで、「逸脱防止ガイド」もレールを乗り越えて、逸脱したと考えられると結論づけました。また、強い揺れなどにより台車と車体の間に設置されていた「空気ばね」の空気が抜け、脱線を助長した可能性が高いとしています。
脱線直前に発生した1回目の地震を検知して列車は停止していましたが、先頭車両も脱線していることから、被害が拡大する可能性があったと指摘。車両や高架橋といった構造物の振動抑制など、再発防止に向けた取り組みを求めています。
<2024年4月7日>(仮称)イオンモール仙台雨宮の防災拠点としての取り組み
旧東北大学・雨宮キャンパス跡地で計画中のショッピングモール「(仮称)イオンモール仙台雨宮」の2025年秋のオープンに向けて、建築工事が着工しました。
東北大学災害科学国際研究所との「産学連携協力」に関する協定に基づき、「(仮称)イオンモール仙台雨宮」を地域の防災拠点として地域の皆様が安心して利用できるよう、地域の防災減災力を高めるための防災機能のあり方、地域と一体となった防災減災の取り組みによって、地域の持続的な防災に貢献するモールのあり方を共同研究しています。
●「一時避難施設としての対応」 震災時に顧客で帰宅困難となった方や周辺の方々が一時的に避難できる場として、建物の安全確認を終えたモールの建物を活用することを計画しています。近隣の指定避難所の役割を支えたり、災害後に人が滞在する周辺施設との役割分担を考えています。また、携帯充電用電源、場内照明、マンホールトイレを計画し災害時の利用に役立てます。
●「震災時の復興拠点としての機能確保」震災時の緊急対応を想定し、「お客さまの安全・安心」を守るため、非常用発電機を設置します。地域が停電しても、防災設備、セキュリティシステム、給水設備等の各種設備、さらにイオン食品売り場等に電源供給を最優先で行い、地域復興拠点の一つとして機能維持に努めます。断水・停電時でも、非常用電源を活用して受水槽の水を飲料専用として供給します。
●「緑化計画の取組み」東北大学農学部時代のみどり豊かな環境を踏まえ、生物多様性の保全と利活用の視点で新たな緑化計画を推進します。産学連携協力の取組みとして、建築工事期間中は、苗守として地域の小学生に育てていただいたコナラの苗木を工事現場に掲示しています。この場で、地域の方が育成状況を観察することができるようになっています。
<2024年3月31日>トルコでの災害アーカイブに関するワークショップ
2023年8月31日より、2023年カフラマンマラシュ地震関連デジタルアーカイブの作成支援・活用のプロジェクト(J-RAPID)がスタートしましたが、その一環として、3月12日から15日にかけて、トルコ側のリーダーであるMETU(中東工科大学)のAhemt C. Yalciner教授と2回目のワークショップを開催しました。
ワークショップの初日は、カフラマンマラシュ地震だけでなく、日本の東日本大震災や2024年能登半島地震や災害デジタルアーカイブに関連する話題提供から始まりました。トルコ側からは、METUの教員、学生、JICAトルコ事務所・日本大使館からの参加もいただきました。カフラマンマラシュ地震の前後の地震ハザード評価、被害と脆弱性についての発表、渡邉英徳教授(東京大学)による災害デジタルアーカイブと最近の取り組みについて、また、今村文彦教授から東日本大震災と2024年能登半島地震の教訓について話題提供が行われました。
2日目(3月13日)から最終日(3月15日)までは、東北大学の学生と東京大学の大学院生、METUの学生が参加し,「災害デジタルアーカイブの明日」をテーマにワークショップが開催されました。両国の学生が4つのグループに分かれ。3Dマップやその他のツールを使って、災害デジタルアーカイブのプロトタイプを作成しました。例えば、1)ゲームを使って写真をアーカイブし、プレイヤーに避難経路を理解させるもの、2)プレイヤーに減災グッズを準備させるシリアスゲーム、3)プロジェクションマッピングや没入型ミュージアムのアイデアを使い、災害のプロセス(発災前、発災時、発災後)を理解させるもの、4)3D写真技術やテキストマイニングを使い、災害の各段階における避難方法や文言の傾向を理解させるものなどのアイデアが挙げられました。両国の若い世代による、プロジェクト終了後も続く持続可能なコラボレーションの好事例となリました。
<2024年3月24日>東北大学で今年3月にご退職される先生方
令和5年度をもって本学を退職される方々が多くおられ、3月には沢山の最終講義・学術懇話会等が企画されていました。
下記が、最終講義・学術懇話会イベント掲載一覧です。
https://www.tohoku.ac.jp/japanese/2024/01/last-lecture-2023.html
例えば、電気通信研究所 大野英男総長「スピントロニクスと共に歩んで」
地震・噴火予知研究観測センター 三浦哲教授「測地観測と地震・火山研究」、同センター 松澤暢教授「地震予知に憧れて」などです。
松澤暢先生とは、長年にわたり、地震や津波などの分野で連携や共同研究さらに教育や人材育成の分野で活動を実施させて頂きました。松澤先生は、わが国の代表的な地震学者であり、自然災害科学・固体地球惑星物理学を専攻されています。 附属地震・噴火予知研究観測センター長、地震予知連絡会副会長を務められました。1999年に東北地方の太平洋沖で発生した数千回の地震波形を丹念に調べ直し、岩手県釜石市沖で地震様式(揺れの初動、地震波形、震動継続時間、規模)のよく似た地震が約5年周期で発生していることを突き止めました。一方で、2011年の東北地方太平洋沖地震の発生可能性を予見できなかったことについて、反省の思いを語られています。2日前の9日は、M7.3の前震がありました。「我々は短い期間のデータから考え出したことに縛られて、間違った前提条件のもとに将来を推定していたのである」「もう少し時間があれば海溝近くの変動から付近のすべりが大きいことがわかったかもしれない」
2012年、東北大学の地震・噴火予知研究観測センターが開所から100年の節目を迎え、以下のような新聞特集が企画されました。
地震学100年の東北大、巨大地震解明に挑む 海底に観測地点整備
https://www.nikkei.com/article/DGXNZO49347610Y2A201C1MZ9000/
<2024年3月17日>支援者支援のためのケア三段階
東日本大震災など大災害での経験の1つが、行政職や医療職等の被災者に対する支援業務者への支援の重要性です。広域で大規模な災害が発生した際、消防士、医師・看護師など救護にあたる職業や、保育士、教職員、高齢者施設職員、障害者施設職員など発災地で一般市民の支援を担う職業があります。そうした「被災者でもある支援者」は、しばしば一般市民より大きなストレスと向き合いながら、「支援者」として職務を全うすることを迫られます。このような皆さんは、被災住民の苦悩を最も間近に感じ取る立場にあることが多く、また問題が長期化していることから無力感や罪責感情を抱きやすい状況になっています。
そこで環境省では、支援者支援のためのケアの三段階を提唱しています。
①「セルフケア」自己の健康管理を基に、活動のペースを調整します。
②「ラインケア」上司や管理職のサポートの下、ペアやラインでの活動を組織的にマネージメントします。
③「ライン外」組織内の部署による専門的ケアや外部の医療専門機関等によるケアがあります。
https://www.env.go.jp/chemi/rhm/h29kisoshiryo/h29kiso-03-08-13.html
さらに最近では、身近なピア(同僚や仲間)による支援が注目されています。被災地での当事者同士の支援、被災地外のピアが被災地の仲間を支える等があります。発災直後の「緊急期・急性期」、1週間から1ヶ月ほどの「復旧期・亜急性期」、1年からそれ以上にわたる「生活再建期」、そして「復興期」に至るまで、状況が異なりますので、そこでの丁寧なケアが必要です。「支援者が支援を受ける」のは恥ずかしいことではなく、むしろ職務に対しての責任ある行動です。以下に、参考になる資料、パンフレット、マニュアルがあります。
https://www.jst.go.jp/ristex/output/example/needs/02/peer_support.html
<2024年3月10日>東日本大震災の経験が活かされているのか?~能登半島地震での津波避難
明日で東日本大震災から13年を迎えます。この間も、豪雨災害、火山災害や熊本地震、胆振東部地震などが発生しております。特に、今年に入った矢先の能登半島地震での被害は大きく、200名を超える犠牲者、多くの住宅・建物、インフラの被害が生じています。その中で、東日本大震災での経験や教訓が伝わり、少しでも減災に役立ったのか?という課題に関心があります。地震が起きる前の事前防災(耐震化、保険、訓練など)、発生後の初期対応、避難所での対応、その後の2次避難、広域避難、復旧・復興計画(暮らし、繋がり、営み)などが主な項目となりますが、本日は、その中でも避難などの初期対応についてお話ししたいと思います。
今回の地震により津波が発生しましたが、津波浸水想定に基づくハザードマップの公表、東日本大震災などの災害経験を踏まえた住民の避難訓練の実施が、迅速な避難に寄与したことが報告されています。新聞、デレビでの報道や現地調査から聞き取った、津波からの避難についての状況をまとめてみました。津波被害が生じた地域では、東日本大震災の経験にもとづく避難訓練・避難行動事例を確認出来ました。特に、地震から津波の想起や、避難の呼びかけに教訓が活きている事例が多くあります。一方で、家屋倒壊等によって避難路が阻害され、救助や避難が遅れる事例もありました。また、高齢の人が避難を渋る・あきらめる事例もあり、高齢の人をサポートしながらの徒歩避難行動の難しさを示す事例も報告されています。珠洲市や能登町で車避難の事例もあり、珠洲市をはじめ富山県、新潟県、福井県でも大規模な渋滞が報告されており、東日本大震災の教訓だった地域の車避難のルールづくりが進んでいない実態が浮き彫りとなりました。今回の状況を踏まえ、これまでの災害経験と教訓を伝承し、あらゆる関係者が情報発信していくことが重要です。
<2024年3月3日>東日本大震災メモリアル作品『最後の乗客』について
本日は、スペシャルゲストとして、仙台市出身でNY在住の映画監督 堀江貴さんをお招きしました。海外7つの映画祭で最優秀映画賞の受賞が続く、東日本大震災から10年後のメモリアル作品『最後の乗客』をご紹介します。
この映画は、宮城に縁のある仲間たちで、「震災を風化させない」「この映画を震災からの学びを語り合うきっかけに」という志のもと自主制作されたもので、全編、荒浜で撮影されました。いよいよ今週、8日(金)から、チネ・ラヴィータで凱旋上映されます。
*一般公開:8日(金)~14日(木)1日2回
*舞台挨拶付き特別上映会:8日(金)9日(土)10日(日)
9日には、堀江監督、主演の岩田華怜さんと共に今村先生もご登壇
*仙台防災未来フォーラム2024:9日(土)13:00~13:30
トークゲスト出演『映画を通して、世界との架け橋に』
また、上映収益の一部は、能登半島地震の義援金として、「緑の募金」を通じて寄付されます。是非、劇場でご覧ください!
https://lastpassenger.net/
<2024年2月25日>能登半島地震の現地調査について
土木学会では、発災後1月2日より、交通網の厳しい被害状況等に留意しつつ、必要な調査を実施するとともに、地震工学委員会による速報会、海岸工学委員会による調査報告会等を開催しています。このたび、今後の復旧・復興を適切に進めていくために、田中茂義会長を団長とし、地震工学、地盤工学、海岸工学、津波工学、土木計画学、インフラ学・国土学等の広い関係分野の専門家で構成される「会長特別調査団」を現地に派遣しました。
2月5日~6日にかけて、土木学会として初めて、珠洲市および輪島市での被災箇所の調査を行いました。具体的には珠洲市宝立町(津波浸水箇所)および同市真浦町(国道249号逢坂トンネル付近大規模崩落箇所)、輪島市熊野町(河原田川河道閉塞箇所)、同市河井町(大規模火災およびビル倒壊現場)など、今回の震災で複合災害が発生した箇所の実態を視察しました。幹線道路の緊急復旧はしたものの、現場への交通状況は困難を極め時間を要しましたが、移動のバス中でも議論を重ね所見をまとめていきました。この現場調査の後、馳浩石川県知事を表敬訪問し、その後、石川県庁内で記者会見を行いました。今回の地震災害の特徴、二次被害の抑制および復旧・復興の迅速化、復旧・復興のあり方、今後に向けた所見について報告しました。特に、基幹道路の役割の重要性、今後も同様な半島での災害対応の必要性を強調しました。この内容は学会HPに掲載されています。
https://committees.jsce.or.jp/report/node/225
<2024年2月18日>方丈記 日本最古の災害文学
漫画方丈記-日本最古の災害文学
本日は、最近再注目されている古典を紹介いたします。鴨長明によって書かれた「方丈記」の原著(現代訳でも)を読むことは難しいですが、近年「漫画方丈記 日本最古の災害文学」などの本が出版されています。解剖学者の養老孟司さんが解説文を書かれています。
「ゆく河の流れは絶えずして、しかも、もとの水にあらず」の一文から始まるこの作品は、枕草子・徒然草とともに日本三大随筆に数えられます。人の命もそれを支える住居も無常だという諦観に続き、次々と起こる、大火・辻風(つじかぜ)・飢饉・地震などの天変地異による惨状を描写しています。一丈四方の草庵での閑雅(かんが)な生活を自讃したのち、それも妄執であると自問して終わる、格調高い随筆です。21世紀に入った今、自然災害、感染症、地球規模温暖化など当時と重なる状況があり、このような中で、我々の生き方に一石を投じていると言われています。
名門・下鴨神社禰宜の子として生まれながら、跡目争いに敗れ、長年住んできた邸を追われるなか、10年足らずの間に長明は多くの災厄を体験。その天変地異を経た無常の先にある方丈の草庵(そうあん)生活が紹介されています。
たとえば、元暦地震(1185年8月6日)の記述は以下のように記されています。
「また同じころかとよ、おびたたしく大地震(おほなゐ)振ること侍(はべ)りき。
そのさま、世の常ならず。山は崩(くず)れて河を埋(うづ)み、海は傾(かたぶ)きて陸地(くがぢ)をひたせり。土裂(さ)けて水涌(わ)き出で、巌(いはほ)割れて谷にまろび入る。(現代訳;また同じころであったであろうか、たいそう大きな地震が起こったことがあった。その様子は世のいつもの様子とはまるで違い、山は崩れて河を埋め、海は傾いて陸地に押し寄せた。)」養老さんからのメッセージとして、自足の考え(自給自足、自律分散)を紹介されました。ゆく河の流れー無常観が重要であり、時代の転換期を生きる中で、しなやかさーResilienceが大切であると思います。
<2024年2月11日>能登半島地震の企業への影響・被害(帝国データバンクによる調査)
https://www.tdb.co.jp/report/watching/press/p240109.html
令和6年能登半島地震は甚大な人的・物的被害をもたらしており、さらに企業関係への影響も含めて経済的被害が出ていると言われています。今回の地震で被害の大きい能登地方に本社を置く企業は4,075社にのぼっていますが、その実態は把握が難しい状況です。先月、帝国データバンクが能登半島地震の影響と防災に関する企業アンケート(全国)を実施し、重要な結果を報告しています。(アンケート期間は1月12日~17日、有効回答企業数は1,255社。なお、甚大な被害を受けた能登地方の企業にはアンケート要請を行っていません)。おもな内容としては、この地震による企業活動への影響のほか、「企業防災(企業が行う自然災害への対策)」に対する意識についてになります。以下、おもに2項目について紹介いたします。
①能登半島地震による自社の企業活動への影響の有無を尋ねたところ、『影響がある(見込み含む)』とする 企業は 13.3%となりました。内訳をみると「既に影響が出ている」が 4.3%、「影響が見込まれる」が 9.0%、「影響の有無を確認中」で詳細が判明していない企業は 7.4%、「現時点で影響はない」企業は 75.3%。「今後、仕入先の工場などの稼働状況がどうなるかが懸念される」との声もあり、今後の影響を懸念している状況です。
②企業の94.9%が今回の地震を機に「企業防災」の大切さを改めて実感、なかでも「飲食料備蓄」「連絡網の整備」が4割近くで、企業として改めて大切だと考えた防災対策を尋ねたところ、「飲料水、非常食などの備蓄」が39.2%でトップ、次いで「社内連絡網の整備・確認」(38.3%)、「非常時の社内対応体制の整備・ルール化」 (31.6%)や「非常時向けの備品の購入」(28.4%)などが上位になりました。また、「BCP自体の策定・見直し」(20.6%)は 5 社に 1 社となっています。災害復興が遅れると調達難などに陥る企業では代替調達などの対策が必要であり、関係機関によるサプライチェーン全体の影響の確認や適切な支援も求められています。
<2024年2月4日>福島県浜通りの1市4町との包括連携協定締結について
東北大学(グリーン未来創造機構が窓口となり、全学部が協力)は、福島県(特に沿岸域)での復興を支援するために、拠点を設けながら、関係自治体との協力を強化するために包括連携協定を締結しました。まず、昨年9月に浪江町と、今年1月に南相馬市、大熊町、双葉町、そして2月に富岡町と締結式を行いました。
特に、福島・国際研究産業都市(イノベーション・コースト)構想の推進、産学官による地域経済の復興・再生、復興まちづくりや人材育成に関して相互に連携、協力することになります。この締結に併せて、2月21日に、東京で包括連携記念シンポジウムが開催される予定です。大野東北大学総長の挨拶から始まり、福島国際研究教育機構(F-REI)理事からの特別講演、環境省やグリーン未来創造機構の取組の紹介があります。最後に、パネルディスカッションとして、冨永東北大理事・副学長も参加し、1市4町の市長・町長の皆様から、東北大学への期待や、なぜ東北大学が浜通りで活動をするのか?などをお話しいただく予定です。参加は無料ですので、ご参加下さい。
■福島県浜通り地域 市町連携協定記念シンポジウム『福島県浜通り地域の「今」そして「未来」~サステナブルな社会の実現を目指して』
■2024年2月21日(水)14:00~17:00 会場:東京八重洲カンファレンス
また、浜通りでの具体的な活動のひとつが、東日本大震災アーカイブ関係になりますが、1月8日に災害科学国際研究所で、令和5年度のシンポジウムを国会図書館と共催し、大熊町、富岡町、浪江町、双葉町から事例報告をいただきました。今後さらに連携が深まるものと期待されます。
<2024年1月28日>東京都での事前復興シンポジウム
1月17日、東京都庁で開催された「都市の事前復興シンポジウム」で講演を行いました。「100年先を見据えた都市の事前復興」をテーマに、防災アナウンサーの奥村奈津美さん、東京都立大学の中林一樹名誉教授から講演があり、さらに、関東大震災の動画上映等がありました。関東大震災から100年を迎えた昨年、東京都は様々な取組を実施していますが、大きな災害に対しては、発生後の対応では十分ではなく、事前の備えが特に重要であり、その中の1つが、事前復興計画を作成することになります。
実は、東京都は平成13年5月に「震災復興グランドデザイン」をすでに策定しております。首都直下地震等の被災時における迅速かつ計画的な都市復興に向け、あらかじめ都民と行政が震災復興時の都市づくりのあり方を共有しておくための計画です。都市復興のあり方や手順、執行体制をあらかじめ検討し、都民や行政職員等と共有を図る取組です。
首都直下地震等に備えた都市の事前復興の取組
https://www.toshiseibi.metro.tokyo.lg.jp/bunyabetsu/bosai/shuto.html
その中で、平成12年度から都民参加型の「震災復興シンポジウム」を開催してきましたが、近年各地で地震を始め様々な自然災害が発生していることを考慮し、令和元年度から「都市の事前復興シンポジウム」と名称を変更し、開催しています。東京の震災復興の基本目標を「東京都長期ビジョン※」(平成26年12月)で掲げられた、「安全・安心な都市の実現」「世界をリードするグローバル都市の実現」を基本理念としています。協働と連帯による「安全・安心なまち」「にぎわいのある首都東京」の再建、特に、東京の政治・経済中枢機能や国際都市機能を回復するために、都市活動を 迅速に再開させ、にぎわいを取り戻すことに力を注がなければなりません。
<2024年1月21日>災害関連死を防ぐための対策
能登半島において我が国最大クラスの活断層による地震が発生し、津波、地すべり、液状化、火災などの複合災害を伴い、多くの方が、現在も避難所などで生活を送られています。避難所での生活には留意すべき点があり、これにより災害関連死を防ぐことが大切です。2016年の熊本地震では、犠牲者273人のうち、80%以上の218人が災害関連死でした。現在、「避難所・避難生活学会」が組織され、様々な活動や提言が発信されています。
https://dsrl.jp/
まずは、低体温症に注意が必要です。冬期の災害のため、避難所などに十分な暖房がない場合、高齢者を中心に低体温症の危険性があるとしています。体の震えが止まらない、呼びかけへの反応が鈍いなど、低体温症の兆候がある場合には、すぐに体を温めるか、病院に搬送するよう呼びかけています。
低体温症を防ぐために、
▽防寒の服を着用する
▽乾いた衣類を重ね着する
▽上着の中に新聞紙を詰める
▽体を寄せ合う
▽ベッドやマットレスなどを使う
▽温かい飲み物を飲む
などの対策が有効だということです。
さらに、車の中で避難している人には、一酸化炭素中毒やエコノミークラス症候群に注意が必要です。ガレージなど閉鎖された環境でエンジンをつけていると排気ガスの一酸化炭素を吸い込むおそれがあります。また、長時間、狭い車内で足を曲げた状態で過ごすと足に血栓が生じやすくなるとしています。
▽定期的に歩いて足を動かす
▽足を伸ばせるようにする
▽トイレを我慢しない
▽カフェインの入っていない水分をとることなどを心がけてほしいとしています。
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20240103/k10014307671000.html
<2024年1月14日>令和6年能登半島地震と津波について
令和6年能登半島地震は、2024年1月1日16時10分(JST)に、石川県能登半島に穴水町の北東42kmを震央として発生した地震になります。観測された最大震度は、石川県羽咋郡志賀町の震度7です。震度7を記録した地震の発生は2018年の北海道胆振東部地震以来、7回目となりました。同日、気象庁はこの地震並びに2020年12月以降の一連の地震活動を「令和6年能登半島地震」と命名しました。地震の規模はMj7.6、震源の深さは16km(いずれも暫定値)。この地震は石川県能登地方で観測した地震としては、記録が残る1885年(明治18年)以降で最大の規模になりました。
16時12分、気象庁は山形県・新潟県上中下越・佐渡島・富山県・石川県能登・加賀・福井県・兵庫県北部に津波警報を、その他日本海沿岸各地にも津波注意報をそれぞれ発表しました。その後16時22分、石川県能登の津波警報が大津波警報に切り替えられました。大津波警報の発表は、2011年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震(東日本大震災を引き起こした巨大地震)以来になり、1953年房総沖地震から現在までの間で6回目になります。各地の検潮所で津波が観測されていきました。現時点で気象庁は、能登地方の輪島市では、1.2 m以上としています。珠洲市と輪島市にある津波観測計のデータが入っていないため、さらに高い津波が観測されている可能性があることから、最高1.2m以上と表現されています。20時30分に石川県能登に出ていた大津波警報は津波警報に切り替えられ、2日1時15分に津波警報は全て津波注意報に、その後10時00分、すべての津波注意報が解除されました。
https://ja.wikipedia.org/wiki/
<2024年1月7日>2024年を迎えて
2024年はいくつかの周年行事が予定されています。10月23日中越地震から20年、12月7日昭和東南海地震津波から80年、12月26日スマトラ地震・インド洋津波から20年になります。2月6日には、トルコ・シリア地震から1年を迎えますが、我々はトルコ側との共同研究を進めており、デジタルアーカイブ整備支援、衛星データと地上写真の融合などのプロジェクトを推進、3月には、トルコの学生とのワークショップを行う予定です。また、下記が今年前半の主な予定です。
1月17日:東京都で「事前復興フォーラム」
2月4日 :八戸市で「日本海溝・千島海溝に備えたシンポジウム」
2月17日:大阪公立大学で「いのちを守る都市づくり~コミュニティ防災フォーラム2023」
3月2日 :石油連盟presents防災セミナー2024in仙台
東日本大震災の経験と教訓を踏まえ、震災の経験を風化させず、次の世代へ語り継いでもらうためにも、いざという時に対応できるヒントを日常生活の中から考える『聞いてみよう!いのちを守るお約束』、是非参加して下さい。申し込みは下記まで。
https://f.msgs.jp/webapp/form/14418_oiv_668/index.do
<<定員を超えたため,申し込みを終了しております>>
3月9日 :仙台防災未来フォーラム、今年度のテーマは「仙台枠組折り返し みんなで今できる防災(こと)」
東北復興ツーリズム推進ネットワーク会議が昨年8月に発足し、インバウンド、修学旅行の誘致などの活動が進められています。仙台市のJR フルーツパーク仙台あらはま、岩手県陸前高田市のワタミオーガニックランドなど農業体験や施設等が整備されていて、これらを震災防災施設と組み合わせることで防災・減災を学ぶことができると期待されます。復興の歩みやプロセスを体験できることは12年経った今だからできることです。