<2022年12月25日>令和4年を振り返って②
6月、気仙沼市唐桑「津波体験館」が閉館 津波被害を伝え続け38年、唐桑半島ビジターセンター内の日本初の津波体験施設「津波体験館」が残念ながら閉館しました。新しいビジターセンターはアウトドアを楽しむ中核施設として市が整備し、来春オープン予定です。
6月、東北南部で梅雨明け(6月29日) 東北地方で、6月中の梅雨明けは初めてで統計開始以来、最も早い梅雨明けになりました。しかしながら、7月、8月と東北地域では豪雨が発生し、被害が生じてしまいました。極端気象になっていることを実感しました。
8月、東北大災害研x石油連盟による防災WEBが開始 石油連盟と災害科学国際研究所の連携による防災セミナー(WEB)を企画し、防災関係の講義をIRIDeSChannelで発信しております。それぞれの活動や専門的な知見を活かし、防災意識向上に向けて、社会に貢献できればと考えております。
10月、災害研10周年記念式典とシンポ(10月21日)東日本大震災という未曽有の大災害を経験した東北大学は、被災地復興への貢献および世界最先端の災害科学研究の推進を目指し、2012年4月に災害科学国際研究所を発足、設立10年を迎えましたこれまでに本研究所へいただきましたご指導・ご協力に心より感謝申し上げます。
11月、東北大学「ともプロ!」 学生の挑戦を応援する未来共創型CF(クラウドファンディング)です。この中で、津波工学研究室の成田峻之輔くんの「津波災害の指定緊急避難場所を掲示する専用アドバルーンの自動掲揚装置開発」が無事に目標額に達しまして、研究が始まります。皆様に厚く感謝申し上げます。
<2022年12月18日>令和4年を振り返って①
1月15日、海底噴火と津波発生 太平洋のトンガ沖で海底火山が大噴火しました。気象庁は噴火から約6時間後の15日午後7時ごろ、海面変動を0.2メートル未満と予想しました。しかし、同8時ごろから潮位が上昇、11時55分には鹿児島県奄美市で1.2mの津波が観測され、追われるように翌16日午前0時15分に奄美群島・トカラ列島に津波警報を出しました。
3月、震災追悼式典 東日本大震災で被災し、3月11日に追悼式典を続けてきた宮城県の沿岸13市町のうち、石巻、東松島など3市を除く11市町が今年は開催せず、大半が献花台の設置にとどめていました。一方、岩手、福島両県では継続する自治体が大半で、10年を境に被災自治体の対応が分かれました。この中、気仙沼市は「追悼と防災のつどい」に改め、震災伝承と防災教育をテーマに専門家の講演やパネル討論を実施しました。
3月16日、福島県沖で23時34分と36分の2度にわたり地震発生 それぞれの地震のマグニチュードは、6.1および7.4、震源の深さは57km、東日本大震災の際の地震にも関係した地震になります。死者3人、多数のけが人、火災、建物被害などが生じました。さらに、東北新幹線の走行中の車両が白石市付近で脱線、復旧までに大変時間がかかりました。
4月、ArcDR3が都市建築研究の最先端を紹介する展覧会を実施「リジェネラティブ・アーバニズム展—災害から生まれる都市の物語」が、UCLAxLABや東北大学災害科学国際研究所など世界の11大学が提案する災害に対応する建築・都市デザインをもとに東京で開催されました。
5月10日に新津波浸水想定発表 津波防災地域づくり法に基づく津波浸水想定図が作成、公表されました。同法は震災の教訓を踏まえ、都道府県に対し、震災時より潮位が約1m高い満潮時に防潮堤が破壊されるなど最悪条件下で津波浸水想定の設定を義務づけています。内閣府が2020年4月に日本海溝・千島海溝巨大地震の想定を示したのを受け、岩手県が3月29日、宮城県は5月10日に公表しました。仙台市は8月24日から、浸水想定の範囲や避難行動について説明する住民説明会を始めました。
<2022年12月11日>南三陸311メモリアルのラーニングプログラムについて
https://m311m.jp/learning-program/
"あのとき、自分なら"を学び考える震災伝承ラーニング施設『南三陸311メモリアル』が、『道の駅さんさん 南三陸』のグランドオープンに合わせて、10月に開館しました。先日、メインコンテンツのラーニングプログラム:テーマ1「生死を分けた避難」を実際に体験して参りました。
巨大地震の後に津波襲来の危機が迫る。そのとき人々はどう行動したのだろうか。即時の判断が求められる時、あなたはどう行動しますか?町民の証言をもとに構成したドキュメント映像を視聴します。3つの構成で、生き残ること(戸倉小学校)、生きることを諦めない(志津川病院)、地域の支援活動(入江地区、歌津地区、炊き出し)その後に、「自然災害からどう命を守るのか」を自分ごととして思考し、他者と語り合うことで新たな学びや発見を得ます。プログラム内で使用する防災ブックは⾃宅にお持ち帰り可能です。
テーマ2:「そのとき命が守れるか」
町の指定避難場所の多くが津波に襲われた東日本大震災。あなたが、想定外の自然災害に遭遇したとしたらどうするだろうか?万が一の備えについて、自身に当てはめて考えます。
テーマ3、4:きょうから実践できる「防災アクション」を持ち帰る簡単ワークショップ。【学校編】【一般編】もあります。
南三陸311メモリアルを訪問された際は、是非、ラーニングプログラムを受講なさってください。
https://m311m.jp/archives/
<2022年12月4日>「デジタル防災コミュニティー」プロジェクト他の紹介
防災を推進する上でコミュニティーでの活動は不可欠ですが、少子高齢化、都市化などにより、その実態には課題が残されています。その中で注目されているのがデジタル防災コミュニティーです。デジタル技術を活用して地域や世代の垣根を越えた防災コミュニティーを作ろうと、9月から、災害科学国際研究所が「でじぼうといっしょにSNSコミュニティ活性化プロジェクト 」を始めました。
https://irides.tohoku.ac.jp/event/event_jn/detail---id-6231.html
先日、市内で説明会が開催され、30名以上の方にご参加いただきました。今後、SNSで参加者が共通のハッシュタグを付けた投稿を続けて、互いの関係性を段階的に深めて災害時の情報共有につなげるなど、具体的な取り組みが始まります。
本件についてのお問い合わせ先
bousai-comm_irides@grp.tohoku.ac.jp
さて、せんだい3.11メモリアル交流館では、企画展「私がここで暮らしていくための科学~『黒い壁』の正体」が開催されています。東日本大震災が起きた時、津波を目にした方々は、津波を「黒い壁のようだった」と表現しています。なぜ、津波は「黒い壁」のように見えたのでしょうか。いつか再び来襲してくる津波も「黒い壁」なのでしょうか。それを考えるためには、科学を通して津波の普遍的なしくみや性質を知っておく必要があります。地震・津波といった自然現象や、それが引き起こす災害に対する疑問に、「地震」・「津波」・「予測」・「警報」・「科学」・「伝承」という6つのテーマを設け、科学的な視点から回答しています。
会期/2022年11月15日(火)~2023年3月14日(火)
<2022年11月27日>1640年の駒ヶ岳噴火・山体崩壊による津波再現モデル
東北大の社会人ドクター菅野剛さん(東北電力)との共同研究を紹介したいと思います。最近、トンガ火山噴火に伴う津波が発生するなど、火山性津波解析の必要性が叫ばれています。発生機構が複雑な上、事例が少ないため、過去の津波再現もむずかしく、重要な課題となっています。十分な観測情報もない、歴史的な火山性津波に対しは、どのように再現を試みたら良いかを探ることが研究テーマとなっています。そこで、事例対象として、1640年駒ヶ岳噴火の山体崩壊による津波を取り上げました。この噴火は実際に津波を発生させ、噴火湾と言われる内浦湾には、古文書記録は殆どありませんが、津波痕跡が沿岸部に残されています。このデータを精査し、土砂崩壊モデルに津波発生・伝播モデルを融合させてみました。そこには、まだ確定されていない、いくつかのパラメータ設定がありますので、その影響を評価し、推定することを目的としました。
まず、山体崩壊シミュレーションが必要です。崩壊前の地形のモデル化は、現況地形を用いて推定し、山体崩壊を起こしました。正確な崩壊量の推定は難しいのですが、いくつか複数のモデルを作成してみました。実際、この違いは大きくありませんでした。しかし、土質パラメータの中には、内部摩擦角や底面摩擦角があり、土砂が流下し、海域で津波を発生させる重要なものであることがわかりました。
次に、津波発生と伝播モデルにより再現を試みました。特に、北海道西部地域に分布する波源不明の17世紀の津波堆積物との対応を検討しました。この津波堆積物は平均で6mくらい最大で12mを超える場所で発見されています。少なくともこの高さを超える津波が発生したことになります。この堆積物分布は、従来の地震モデルでは再現が難しかったのですが、今回の火山性津波のモデルで、良好に再現することが出来ました。しかも、このモデルによりますと、伊達市(岬)では、津波堆積物は発見されていないものの、25mを超えるような津波の増幅が示されています。このような大規模な津波については、津波堆積物を含めて、検証できる情報やデータはありませんが、今回、場所が推定できましたので、さらなる現地での調査が必要であると考えています。
<2022年11月20日>大学院生による津波避難アドバルーンプロジェクト
東北大学 学生チャレンジ クラウドファンディング「ともプロ!」という学生主体の公募型プロジェクトを11月30日まで実施しています。学生の挑戦を応援する未来共創型クラウドファンディングで、現在9つの挑戦があります。
https://www.kikin.tohoku.ac.jp/tomopro/2022
この中で、防災に関する取組を紹介します。「津波災害の指定緊急避難場所を掲示する専用アドバルーンの自動掲揚装置の開発」で、津波工学研究室の修士1年生 成田峻之輔くんの提案になります。津波避難ビルや津波避難タワーなどの指定緊急避難場所は、地震発生から非常に短い時間で到達するタイプの津波(近地津波・極近地津波)に対して、避難者に緊急的に津波にのまれない場所を提供するという重要な役割を持ちます。これらの避難施設は東日本大震災以降、全国の沿岸地域で整備が進んでいますが、その場所の認知度が低いという課題があります。
たとえば、多くの観光客が集まる神奈川県鎌倉市では、堤防のない平坦な地形に街が広がり、津波到達は最短8分と予想されています。現在、多くの緊急津波避難ビルなどが指定されていますが、避難者(特に観光客など)が適切な避難場所を知らないリスクがあります。そこで、緊急時の避難先を、迅速に、広範囲に、直観的に伝えることのできる情報媒体として、避難先から専用アドバルーンを自動で掲揚できれば、土地勘のない観光客でも迅速に避難先の判断ができる環境を整えられると考えています。さらに、バルーンのプロトタイプとVR空間での検証を併せて自治体に提示することで、産官学での社会実装を進め、津波襲来後の生存者を一人でも多く残すことを目指しています。また、平常時は、広告媒体として装置の維持管理費を賄い、経済的持続性の高い防災の実現に努めます。東北の経験と知見を日本・世界の防災力向上に活かすべく、将来的には国外での導入を目標としています。是非、皆様のご支援をお願い致します。
https://www.kikin.tohoku.ac.jp/project/tomopro/2022/pj_006_2022
<2022年11月13日>映像アーカイブ事業の紹介
https://www.311densho.or.jp/archive/index.html
3.11伝承ロード推進機構は、各地での伝承活動や防災(啓発・教育)活動をご支援させていただいております。その1つが、東日本大震災の教訓を伝承するため、震災直後からの復旧・復興で果たした建設業界の働きを可視化し、震災のレガシーとして残すための震災時での映像アーカイブ事業になります。
震災直後の道路啓開や津波の排水作業などは、大津波警報が発令中にもかかわらず、警察・消防の人命救助以前の緊急作業として、地元の建設業者が自主的に行い、孤立した避難所への緊急物資輸送にも大きな役割を果たしました。過去に例を見ないスピードで復旧・復興事業を実施した建設業界の働きは、これまで培った様々な知見や技術を縦横に駆使して行ったものです。そのため、企業や団体は独自にこれらの働きを貴重な記録として保存はしているものの、一般に知られることはほとんどありません。そこで、震災から10周年という節目を契機に、団体や企業、社員個人が所有している資料や写真、映像などを、団体や企業の求めに応じて編集し、これらの活動を可視化し、映像アーカイブとして認定し、貴重な資産として残す事業が始まりました。教訓の伝承と新たな防災意識社会の形成に向け、広く社会に役立てていくことを目的としています。現在、下記の7作品が認定されています。
1.第二の水素爆発を防げ!過酷な状況で国道6号の早期復旧に立ち向かった大成ロテックの記録
2.地元を守れ!孤立した避難所に命をかけてインフラを緊急復旧させた武山興業の記録
3.道を切り啓け!津波で壊滅的は被害を受けた宮古市の早期道路啓開に貢献した刈屋建設の記録
4.ふるさとに笑顔を取り戻す 2011年の東日本大震災による大津波で大きな被害を受けた小泉大橋や定川大橋、旧北上川河口の緊急復旧工事に貢献した若生工業の記録
5.ワンチームで地域を守れ! 2019年の台風19号による大洪水で大きな被害を受けた丸森町、大郷町の早期復旧に貢献した熱海建設の記録
6.仙台空港を啓開せよ!津波に飲み込まれた仙台空港の早期機能回復に貢献した前田道路の記録
7.気仙大橋を通せ!東日本大震災による大津波で破壊された、陸前高田市の気仙大橋を、わずか61日で復旧させた東亜建設工業株式会社の記録
<2022年11月6日>災害研設立10周年記念式典とシンポジウム
東日本大震災という未曽有の大災害を経験した東北大学は、被災地復興への貢献および世界最先端の災害科学研究の推進を目指し、2012年4月に災害科学国際研究所を発足させました。本年4月1日に設立10周年を迎えました。これまでに本研究所へいただきましたご指導・ご協力に心より感謝申し上げます。10月21日、設立10周年を記念する式典およびシンポジウムを開催し、対面およびオンラインで約400名のご参加をいただきました。
■記念式典
記念式典の司会は板橋恵子さんにお願いいたしました。大野英男総長による挨拶から始まり、ご来賓を代表して、木村直人文部科学省大臣官房審議官、村井喜浩宮城県知事、達増拓也岩手県知事、郡和子仙台市長からご祝辞をいただきました。続いて、榊真一内閣府政策統括官、Andrew Gordonハーバード大学教授、Peter Sammonds UCL 教授、Christopher Tremewan APRU事務局長、松岡由季国連防災機関駐日事務所代表から、研究所への期待とメッセージをいただき、最後に、私から、研究所の発足と今後の展望について発表させていただきました。
■シンポジウム ≪災害研10年の歩みと将来展望≫
林春男防災科研理事長から、「来るべき国難級災害を乗り越えるレジリエンス確保の中核たれ」と題した記念講演をいただきました。パネルディスカッションには、下記の方々にご参加いただきました。
平川新 災害科学国際研究所前所長、呉文繍国際航業株式会社代表取締役会長、中島 洋復興庁宮城復興局長、溝口敦子名城大学・災害科学国際研究所教授、江川 新一教授、マリ・エリザベス准教授
https://irides.tohoku.ac.jp/event/irides_anniversary/anniversary/10yr_anniv.html
<2022年10月30日>東北大×トヨタコラボ企画
10月14日、東北大とトヨタの包括的連携・協力を記念したキックオフ・イベント災害研を会場に、「トヨタと東北大学が夢見るミライ~震災を経た東北の地への想い~」を開催いたしました。実施内容は以下になります
13:00-14:00 特別講演 近 健太 副社長
14:00-14:40 協定調印式 近 健太 副社長 x 大野英男 総長
14:30-17:00 サイエンスオーラルセッション、交流の場、災害の備え
11:00-17:00 車両展示 試乗会 @災害科学国際研究所 エントランスホール
・トヨタの社員(本学卒業生)による仕事内容紹介、水素からの発電装置や貯蔵タンクなどの展示ディスカッション 災害時の取組について、トヨタ社員と本学学生、教職員がディスカッションを行いました。あわせて、下記のような車両の展示や試乗も行われました。
・FCキッチンカー(ハイエース)・豪州仕向けのハイエースに店舗並みの調理家電を備えたキッチンカー、災害時にも炊き立てのご飯やその他料理の暖かい食事を提供、イベントなどで周辺の他のキッチンカーへも給電が可能
・FCモバイル医療車(コースター)・平常時には医療活動において利活用し、災害時には災害対応の一助として被災地で電力供給を行いながら、災害支援活動をサポート、車の外側にもコンセントを装備し、様々な電気製品に電気を供給可能
・Moving e(SORA)・ホンダとトヨタで構築した"移動式発電・給電システム"、FCバスと給電機、可搬型バッテリーで電気のバケツリレーで電気を配る、FCバスはSORAをベースに水素量、給電能力を強化
・水素エンジン車(カローラクロス H2 CONCEPT)・水素を燃料とするための供給・噴射システムを変更した水素エンジンを搭載、2つの水素タンクを床下にレイアウトし、タンク容量確保と後席およびラゲッジスペースを両立
MIRAI・第2世代のセダンタイプの乗用FCEV、環境性能に加え、「走る事が楽しく快適なクルマ」としての完成度を追求、前モデルからパワーや航続距離、乗車定員などを向上しています。
<2022年10月23日>福島県いわき市との包括連携協定
福島県の東南端に位置し福島県最大の面積があるいわき市。太平洋に面し、寒暖の差が比較的少なく、温暖な気候に恵まれた地域です。平坦部が広く、夏井川や鮫川を中心とした河川が市域を流れています。人口は32万人と福島県で最大であり、東北では仙台に次いで 2番目に人口が多い市になります。近年は、東日本大震災(死者468名)、令和元年東日本台風(死者14名、全壊住家103棟、大規模半壊住家759棟)、令和 3年 2月 13日福島県沖地震など、数多くの被害が発生しています。
10月3日、いわき市と災害科学国際研究所が防災に関する包括協定を締結しました。
https://news.yahoo.co.jp/articles/fb3d925ef44118b9aa2a24c1dbe435ffbacc6e2c
災害研発足時にリーディング大学院のプログラムの一環として、いわき市での復興支援や防災訓練などを支援させていただきました。人口が多く車利用も多い地域ですので、津波や洪水の際の避難に関して課題がありました。そのため、「津波災害時における自動車避難検討部会」を設置し、全国に先駆けて車を使った訓練を実施しています。その結果、渋滞箇所が特定でき、やむを得ず車で避難する場合には、最寄りの避難場所ではなく浸水域外へ避難すること、複数のルートを把握することなどが提案されました。
https://www.city.iwaki.lg.jp/www/contents/1485757632676/index.html
今後、いわき市の施策推進や地域課題の解決に係る人的資源、知的資源の活用や地域防災計画改訂や市災害対策本部体制の在り方に対する助言等・ハザードマップの策定や千島海港沖地震に係る避難計画策定にあたっての専門的な見地からの助言や指導などを検討していく予定です。
<2022年10月16日>中越メモリアル回廊
今年10月23日で中越地震から18年が経過いたします。当時の経験や教訓は東日本大震災の際にも大いに参考になりました。新潟県には、2011年10月「中越メモリアル回廊」が開設されました。中越地震のメモリアル拠点を結び、被災地である中越地域をそのまま情報の保管庫(アーカイブ)とする試みです。 メモリアル拠点を巡ることで、震災の記憶と復興の軌跡にふれることができます。
中越メモリアル回廊には、下記の4つの施設と3つのメモリアルパークがあります。
おぢや震災ミュージアム「そなえ館」/木籠メモリアルパーク/妙見メモリアルパーク/長岡震災アーカイブセンター「きおくみらい」/やまこし復興交流館「おらたる」/川口きずな館/震央メモリアルパーク
https://www.city.nagaoka.niigata.jp/kankou/rekishi/shinsai/
おぢや震災ミュージアム 「そなえ館」は、防災学習研修施設です。
長岡震災アーカイブセンター「きおくみらい」は、中越メモリアル回廊の中核施設で、新潟県中越大震災の記憶・記録・教訓を未来に役立てるための施設です。
やまこし復興交流館「おらたる」は、甚大な被害を被ってなお、それを乗り越えて復旧・復興へと歩みを続けている山古志を、写真や映像、プロジェクションマッピングなどで紹介しています。
川口きずな館は、新潟県中越大震災からの復興の中、築かれてきた絆の記録を展示し、新たな絆を育て、豊かな地域づくりを進める拠点です。
<2022年10月9日>ぼくのわたしの防災手帳
災害科学国際研究所では、東日本大震災での実態を、脳科学の杉浦元亮教授を中心に調査し、8つの「生きる力」を提案、このような力が、災害から生き残り、避難所や仮設住宅などで生き抜くチカラとなったことを紹介できました。一方で、当時の子どもたちにも同様の調査を実施し、6つのチカラを持っていたことも明らかにしています。その成果を「ぼくのわたしの防災手帳」として作成し、普及活動を行っています。テレビ岩手さんの全面的な協力の下、岩手県内の国公私立151校の新中学1年生 約9,700名 に毎年配布しています。
この手帳の制作にあたっては、研究所の実践的防災学の理念のもと 宮城県多賀城高校の生徒(被災当時は中学生)にインタビューを実施しました。子どもたちへのインタビューからわかったことは、平時だけでなく震災などの非常時でも「知識力と備え力」「情報力」「冷静力」「団結力」「体力」「未来を信じる力」の6つの力を持ち合わせていることでした。「ぼくのわたしの防災手帳」は、そうした、子どもたちが震災体験を通して気がついたことなどもコンテンツに反映し、防災・減災に向けての意識づくり強化を目的として制作したものです。
災害大国である日本に暮らす限り、いつどこでどんな災害にあうか分かりません。私たちはいざという時のために、「生きる力」を高め、自分の家族を、地域を守らなければなりません。これからの将来、地域のリーダーになるであろう子どもたちに、中学生のうちから防災・減災の意識づくりをしていきたいと考え、毎年中学1年生に配布していくこととしました。
https://www.tvi.jp/bousai/
<2022年10月2日>南海トラフ地震臨時情報発表時、組織の対応計画作成支援パッケージ
本学での地震・津波防災の研究プロジェクトを紹介したいと思います。これは、公益財団法人 セコム科学技術振興財団によって採用(特定領域研究助成)されたもので、福島洋准教授を代表とする多くの東北大メンバーが参加し、平成31年1月~令和3年12月までの3年間継続しました。
南海トラフ地震は、およそ100~150年の間隔で繰り返し発生してきました。現在、南海トラフ沿いで異常な現象が観測された場合に、事前地震情報として、気象庁から「南海トラフ地震臨時情報(巨大地震警戒)または(巨大地震注意)」が発表されることになっています。この仕組みを効果的に被害軽減につなげられるかどうかは、どれだけうまく社会が対応できるかにかかっています。特に、地方自治体、公共機関、社会影響の大きい企業、メディア等の組織の対応が、社会全体の流れを決めるからです。そこで、地方公共団体や企業などの組織の実効的な対応計画の作成を支援するための知見や処方箋などを詰め込んだパッケージを開発し、社会への浸透を図ることを目的とした研究プロジェクトを実施したものです。
この支援パッケージは、大きく分けて3つの要素で構成されています。
①後発地震の発生確率と、後発地震が発生する場合の津波リスクについて説明、南海トラフ地震臨時情報が発表された状況で、その後どのような自然現象が起きるかのシナリオ
②「推奨対応レシピ」として、先発の半割れ地震が発生した際の企業・組織の対応行動について、計画作成の拠り所となる、詳細かつ実践的なマニュアル
③臨時情報対応を考えるにあたり、組織間の依存関係の観点で留意すべきこと、住民の意識の現状から住民の対応について想定すべきこと、将来的な臨時情報への対応力向上のための啓発活動などについて
<2022年9月25日>津波に関する最近の学術論文について
本日は、学術誌の紹介をしたいと思います。大学教員などの研究者は、得られた知見や研究成果を関係の学会などで運営している学術誌に投稿し、査読を受けて公表されます。公表し関係者や地域社会で活用いただくことが大変に重要になっています。
今回、インド洋大津波や東日本大震災での津波に関連する研究を紹介した論文が、8月末にNature review earth & environmentという科学論文雑誌に掲載されました。タイトルは、「巨大津波の監視、早期警報、危険度評価」です。
Nobuhito Mori, Kenji Satake, Daniel Cox, Katsuichiro Goda, Patricio A. Catalan,Tung- Cheng Ho, Fumihiko Imamura, Tori Tomiczek, Patrick Lynett,Takuya Miyashita, Abdul Muhari, Vasily Titov and Rick Wilson, Giant tsunami monitoring, early warning and hazard assessment,Nature Reviews Earth & Environment,3, pages557–572 (2022), DOI: 10.1038/s43017-022-00327-3
地震によって引き起こされた巨大な津波は、数千キロを超える規模で、沿岸の人口、生態系、およびインフラに壊滅的な災害を引き起こす可能性があります。特に、2004 年のインド洋(約 230,000 人の死者) と 2011 年の日本 (22,000 人の死者) での津波の規模と悲劇は、将来の災害の影響を軽減するための世界的な研究活動を促しました。この論文では、津波の発生、伝播、および監視の理解における進歩を紹介し、特に迅速な早期警報と長期的なハザード評価の発展に焦点を当てています。
<2022年9月18日>津波の新浸水想定 仙台市の住民説明会始まる
宮城県が今年5月に公表した津波の新たな浸水想定について、仙台市は8月24日から、浸水想定の範囲や避難行動について説明する住民説明会を始めました。仙台市で東日本大震災の1.03倍にあたる54㎢が浸水する可能性があるとされており、浸水範囲が広がったことをうけて、今までの避難計画を見直す必要があるのです。
宮城野区の高砂市民センターで開かれた第1回説明会には、町内会の役員を含む15人ほどの住民が参加しました。仙台市による説明では、市が設定した避難エリアを見直すまで、当面は新たな浸水範囲の外に避難するように呼びかけられました。そして、やむを得ず浸水が予想される場所で避難する場合は、津波避難ビルや仙台東部道路の避難階段など、とにかく高い場所に避難するよう説明されました。 高砂市民センターは、新たに浸水範囲に含まれた指定避難所の一つで、1m以上3m未満の浸水が想定されているため、当面は2階以上への避難で対応するということです。
私は、8月28日に行われた福室市民センターでの説明会にオブザーバーとして参加させていただきました。参加者からは、避難の方法などについて地域の実情にあわせた具体的な説明や地区ごとのハザードマップを配布してほしい、浸水範囲の色分けがわかりにくい、といった声が上がっていました。一方で、自宅が想定図のどこにあるのか認識していなかったため、危機管理の面で良い機会だった、また、ペットとの避難についての質問なども出ていました。仙台市はこうした住民説明会を、沿岸部の浸水が想定される地域で9月30日までに計15回開くことにしています。
<2022年9月11日>宮城県地震対策等専門部会での動き
宮城県防災会議は災害対策基本法第14条に基づき、宮城県の執行機関の附属機関として設置されています。 災害が発生した場合,その災害に関する情報の収集などを行います。
https://www.pref.miyagi.jp/soshiki/kikisom/ks-bousaikaigi-top.html
この防災会議の中には専門部会があり、現在、第5次地震被害想定調査を行っています。先月、第3回の部会が開催されました。メンバーは,学識経験者及びライフライン関係機関の職員などで,調査方法・評価等に関する専門的な議論を行っています。
今回の地震被害想定では、東日本大震災クラスの地震や活断層による直下型地震など、宮城県内に大きな被害をもたらす4つのタイプの地震発生時に、各地でどれだけ揺れが生じるかを評価し、今後の防災対策に活用することを目的としています。下記の4つのタイプの地震による揺れの大きさの計算結果が示されました。震度分布図に、震災後に得られた最新の知見を盛り込み、県内の250m四方の区画ごとに震度を表示しています。
(1)M9クラスの大震災(東北地方太平洋沖地震)→広範囲で震度6強から6弱
(2)M8クラスの連動型(宮城県沖地震)→広範囲で震度6弱、一部で6強
(3)沈み込んだプレート内で発生する地震(M7.5)→広範囲で震度6強、一部で7
(4)活断層(長町‐利府線断層帯地震)→仙台圏を中心に震度6強、一部で7
また、今回の専門部会では、震度の色分けの一部(青や緑など)が安心材料と捉えられかねないと再考を求める意見が出たほか、震災後に累積した建物の傷みをどう評価するかが重要であるといった指摘もありました。今後12月の専門部会に向けて、津波に関する評価結果や、市町村単位での人的被害や建物被害、被災直後から数カ月後までの災害復旧シナリオを示すスケジュールになっています。
<2022年9月4日>避難情報について
9月1日は、1923年に関東大震災が発生した日であるとともに、暦の上では二百十日に当たり、台風シーズンを迎える時期でもあります。また、1959年9月26日には伊勢湾台風があり、その被害は戦後最大のものでした。このことがきっかけとなり、1960年に、災害に対する心構えなどを育成する目的で、9月1日が「防災の日」と制定されました。この防災の日(週間)にあわせて本日は、避難情報について改めて紹介したいと思います。
2019年5月末から以下の5段階に分けたレベルとして避難情報とともに提供されています(黒、赤、黄などの色別でも表示)。5が緊急安全確保、4避難指示、3が高齢者等避難、2が大雨・洪水・高潮注意報(気象庁)、1が早期注意情報(気象庁)になります。
https://www.bousai.go.jp/oukyu/hinanjouhou/r3_hinanjouhou_guideline/
「高齢者等避難」は、2016年台風10号で岩手県岩泉町のグループホームが被災し、入所者9名が全員亡くなる等の被害が出たことから、当時の「避難準備情報」という名称では切迫性が伝わらず、適切な避難行動がとられないという反省の下に決められました。避難する場合は緊急避難場所や安全な親戚・知人宅などに移動する「立退き避難(水平避難)」が望ましいですが、移動する時間がない場合や、洪水や高潮などで高層階が浸水しないと想定される場合は、上階への移動(垂直避難)や高層階に留まる「屋内安全確保」も有効です。
「緊急安全確保」とは避難指示、高齢者等避難の段階で避難できなかった場合や、状況が急激に切迫して安全な避難が難しくなった場合に緊急的に発令されます。これらの情報が出された際の避難のタイミング、避難先、避難ルートの確保を事前に確認しておくことが重要になります。
<2022年8月28日>日本・千島海溝沿い、M7以上で後発地震情報 年内開始か?
巨大地震が起きる可能性のある地域で、地震発生の状況によって事前情報(臨時情報)を出す検討が進められています。南海トラフ地震の想定震源域内やその周辺では大規模地震(M6.8以上)やプレート境界面で通常とは異なるゆっくりすべり等が観測された場合には、気象庁は臨時情報を発表し、南海トラフ沿いの地震に関する評価検討会を開催して情報を出します。同様の事前情報を日本海溝・千島海溝沿いの地震でも出すことが、今検討されているのです。内閣府は8月9日、北海道と東北沖の海溝沿いでM7以上の地震が発生した際に、より大きな後発地震への注意を呼びかける情報発信制度を年内にも始めると明らかにしました。津波が想定される地域の住民に前もって備蓄や避難経路を確認してもらうのが狙いで、事前避難は求めません。
気象庁がM7以上を観測した場合、2時間後をめどに内閣府と合同で記者会見。
後発地震への備えとして
①安全な避難場所・避難経路の確認
②すぐに逃げられる服装での就寝
③家具の固定
④必要に応じて知人宅などへの自主避難――などを呼びかけます。
企業に対しても、従業員の対応や食料・燃料など備蓄の確認を求めます。対象は北海道から千葉県までの太平洋側で、最大クラスの地震により津波高3メートル以上、震度6弱以上が想定される市町村になります。地震が発生しなければ、約1週間後に解除を発表。情報発信の頻度は2年に1回程度になると想定しています。
課題としては、M7は2年に一度の間隔で発生していること、注意として何を?平常時の活動は?津波避難に効果があるのか?事業者への保障はない中で実効性は?などが挙げられます。
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUF098EW0Z00C22A8000000/
<2022年8月21日>災害時でのエネルギー確保について
東日本大震災では、さまざまなエネルギーの供給に問題が発生しました。石油については、東北地方唯一の製油所であるJX 日鉱日石エネルギー株式会社(当時)の仙台製油所をはじめとする6製油所が被災するとともに、東北太平洋岸の油槽所のほとんどが出荷不能になりました。このため、在庫はあったにもかかわらず、港湾や道路の損壊などと相まって、被災地へ十分な石油を迅速に届けることができませんでした。また、ガソリンなどを取り扱うサービスステーション(SS)も、津波の影響で設備が被害を受けたことなどにより、東北地方を中心に多くの地域で営業を停止せざるを得ない状況となりました。現在、こうした教訓を踏まえ、災害時においても石油の安定供給が確保できるよう、さまざまな対策が導入されています。
https://www.enecho.meti.go.jp/about/special/johoteikyo/history6mirai.html
(1)石油備蓄法の改正
国内で災害が発生した際にも対応できるよう、備蓄を放出する要件を見直すとともに、災害時に石油元売り各社が系列の枠を超えて連携する「災害時石油供給連携計画」の届出制度を導入しました。
(2)製油所・油槽所の強じん化
石油コンビナートで、地盤の液状化や設備の耐震性能などの調査を行い、それに基づき①設備の耐震・液状化対策②設備の安全停止対策③他地域の製油所とのバックアップ供給に必要な対策などが実施されています。
(3)中核SSの整備
自家発電機を備え、災害発生時にはパトカー、救急車といった緊急車両に優先給油を行う「中核SS」を全国に約1600箇所整備しました。
このような被災時のエネルギー供給網の強じん化は、2016年に起こった熊本地震で活かされました。一方で、熊本市内など都市部の一部のSSでは、営業停止や渋滞による配送遅延が起こり、パニックによる過剰購入が発生しそうになりました。そこで、地域住民の燃料供給拠点となる「住民拠点SS」の整備も進めています。
石巻市は、平時については再生可能エネルギーで発電した電力を活用しつつ、災害時には再生可能エネルギーで電力を確保できるまちを目指し、復興公営住宅が集中立地する新蛇田地区や市内の小中学校に、太陽光発電・蓄電池・BEMSを組み合わせたエネルギーシステムの導入を推進しました。また電気の「見える化」を通じて環境意識・省エネを醸成できるような仕組みづくりも行っています。
<2022年8月14日>東北大災害研x石油連盟による防災WEBの紹介
石油連盟と災害科学国際研究所の連携による防災セミナーを企画し、防災関係の講義をWEBで発信しています。それぞれの活動や専門的な知見を活かし、社会の防災意識向上に貢献できればと考えております。
今回、コラボさせていただいた石油連盟は、国内の石油精製・元売会社、すなわち原油の輸入、精製、石油製品の全国的な販売を行っている企業の団体として創立された基幹的産業団体です。日頃から、石油の安定供給にむけて調査や普及活動に取り組んでおり、毎年定期的に各地域へ赴いて石油セミナーを開催してきましたが、コロナ禍の現在は、WEB版でのセミナーを継続しておられます。そうした中で、様々な災害にさらされる日本において、災害に対する知識を得ることは、災害時に正しい行動をとるために必要な準備であり、犠牲者を出さないという究極の目標のため、過去の災害の事例に学ぶことは、大切なことであるとの考えから、今回、防災WEBを企画したものです。
「防災の叡智を集め、高い意識を育む動画ポータルサイト」として、ナビゲータは私が務めており、「地震活動」「津波」「土砂災害」「火山活動」「災害情報」の5つのテーマの防災セミナーが公開されています。災害をしっかり理解していただき、命を、生活を守ることを第一とし、この防災セミナーを多くの方に視聴していただけたらと思っております。是非、ご覧下さい。
https://bousai-jyoho.jp
<2022年8月7日>津波避難フラッグ
今年は、県内各地の海水浴場で3年ぶりに海開きが行われました。菖蒲田海水浴場では、海開きを前に、清掃作業や津波を想定した避難訓練が行われました。津波避難を伝える目印として気象庁が普及を進める赤と白の格子模様の津波フラッグを使って避難の手順などを確認したということです。
令和2年6月から、海水浴場等で津波警報等が発表されたことを「津波フラッグ」によりお知らせする取り組みが始まりました。津波フラッグは、長方形を四分割した、赤と白の格子模様のデザインで、遠くからの視認性を考慮して、短編100cm以上が推奨されています。この津波避難フラッグ導入の背景として、東日本大震災での聴覚障害者の死亡率が、聴覚障害のない方の2倍にのぼり、聴覚障害者への情報伝達が課題となったことが挙げられています。その後、津波警報等を伝達する手段として、旗による視覚的な伝達が提案され、津波フラッグが開発されました。このフラッグを用いることで、聴覚に障害をお持ちの方や、波音や風で音が聞き取りにくい遊泳中の方などにも津波警報等の発表を知らせることができます。海水浴場や海岸付近で津波フラッグを見かけたら、速やかに避難を開始してください。
https://www.data.jma.go.jp/svd/eqev/data/tsunami_bosai/tsunami_bosai_p2.html
札幌管区気象台では、市町村や関係機関が津波フラッグを導入する際のガイドラインを設け、津波フラッグを用いた津波避難訓練や普及啓発を行う場合は、訓練への協力や資料提供などの支援を行っているということです。
https://www.jma-net.go.jp/sapporo/jishin/tsunami_flag.html
<2022年7月31日>京都の祇園祭が開催されました
3年ぶりに、日本三大祭りのひとつ京都の祇園祭が開催され、最大の見せ場となる山鉾巡行が7月17日、京都市中心部で行われました。新型コロナウイルス感染拡大の影響で2年連続中止となっていましたが、疫病退散を願い、豪華絢爛な23基の山鉾が荘厳に都大路を進みました。
災害・禍(わざわい)は残念ながら過去も繰り返し発生しており、被害を軽減するには、この経験と教訓を伝えることが大切です。その手法(防災文化)のひとつがお祭りであり、その代表が祇園祭になります。
平安時代、貞観11年(869年)に全国に疫病がはやり多数の死者が出ました。この疫病は、現世に恨みを残したまま亡くなった怨霊(おんりょう)の祟りであるとされました。そのため、牛頭天王(ごずてんのう)を祀り、疫病退散、無病息災を祈念した御霊会(ごりょうえ)が行われました。この御霊会が祇園祭の起源とされています。 はじめのころは、疫病流行の時だけ不定期に行われていましたが、円融天皇の天禄元年(970年)からは、毎年開催されるようになりました。 その間、保元、平治の乱に一時絶え、足利時代に再興、足利将軍・夫人らが観覧したことが記録に残っています。祇園祭は八坂神社の祭礼であり、毎年7月1日から31日まで、1か月にわたっておこなわれます。一般には、17日(前祭・山鉾巡行と神幸祭)と24日(後祭・山鉾巡行と還幸祭)その宵山が広く知られています。今年は、災害による損傷で江戸時代後期から参加できなかった「鷹山」が196年ぶりに本格復帰し、全34基が出そろうことになりました。
<2022年7月24日>梅雨明けから約1ヶ月が経ちました
仙台管区気象台は、先月6月29日、東北南部が梅雨明けしたとみられると発表しました。平年より25日早く、昨年より17日も早い梅雨明けで、統計開始以来、最も早い梅雨明けです。東北地方での6月中の梅雨明けは初めてになります。さらに、期間も、6月15日の梅雨入りからわずか14日間と最短を更新しました。(これまでの最短は、2011年の18日間)。
その後厳しい暑さが続き、特に、梅雨明け前後の6月27日の週には、各地で35度を超える猛暑日になりました。連日の猛暑で熱中症による救急搬送が激増し、6月に熱中症で救急搬送された人が初めて1万人を突破し、過去最多を記録しました。コロナ禍でのマスク着用も一因となり、多くの児童が救急搬送される事案も複数発生しているようです。厚生労働省は、熱中症防止の観点から、屋外でマスクの必要のない場面では、マスクを外すことを推奨しています。
さらに、台風4号が長崎に上陸し、日本中のあちこちに局地的な豪雨をもたらしました。"暑さ"だけではなく豪雨や極寒など、極端な気象現象が頻発しています。
気象庁の3か月予報では6~8月の気温が、北日本で平年より高く、東日本、西日本で平年並みか高い予想となっています。暑い夏となりますので、暑さへの備えは早めに進めておくようにしましょう。
<2022年7月17日>東北大学創立115周年・総合大学100周年記念事業「東北大学フォーラム2022」の開催の紹介
東北大学は創立115周年になりますが、あわせて、文系学部も参画した総合大学になり100周年の節目を迎えました。今年度は「東北大学統合報告書2021」を初めて刊行し、大学での様々な活動をさらに知っていただく活動も始まりました。
その一環で、8月4日に「東北大学フォーラム2022」を開催することになりました。このフォーラムは、卒業生をはじめ、一般市民の方々を広く対象としており、本学の取組や研究成果を最新情報とともに認識していただき、今後の活動への理解促進・応援を呼びかける機会となることを目的としています。
開催方法は、国内外から広く参加できるよう対面会場からのオンライン配信を行うハイブリッド開催とし、あらゆる地域からの参加を可能にしたいと思います。このフォーラムの主な登壇者は「東北大学統合報告書2021」で紹介された活動の代表者になります。総長挨拶の後、下記の3つのテーマレクチャーを行います。
1「護る まもる」:世界の安全を護る東北大学の災害科学プロジェクト
2「拓く ひらく」:次世代放射光がつくる社会
3「繋ぐ つなぐ」:東北大学による国際秩序への貢献
申込締切は7月20日(水)17時までとなっていますので、東北大学のWebサイトからお申し込み下さい。
https://www.jomo-news.co.jp/articles/-/129782
<2022年7月10日>災害ケースマネジメントについて
今、「災害ケースマネジメント」が注目され、内閣府でも検討が行われています。災害ケースマネジメントは、2005年のハリケーン・カトリーナで甚大な被害を受けたアメリカ合衆国で、被災者支援のため初めて実施されました。わが国では、2011年に発生した東日本大震災により、5万を超える世帯が大規模半壊以上の被害を受けた宮城県仙台市において、初めて本格的に導入されました。当初、仙台市では、応急仮設住宅の入居者に対し、書面によるアンケート調査を実施し、被災世帯の課題把握に努めたものの、書面調査のみでは、被災者が抱える生活の再建に向けた詳細な課題を掴むことができませんでした。このため、各世帯への個別訪問等を実施し、被災者の課題を関係各所と共有し、連携して対応することにより、 早期の生活再建を進めていきました。こうした東日本大震災の経験等を踏まえ、2016年に発生した熊本地震により被災した熊本県では、被災者が生活再建に向けて安心した日常生活を送ることができるよう、見守りや健康・生活支援、地域交流の促進等の総合的な支援を行う「地域支え合いセンター」を被災市町村に設置し、被災者の個々の相談や困りごとに対応しようとする取組を全県的に展開しました。
内閣府では、こうした地方公共団体における取組の広がりを踏まえ、2021年(令和3 年)5月に、防災基本計画に「国及び地方公共団体は、被災者が自らに適した支援制度を活用して生活再建に取り組むことができるよう、見守り・相談の機会や被災者台帳等を活用したきめ細やかな支援を行うとともに、被災者が容易に支援制度 を知ることができる環境の整備に努めるものとする。」との記載を追加しました。
https://www.bousai.go.jp/taisaku/hisaisyagyousei/case/index.html
東北地方では、東日本大震災以降も余震や洪水などで被災が続いています。特に、3月16日の震度6強地震から3カ月が経ちましたが、数年の間に何度も災害に見舞われる被災地では、復興への資金や気力に大きなダメージを受けた人も多いと報告されています。「多重被災」の実態と課題、そして「誰も取りこぼさない」と活動する人たちのなかでも、この災害ケースマネジメントが注目されています。
<2022年7月3日>気仙沼市唐桑「津波体験館」について
気仙沼市唐桑町の「唐桑半島ビジターセンター」内にある日本初の津波体験施設「津波体験館」が、6月26日に閉館しました。私が大学院の学生時代に開館した施設であり、映像の中で紹介されたチリ津波のコンピュータグラフィックを提供させていただきました。このたび、老朽化したビジターセンターの改修に伴い、津波体験館が取り壊されることになりました。過去の津波被害を後世に伝え、東日本大震災の教訓も発信してきた貴重な施設が38年の歴史に幕を閉じることになります。
ビジターセンター「津波体験館」は1984年に宮城県が整備したもので、1983年の日本海中部地震津波で多くの犠牲者が出てしまい、津波の教育や啓発の必要性が叫ばれていました。独立した建物で48席を有し、正面の壁や周囲の鏡に津波映像を映し出して没入感があり、映像と連動して座席が揺れたり風が吹き付けたりする設備もあるなど、五感でリアル感を高める仕組みで、当時としては被災時の状況を疑似体験できる画期的な施設でした。来館者数は、ピークの1991年度は約6万人でしたが、徐々に減少し、コロナ禍の影響もあり、20年度は約1300人、21年度は約2000人でありました。
新しいビジターセンターはアウトドアを楽しむ中核施設として市が整備し、来春オープン予定です。体験館の役割も継承しようと、仮想現実(VR)で津波の脅威や発生メカニズムを伝える展示を検討しているそうです。
https://kahoku.news/articles/20220617khn000004.html
<2022年6月26日>福島国際研究教育機構について
創造的復興の中核拠点として、研究開発、その成果の産業化及び人材育成の中核となる「福島国際研究教育機構」の創設を盛り込んだ改正福島復興再生特別措置法が5月20日の参院本会議で可決、成立しました。機構は、東京電力福島第1原発事故の被災地域に設ける研究拠点の運営主体となり、研究者の養成など人材育成も担うことになります。ロボット開発や再生可能エネルギーの活用のほか、原子力災害に関するデータや知見の集積といった研究を通じ、産業競争力の強化を目指し、原発事故で避難指示が出ていた地域を対象に、今年9月までに立地場所を決定、2023年4月に設立予定です。
以下が機構の重要な役割(機能)になります。
1)研究開発機能
1ロボット、2農林水産業、3エネルギー、4放射線科学・創薬医療、放射線の産業利用、5原子力災害に関するデータや知見の集積・発信の5分野の研究開発を実施
2)産業化機能
機構発ベンチャー企業への出資等を通じ、産学連携体制を構築。最先端の設備や実証フィールドの活用、大胆な規制緩和等
3)人材育成機能
連携大学院制度を活用。IAEA等と連携し、廃炉現場にも貢献し得る国際研究者を育成高等専門学校との連携。小中高校生等が先端的な研究に触れる多様な機会を創出。企業人材・社会人向けの専門教育やリカレント教育を通じ産業化に向けた専門人材を育成
https://www.mlit.go.jp/sogoseisaku/point/content/001474331.pdf
<2022年6月19日>新規制基準と深層防護
国の原子力規制委員会は、原子炉等の設計を審査するための新しい基準を作成し、その運用を開始しています。東京電力福島第一原子力発電所の事故の反省や国内外からの指摘を踏まえて策定されました。いままでの基準の主な課題・問題点としては、大規模な自然災害の対策が不十分であり、十分な対策がなされてこなかったこと、新しく基準を策定しても、既設の原子力施設にさかのぼって適用する法律上の仕組みがないことなどが挙げられていました。今回の新規制基準(2016)は原子力施設の設置や運転等の可否の判断等に使われます。
https://www.nsr.go.jp/activity/regulation/tekigousei.html
新規制基準では、「深層防護」を基本とし、共通要因による安全機能の喪失を防止する観点から、自然現象の想定と対策を大幅に引き上げ、自然現象以外でも、共通要因による安全機能の喪失を引き起こす可能性のある事象(火災など)について対策を強化することなどを示しています。例えば、軍事戦略や情報システムのセキュリティ対策などでも導入され、原子力安全に対しては多層の防護策を組み合わせることで、全体としての防護の信頼性を最大限に向上させています。国際原子力機関(IAEA)の原子力安全専門家による報告書INSAG-10※4では、防護レベルをレベル1からレベル5までの5層に設定しています。多種の防護策を組み合わせることで、全体としての信頼性をできるだけ向上させることが大切です。
https://www.mri.co.jp/knowledge/column/20190605.html
<2022年6月12日>学校安全総合支援事業~宮城県での取組事例
宮城県では、文部科学省の委託を受け、石巻市などをモデル地域として本事業を実施しました。そのひとつが緊急地震速報の活用になります。
地震による初期微動(P波)と主要動(S波)の伝達速度の差を利用し、大きな揺れを伴うS波が到達する前に地震の発生を知らせる情報が、緊急地震速報です。最大予測震度が5弱以上である場合に発表される一般向けの緊急地震速報(警報)がありますが、マグニチュードが3.5以上または最大予測震度が3以上である場合等に発信される高度利用者向けの緊急地震速報(予報)があります。本事業で導入されたのは後者であり、「緊急地震速報発報端末地震の見張りTouch」(株式会社センチュリー社製)というもので、高度利用者向け緊急地震速報を受信し、登録した設置場所ごとの情報を提供するほか、次のような特長があります。
・放送設備との連動;緊急地震速報を受信すると、到達までの時間と予測される震度を画面に表示し、同時に音声で通知。さらに、設定震度以上の地震が予想される場合は、自動的に校内放送設備を立ち上げ、音声により通知する。
・シミュレーション訓練機能;任意の震度と到達時間を設定して訓練することができる。また、過去の地震データが登録されており、再現シミュレーションで訓練をすることができる。
・津波情報の受信;気象庁から津波・地震情報が発表された場合は、緊急地震速報と同様に画面、音声、校内放送で通知する。
緊急地震速報受信機設置校では、これを活用した避難訓練の実施回数は年々増えており、平均回数は2.7回(前年度2.4回)でした。多い学校では年7回実施しているところもありました。緊急地震速報が流れることにより、教師の指示を待つことなく、自分で判断し身を守る行動が取れるようになってきているそうです。また、「地震」を想定した避難訓練はもちろんのこと、「地震・津波」の複合災害を想定した訓練を実施した学校が多くみられました。さらに、原子力発電所の再開を見据え、「地震・原子力災害」を想定した訓練に取り組む学校が増えてきていると報告されています。
https://www.pref.miyagi.jp/soshiki/hotai/anzen-sougou-shien.html
<2022年6月5日>ココヘリ(COCOHELI)の活動紹介―救命活動の新しい動き
全国の山岳で遭難者やケガをした人を早期発見するための会員制捜索ヘリサービス「ココヘリ(COCOHELI)」を紹介させていただきます。ライフハザードカンパニー(命を守る企業)」をコンセプトに掲げるAUTHENTIC JAPANという民間の会社が実施されています。
https://project.nikkeibp.co.jp/onestep/coolproduct/00012/
背景として、海や山でのレジャーなどは人気があり盛んなのですが、事故や体調を壊し遭難する場合があります。捜索は大変な作業であり、費用も多額になります。警察庁によると、2020年の山岳遭難の発生件数は2294件(1日に約6件)、死者・行方不明者は278人、負傷者974人、無事救助1445人となっています。山での遭難が発生した場合、まず家族の要請を受けて警察などの公的機関が一次捜索を行いますが、その後の民間の捜索は有料であり、特に、捜索のためのヘリコプターのチャーター費は、1分1万円にもなります(2時間飛ぶと120万円)。万が一、保険や山岳遭難対策制度に入っていないと、捜索費用の負担は家族がすべて負うことになります。
こうした中、登山者が遭難した時の命を守るための会員制捜索ヘリサービス「ココヘリ(COCOHELI)」が始まりました。入会金3300円、年会費4015円を支払うと、会員証でもある発信機が渡されます。万が一の時、この発信機からの電波を頼りに捜索されるのです。ほかに会員特典として、ヘリコプターによる捜索フライトが3回まで無料、他の登山者への賠償責任(最大1億円)やアウトドア用品の損害補償(最大3万円)も付いている。現在の会員数は4万人になり、将来は20万人を目標としています。このサービスの重要な点は、対象の位置の特定で、GPSやBluetoothは精度や消費電力の点で課題がありましたが、920MHz帯の電波が一般に使えるようになったことで、障害物があっても回り込んで遠くまで届くようになりました。さらに消費電力とバッテリーの長寿命化も実現できました。このサービスは、今後は、高齢者や子どもたちの見守りに役立つサービスに繋げられるそうです。
<2022年5月29日>石巻市の震災遺構 旧門脇小学校を訪問しました
先日、石巻市の震災遺構 旧門脇小学校を訪問、大川小学校も含めた総括責任者である大須武則さんからもご説明をいただきました。津波火災の痕跡が残る旧門脇小学校は、東日本大震災をめぐる事象と教訓を後世に伝え継ぐとともに、災害から命を守るための避難行動や、平時における訓練の重要性、地域を知ることの大切さを学ぶことを目的に公開されました。
校舎は老朽化が激しく,東西の建物の一部は撤去され、基礎の部分だけが残っています。本校舎では、真横に新設した外部通路から焼損した教室などを見学できます。校舎裏の特別教室では、児童や教職員の証言や市内の被害状況などがパネルや映像で紹介されています。校舎脇の体育館には市内の仮設住宅を移築、消防団の被災車両も展示されているなど、たいへん充実した遺構および伝承の施設となっています。
この展示については、石巻市震災伝承推進室主幹の高橋広子さんが携わっており、彼女の文書と画も展示されています。以下は、2月19日の読売新聞「遺構を津波伝承の聖地に…識者インタビュー」記事の一部引用です。
https://www.yomiuri.co.jp/local/miyagi/news/20220219-OYTNT50048/
展示全体を通じて心がけたのは、「みなさんも自分に置き換えながら一緒に考え、行動につなげてほしい」という姿勢で、意見を表明するというより、問いかけ、各自に感じてもらう伝承施設を目指したということです。
<2022年5月22日>宮城県での津波浸水想定図について
5月10日に、津波防災地域づくり法に基づく、宮城県での津波浸水想定図が公表されました。同法は震災の教訓を踏まえ、都道府県に対し、震災時より潮位が約1メートル高い満潮時に防潮堤が破壊されるなど、最悪の条件下で津波浸水想定の設定を義務づけるものです。内閣府が2020年4月に日本海溝・千島海溝巨大地震の想定を示したのを受け、岩手県が3月29日、宮城県は5月10日に公表しました。公表に当たってはいくつかの質問がありました。復興まちづくりの中で再建された地域への影響、浸水区域の拡大に伴う避難場所や避難所、ハザードマップの見直しなどです。東日本大震災で起きた津波は、当時の想定を大きく上回るものであり、多くの犠牲と被害を出してしまいました。今後、「想定外」を繰り返さないためには、最新の知見や情報を取り入れて想定を見直すことが必要になります。今回、これらの検討結果が公表されたことになります。
震災後、沿岸市町で復興計画の策定当時、最新の知見としての日本海溝や千島海溝などでの巨大地震による津波が検討されている最中であったことから、最大クラスの津波については、東日本大震災での津波の実績が最も拠り所となる情報であり、この津波を前提とした復興計画になりました。今回、様々な悪条件を前提に最新のデータ・解析手法を用いて津波浸水想定の結果が得られました。この想定結果には、復興まちづくりで造成された箇所も浸水区域に入ることが一部で確認されていますが、今回の最新の知見で検討されたものであり、当時の結果を否定するものではありません。今回の浸水想定は、東日本大震災と同じ被害を繰り返さないよう、確実で適切な津波避難計画や対策の見直しのために活用していただきたいと考えております。
<2022年5月15日>東松島市よりパラリンピック縄文式聖火台が寄贈されました
昨年開催された東京オリンピック・パラリンピックでは、復興にも関連した様々な取組が企画、実施されましたが、その1つを紹介させていただきます。
宮城県と東松島市は、東京パラリンピック聖火リレーの関連イベントで使う聖火台を縄文土器で作るワークショップを奥松島縄文村歴史資料館で行いました。元東北歴史博物館上席主任研究員の菊地逸夫さんが講師を務め、東松島市内の中高生14人が参加して作られました。東松島市の里浜貝塚から出土した、高さ・直径が50センチ程の大きさの縄文土器(5000年ほど前のもの)を複製したものです。一方、東北大学の多田千桂准教授は、東日本大震災の「復興アクション+100」の活動として、オリ・パラの聖火を自分たちで作ったバイオガスで燃やしたいという夢を実践され、この活動は全国に広がっていきました。パラリンピックの宮城県集火式では、このバイオガスで炎を縄文式聖火台に灯すことができました。9市町(仙台市、石巻市、気仙沼市、角田市、岩沼市、東松島市、大崎市、亘理町、加美町)の火を集め「宮城県の火」として東京に送られたのです。
この縄文式聖火台が、4月15日に東北大に寄贈され、災害科学国際研究所の玄関ホールに展示されています。縄文土器は、その昔、魚介類を茹でてスープにしたときに使われたと聞いております。聖火台として作られたこの縄文土器も、今後展示だけでなく、バイオガスの炎をつけたり、料理に使ったりという体験イベントを開催したいと思います。人間が自然とともに生きてきた時代に思いをはせ、持続可能で、災害にも強い暮らしの実現に向けて行動する、学びの活動に活用させていただければと期待しております。
東北大学災害科学国際研究所NEWS:https://irides.tohoku.ac.jp/media/files/_u/topic/file/20220415_report.pdf
<2022年5月8日>トンガ噴火による津波の現状について
トンガ諸島での海底火山噴火によって日本で異常潮位(上昇)が観測されましたが、これについて、気象庁の有識者勉強会は4月15日に報告書案をまとめました。噴火で発生した気圧の波(空振)が要因だった可能性があるとしています。私もメンバーの1名として参画させていただきました。今回の津波は、たいへん不思議な津波でした。通常の到達予測時間より早かったこと、途中の経路にあたる島々では津波規模が小さかったのですが、8000km離れた日本や他の地域では津波が増幅し、警報レベルになりました。
今年1月15日午後1時(日本時間)ごろにトンガで発生した噴火によって大気の乱れが生じ、これが空振として約8000km 離れた日本へ伝わってきました。気象衛星「ひまわり」の画像分析や気圧観測から、空振は午後8時40分ごろに本州付近に到達していることが確認されました。この気圧上昇から30分~1時間ほど遅れて、国内で潮位の変化が観測され始めました。空振で海面が押され、その後徐々に振幅を大きくさせていました。通常の地震による津波の想定到達時間よりも3~4時間ほど早く観測されました。ただし、噴火規模と空振に初動の相関関係は見られるものの、現時点で日本での潮位変化の大きさを予測するのは難しく、なぜ、警報レベルまで一部の地域で大きくなったかは解明されていません。今後、津波の増幅過程については、大気により重力波や海の中での内部波、沿岸(特に湾内)での共振現象などについても関係を明らかにしていく必要があります。まだメカニズムは解明されていませんが、当面は海外の観測点で潮位変化を監視することが重要であります。
参考朝日新聞
https://www.asahi.com/articles/ASQ3H6HL4Q3HUTIL024.html
https://www.asahi.com/articles/ASQ284G74Q28UTIL00X.html?iref=pc_rellink_04
<2022年5月1日>東北新幹線の地震による脱線について
3月16日、23時34分と36分の2回にわたり、福島県沖で地震が発生しました。東日本大震災にも関係した地震になります。この地震で、宮城、福島で震度6強が観測されました。国内で震度6強を観測する地震は昨年2月13日に同じ福島県沖で発生した地震以来です。この地震により、建物被害、停電、断水などの影響がありましたが、東北新幹線の脱線が非常に特徴的でありました。
東北新幹線は宮城県内を走行中、17両の車両のうち16両が脱線し、乗客6人がけがをされ、レールのゆがみや架線の切断など合わせて1000か所の被害が確認されました。一部区間が不通となりましたが、復旧作業が進み4月14日から全線での運転が再開しています。大規模な脱線でしたので、現在、国の運輸安全委員会などが原因の究明に向け調査を実施しています。新潟県中越地震の経験から、新幹線の車両には台車に逸脱防止ガイドを設置し、脱線した場合でも車両が大きく逸脱しない対策をしていましたが、今回これだけでは十分ではないことがわかりました。この脱線は、地震の揺れを検知した列車が停止する直前か停止した直後に起きたとみられ、恐らく、23時34分の地震で緊急停車し、次の36分の地震で脱線したものと考えられています。通常、車両が横ずれして脱線した際には車輪が引きずられて地面につく傷があるはずですが、一部の車両の周辺では確認されていないようです。このような周辺の状況や運転士の証言などから、列車は脱線した当時、下から突き上げる揺れなどで一部の車両が飛び上がるように浮いてレールから外れた可能性のあることが示唆されています。今後の詳細な脱線状況の解明と、さらなる対策が求められています。
参考NHKニュース:https://www3.nhk.or.jp/news/html/20220414/k10013582121000.html
<2022年4月24日>日向灘・南西諸島で巨大地震の恐れ 今後30年長期評価を公表
https://www.jishin.go.jp/main/chousa/kaikou_pdf/hyuganada_2.pdf
3月25日、政府の地震調査委員会は、日向灘と南西諸島海溝周辺において、今後30年以内に発生する可能性がある地震の長期評価を公表しました。
M7.0クラス規模の地震が30年以内に同エリアで発生する確率について、宮崎県沖にある日向灘での発生確率を「80%」、沖縄・与那国島周辺は「90%」以上と評価し、高い水準であることを示しました。長期評価の公表は2004年以来18年ぶりで、東日本大震災の発生を受けて再度評価をし直しました。日向灘や南西諸島では、フィリピン海プレートが南東方向から日本列島の下に沈み込んでいます。このプレートの境界やプレートの内部では、蓄積されたひずみを解放するために大きな地震が起きてきました。海溝型地震と呼ばれ、東日本大震災や南海トラフの地震なども同じ種類の地震です。
【日向灘】を震源域としたM8クラスの巨大地震の発生は、これまでは想定されていませんでした。しかし江戸時代1662年10月31日、日向灘付近では史上最大の被害をもたらした地震が発生しています。宮崎県沿岸で多くの家屋が倒壊し、城も破損したとする記録があります。さらに、津波は宮崎沿岸では高さが4~5mに達し、延岡から大隅の沿岸を襲ったということです。
【南西諸島周辺及び与那国島周辺】で17世紀以降現在までに発生した巨大地震は、1911年の喜界島地震(M8.0)が知られています。この地震は津波を伴い、多くの死傷者が出ました。
【南西諸島周辺のひとまわり小さい地震】は、気象庁震源カタログが整備されている1919以降、M7.0以上の地震が4回発生、【与那国島周辺のひとまわり小さい地震】は、1919年以降、M7.0以上の地震が12回発生、1966年の地震(M7.3)では与那国島で死傷者を伴う被害が発生しました。
同委員会の平田直委員長(東京大学名誉教授)は、「海底の断層でも地震が起き、津波が来ることを認識してほしい」とのこと。この評価を受けて、西日本エリアでの日頃からの地震への備えを今まで以上に推進すると共に、南海トラフ巨大地震だけでなく、日向灘や南西諸島の地震にも警戒が必要です。
<2022年4月17日>ArcDR3展覧会
ArcDR3(Initiative Architecture and Urban Design for Disaster Risk Reduction and Resilience Initiative)が都市建築研究の最先端を紹介する展覧会の紹介です。
https://www.regenerativeurbanism.org
背景としては、東日本大震災を機に開催された第3回国連防災世界会議(2015年)で採択された「仙台防災枠組2015-2030」が目指す災害に対応できる社会に向けて、UCLA xLABと東北大学災害科学国際研究所IRIDeSが中心となり、環太平洋大学協会と連携し、同地域の11大学が参加した国際共同プロジェクトで、災害に対応する建築・都市デザインを提案する展覧会「リジェネラティブ・アーバニズム展~災害から生まれる都市の物語」が東京で開催されています。
会期:4月9日(土)~4月24日(日)12:00~19:00
会場:日本橋室町三井タワー「室町三井ホール&カンファレンス」
リジェネラティブ・アーバニズムは、気候変動に伴い急増する災害の脅威によって生み出された都市デザインの新しい考え方です。 現状維持や現状復帰を基本とした従来の防御的な災害対策ではなく、回復力(レジリエンス)をテーマとする都市開発の新たなアプローチを求めています。本展では、水成都市、群島都市、時制都市などの「7つの都市の物語」が「リジェネラティブ・アーバニズム」を実践する都市へと誘います。そこで紹介されるのは、災害や気候変動の複合的な危機に対応する革新的な都市デザインの数々です。会場では、本展のために収集した災害のデータや映像とともに、世界各国からのデザイン提案を通じて、災害のリスクとともに生きる私たちが目指すべき、自然と調和する新しい都市のあり方を考えます。
来年2023年は、関東大震災から100年の節目を迎えます。この震災から東京の都市構造が大きく変化していきました。
<2022年4月10日>災害伝承と防災教育について
3月11日に開催された追悼行事の中から、気仙沼市での取り組みをご紹介します。昨年までの追悼式から形を変えての実施となりましたが、犠牲者の冥福を祈り、教訓伝承への誓いを新たにできた機会となったと思います。
http://sanrikushimpo.co.jp/2022/03/12/6729/
気仙沼中央公民館を会場に「追悼と防災のつどい」が開かれ、自由献花を受け付けたほか、「震災伝承と防災教育」を考える発表や資料展示などが行われました。菅原茂市長は「震災で犠牲になった方々に心から哀悼の誠をささげる。慰霊と追悼は最も大切だが、経験を語り継いで災害に強いまちづくりにつなげることも重要。8月6日を平和を考える日とした広島市にならい、3月11日を防災を考える日にしたい」とのあいさつがありました。この後、基調講演を担当させていただきました。震災前から気仙沼の皆様とは様々な取り組み(津波監視システム、地区防災計画、避難訓練、事前復興計画など)を考え実施させていただきましたが、3.11の被害は大変に大きなものとなってしまいました。年月の経過に伴って記憶が薄れつつあり、次の災害時に命を救うためにも、教訓伝承が重要であると述べさせていただきました。
パネルディスカッションでは、鹿折中学校や気仙沼向洋高校が取り組む防災教育や伝承活動の様子が紹介されました。活動を通して、「伝える」能力の向上、コミュニケーション能力の向上、郷土愛の醸成、自己肯定感を高められるなど、得られるものが大きいとの発表が印象的でした。展示コーナーでは、東北大学による津波のコンピューターグラフィック表示などの公開、NHK関連財団によるワークショップなどもありました。
<2022年4月3日>Date fm「サバ・メシ防災ハンドブック2022」
東日本大震災から11年となった3月、11冊目となる「サバ・メシ防災ハンドブック2022」を発行しました。今回も「そだてようBOSAIの種」のテーマのもと、さまざまな情報を掲載しています。防災にも役立つアウトドアの知識や、「ペットと防災」について考える記事など、新たな視点で防災・減災について考えることのできる内容になっています。身近な防災について考える「防災ワークブック」は今年も掲載。いろいろな視点から防災・減災について考えられますので、日頃の備えとしてぜひご活用ください。大きさはA5サイズ、全48ページです。
「サバ・メシ@アウトドア」では、井上崇アナウンサーがアウトドアに挑戦、タープを立てる、暖をとる、空き缶で飯を炊く、メスティンでつくるサバメシ(ミネストローネ、肉まん、オートミール)など、アウトドア用品を災害時に役立てる実体験を紹介。また、今回の座談は、「BOSAI×ロボット」をテーマに福島ロボットテストフィールドで開催。東日本大震災で活躍したロボット技術、進化を続けるロボット技術、福島ロボットテストフィールドが果たす役割など、未来につながるロボット技術について話し合っています。
ハンドブック入手方法等は、こちらでご確認下さい。
サバ・メシ防災ハンドブック2022 | Date fm エフエム仙台
ダウンロードも可能です。
<2022年3月27日>東京海上日動の防災・減災情報サイトの紹介
https://www.tokiomarine-nichido.co.jp/world/egao/
地震、津波、風水害、火山の噴火、感染症。このサイトでは防災・減災に役立つ知識が紹介されています。
① 災害への対応
災害が発生した時に、一番大切なことは自分の「命を守りぬくこと」です。災害による被害を大きくするのも小さくするのも、私たち一人ひとりの認識や備えにかかっています。まず災害について知り、そしてするべきことを考えていきましょう。
② 災害への備え
大地震や豪雨などの自然現象は、人間の力ではくい止めることはできません。しかし、災害による被害は、私たちの日頃の備えによって減らすことが可能です。「自分でできること」「家族でできること」などについて考え、いつ起こるかわからない災害に備えておきましょう。
~安心家の防災訓練~
実際に行われている防災・減災の活動を紹介します。自分の住んでいる地域以外ではどのような災害への取り組みがあるのかを参考にしてみましょう。
防災まち歩きシミュレーション (室内外の危険な場所をチェック)
https://www.tokiomarine-nichido.co.jp/world/egao/sonae/escape-sim.html
安心家の防災道場など、アニメーションを駆使して紹介されています。
https://www.tokiomarine-nichido.co.jp/world/egao/bousai-dojo/
<2022年3月20日>3月16日深夜に発生した福島県沖での地震
3月16日23時34分と36分の2回にわたり、福島県沖で地震が発生しました。それぞれの地震のマグニチュードは、6.1および7.4になります(速報値のM7.3から暫定値のM7.4に更新)。震源の深さは57km、地震のメカニズムは西北西ー東南東方向に圧力軸を持つ逆断層型とみられます。11年前の東日本大震災の際の地震にも関係した地震になります。この地震で、宮城、福島で震度6強が観測されました。国内で震度6強を観測する地震は昨年2月13日に同じ福島県沖で発生した地震以来です。今回の地震はこの極近傍で発生しています。死者4人(17日に3名に修正)多数のけが人、火災、建物被害などが生じました。さらに、東北新幹線では走行中の車両が白石市付近で脱線しました。復旧までには時間がかかりそうです。また、関東、東北地方で一時計約220万戸の大規模な停電が発生。東京電力管内は17日未明に解消されましたが、東北電力管内では同日午前11時25分時点で、宮城、福島両県の計約4600戸で停電が続いていました。
https://www.jiji.com/jc/article?k=2022031700280&g=soc
気象庁は23時40分、福島県と宮城県に津波注意報を発表しました。宮城県の石巻港では17日午前2時14分に30cm、仙台港と福島県の相馬市では同日未明にそれぞれ20センチの津波が到達したと報告されました。気象庁は同日午前5時に津波注意報を解除しましたが、5時間以上も続いたことになります。
揺れの強かった地域では、地震発生から1週間程度、最大震度6強程度の地震に注意してください。特に今後2~3日程度は、規模の大きな地震が発生することが多くあります。
<2022年3月13日>新刊の紹介「災害報道とリアリティ」
災害情報学会の論文である、東日本大震災の津波来襲時における社会的なリアリティの構築過程に関する一考察~NHKの緊急報道を題材とした内容分析~などをまとめた「災害報道とリアリティ~情報学の新たな地平」が、2月に関西大学出版部から出されました。著者は、近藤誠司先生で現在、関西大学社会安全学部准教授です。災害情報論、災害ジャーナリズム論が専門で、2021年度ゼミで参加した「ぼうさい甲子園」では奨励賞を受賞されました。
以前はNHKでディレクターを務め、NHKスペシャル「メガクエイク」というシリーズを立ち上げ、担当した番組が「内閣総理大臣賞」を受賞されましたが、その翌年に東日本大震災が起きたのです。ご自身は、巨大な災害が起き得ることのリアリティを感得できていなかったことを述べられています。頭の中ではわかっているけれども、それを本当には信じていなかったこと、「知と信の乖離」があったことを反省点として、現在、研究・調査・教育・実践に真摯に取り組んでおられます。
特に、東日本大震災では、大勢の人が、強く長い揺れを感じたあとで、さらに津波警報などの危機を知らせる情報を手にしたにもかかわらず、適切な避難行動をとることができませんでした。これは、今すぐに避難しなければならない緊急事態であるということを、津波襲来までの限られた時間の中で、ともに認識していなかったと考えておられます。書籍の中では、NHK・民放の映像内容分析を実施、課題として、放送の枠組みが「東京中心」に組み立てられており、地域でのローカルな情報は必ずしも十分ではなかった。直接呼びかけるのではなく、東京に、現場の情報を報告する役割に専念していたと報告しています。場合によっては、「視聴者の皆さん、家でテレビを見てないで、早く避難してください。避難した先で落ち着いてから、ラジオなどで新しい情報をえるようにしてください」と呼びかけるなどの発想が重要であると述べています。
<2022年3月6日>3月11日の追悼式や防災の集いについて
東日本大震災で被災し、例年3月11日に追悼式典を続けてきた宮城県の沿岸13市町のうち、石巻、東松島の3市を除く11市町が今年は開催しないことがわかりました。大半が献花台の設置にとどめ、来年以降も同様とするとしています。
一方、岩手、福島の両県では継続する自治体が大半で、震災10年を境に被災自治体の対応が分かれました。河北新報社が1月下旬、式典を開いてきた被災3県沿岸自治体を取材したもので、岩手は7市町のうち6市町、福島は10市町のうち9市町が今年も例年通り実施し、残る大船渡市と福島県楢葉町は「検討中」と答えています。政府主催の追悼式が昨年で最後となり、宮城で式典を開催しない自治体も多くが10年の「節目」を過ぎたことや参列者の減少を理由に挙げます。
https://kahoku.news/articles/20220205khn000041.html
その中、気仙沼市は「追悼と防災のつどい」に改め、震災伝承と防災教育をテーマに専門家の講演やパネル討論を予定しています。
講 演 「震災伝承と防災教育- 教訓を活かした地域づくりと人材育成のために」/ 今村文彦教授(東北大学災害科学国際研究所 所長)
14:46~14:50 黙祷 献花 サイレン吹鳴にあわせ1分間の黙祷
パネルディスカッション「震災伝承と防災教育」
モデレーター:東北大学災害科学国際研究所 佐藤翔輔准教授 、気仙沼市菅原茂市長
パネリスト:向洋高校、鹿折中学校(菅原校長+生徒)、震災遺構・伝承館(熊谷副館長):気仙沼市(阿部危機管理監)
<2022年2月27日>みやぎ地域防災のアイディア集~持続可能な防災まちづくりのために~
宮城県では、災害科学国際研究所と連携し、平成29年度から令和2年度までの4年間にわたり、「自主防災組織育成・活性化支援モデル事業」を実施する中で、様々な自主防災活動の支援に取り組みました。その成果を取りまとめた報告書が昨年出されました。4年間で13市町の18モデル地区が取り組んだ事例をテーマ別に分類・整理したもので、それぞれの自主防災活動の中で得られたたくさんのアイディアが詰まっています。多くの方々に活用していただき、自主防災組織の更なる活性化や新たな自主防災組織結成の一助としていただければと思います。下記HPから資料を入手できます。
https://www.pref.miyagi.jp/soshiki/bousai/miyagitiikibousai.html
01 自主防災組織の体制づくり
02 災害危険の把握
03 避難行動の体制
04 安否確認の体制
05 防災資機材の整備
06 避難所運営
07 防災訓練
08 住民参加・取組の促進
09 人材育成
10 活動資金の確保
11 活動のレベルアップ
<2022年2月20日>水産業関係の復旧・復興について
被災3県の生産設備は概ね復旧しているものの、水産業には課題が残っていると言われています。そのため現在も、被災地の中核産業である水産加工業の販路開拓・加工原料転換等を支援事業が実施されています。東日本大震災 水産業の被害状況は以下のHPに紹介されています。
https://www.maff.go.jp/j/pr/aff/1105/spe1_02.html
巨大地震のあとに大津波が何度も押し寄せたことから、太平洋沿岸の漁港、漁村など、産業や生活の基盤に甚大な被害が発生しました。東北を中心に全国で300を超える漁港が被災しました。漁船、養殖施設、市場、水産加工場など水産業にとって重要な施設に加え、造船など関係産業も類を見ない打撃を受けました。特に、漁港数も漁船数も多い岩手県、宮城県では、ほとんどの漁港が深刻な被害を受けました。東洋一といわれる石巻漁港の陸揚げ岸壁も地盤沈下などの被害を受けたのです。津波により、漁船をはじめ、さまざまな船が海底に沈んだり、沖に流されたりしました。また津波によって多くの船が陸上に打ち上げられました。なかには80m前後の大型漁船が港から1kmも離れた住宅街に打ち上げられていた例もありました。漁船の被害数は1万8,936隻、被害漁港数は319漁港にのぼります。湾内には漁具やブイ、建物の残がいが漂い、養殖施設も多数が流失しました。市場や加工施設がなければ水産業は成り立ちません。
東日本大震災の発生から11年が経過しましたが、この間、被災地域では、漁港施設、漁船、養殖施設、漁場等の復旧が積極的に進められていますが、産業としては震災前に戻ってはいないようです。皆さんの御協力・御支援が必要であります。
<2022年2月13日>昨年の福島県沖地震
昨年の2月13日23時過ぎ、福島県沖でMj7.3の地震が発生しました。この地震で宮城県と福島県で最大震度6強を観測しました。津波については、警報・注意報は出されず、若干の潮位変動に留まりました。福島県内では公共施設など247棟に被害があり、道路、インフラ、住宅に大きな被害が発生しました。場所によっては、東日本大震災よりも深刻になりました。福島市内に住む男性が家財道具の下敷きになり死亡、二本松市内で1人が地震の影響で死亡され災害関連死として認定されています。東北地方沖を震源とする地震で震度6弱以上を観測したのは、2011年4月7日の宮城県沖の地震以来約10年ぶりになります。また、日本国内および東北地方で震度6弱以上を観測したのは、2019年6月18日の山形県沖の地震以来約1年8カ月ぶりになりました。
当時、余震という言葉が論議になりました。政府の地震調査委員会は地震翌日の2021年2月14日に臨時の会合を開き、この地震の震源は南北方向に伸びる長さ40kmの断層であるとの見解を示しました。その際に、平田直委員長は、この地震が東北地方太平洋沖地震の余震であるとし、今後の余震活動について「あと10年程度は続くと予想している」と説明しました。一方で、気象庁は2021年4月1日以降は東北地方太平洋沖地震の余震域(福島県沖を含む)で発生する地震を「余震」と表現していません。これは熊本地震の例もあり、余震という言葉が、一般のイメージとして本震より小さいと思われている傾向に配慮したものと考えます。
実は、2016年11月22日にM7.4の地震が発生し宮城県で1mを超える津波が観測されました。宮城県では、はじめ注意報でしたが、その後に警報に切り替わっています。2021年の地震と地震規模はほぼ同じでしたが、その深さやメカニズムが違っており2016年の地震は25kmと2021年の地震よりも浅く、2016年の地震は正断層型であったのに対して昨年の地震は逆断層型でありました。
<2022年2月6日>トンガ海底火山噴火とその後の津波について②
2022年1月15日、南太平洋のトンガ沖での海底火山噴火により引き起こされた津波についての続編です。今回の遠地での津波の特性についてお話します。
日本各地で空振(くうしん)の通過によるとみられる急激な気圧変化が観測された後、潮位が変化していました。今回の津波は、日本へは、通常の津波の到達予想時刻よりも3時間程度早く到達し始めていました。また、海面の昇降の時間間隔(周期)も通常の遠地津波と異なり、数分から10分程度という短い周期で昇降を繰り返していて、遠地津波ではみられない特徴がありました。このような状況から、爆発で生じた『空振』と呼ばれる空気の圧力変化が、海面変動を引き起こし、日本に伝わる過程で増幅したと考えられます。噴火に伴う津波は、山体が崩れて海に流れ込んだり、海底が陥没したりして海面変動が引き起こされます。当初、トンガを襲った津波は火山性地震が原因とされましが、詳しいメカニズムはわかっていません。空振は広がりながら海面を押し下げ、その後、海面は盛り上がるように復元して波を形成します。約8000キロ離れた日本に到達するまでに波が重なり合い、大きくなったものと推察されます。
<2022年1月30日>トンガ海底火山噴火とその後の津波について①
海底噴火と津波発生状況
2022年1月15日、南太平洋のトンガ沖で「フンガ・トンガ―フンガ・ハアパイ」が大噴火しました。大規模噴火を起こした火山島では昨年12月から噴火が断続的に発生していました。今回は噴煙高度などから、20世紀最大級とされる1991年のフィリピン・ピナトゥボ山の大噴火に迫る規模だった可能性があります。海底火山の大規模噴火で、太平洋沿岸の各国に津波が到達しました。トンガ周辺では15mを超える津波が来襲し被害を出しているとの断片的な被害報告(ニュージーランド政府)はありますが詳細はわかっていません。カリブ海、地中海でも津波が観測されました。日本では1.2m、南米ペルーでは2mを超え、車がさらわれて女性2人が死亡しました。米海洋大気局(NOAA)によると、米西部カリフォルニア州やアラスカ州で1m以上の津波を観測されています。
当時の監視と警報
当時、環太平洋津波警報センターにより火山噴火および津波情報は出されましたが、注意程度でありました。日本の気象庁も、ツバル、キリバス、ミクロネシアなど日本に至る途中の地域での大きな潮位上昇はないとの津波情報により、噴火から約6時間後の15日午後7時ごろ、海面変動を0.2メートル未満と予想しました。しかし、同8時ごろから潮位が上昇、11時55分には鹿児島県奄美市で1.2メートルが観測され、追われるように翌16日午前0時15分に奄美群島・トカラ列島に津波警報を出しました。
<2022年1月23日>津波の到達時間について
本日は、津波に関する基礎的な知識を紹介したいと思います。津波から身を守るためには、沿岸などに来襲する前に、避難行動を取ることが最も大切です。この行動を適切に実施するには、どの位の規模の津波がいつ来るかを知り、判断しながら行動をとることが肝心です。そのため気象庁は、地震の後に津波発生の可能性があるときには、津波の高さに加えて、津波【到達】時間を発表します。これは事前のデータベースに基づき、地震の規模や発生位置を入力して、各予測地点で得られる情報で、各津波予報区でもっとも早く津波が到達する時刻です。場所によっては、この時刻よりも1時間以上遅れて津波が襲ってくることもりますので、予想到達時間が過ぎたから津波が来ないと安心してはいけません。
津波を予測するしくみは以下を参照ください。
https://www.data.jma.go.jp/svd/eqev/data/tsunami/ryoteki.html
一方で、津波ハザードマップ等には、津波【影響開始】時間が示されています。これは、地震発生に伴う地殻変動後の水位を初期水位として、それぞれが、沖合のある地点での同水位から50cm(または20cm)上昇するまでに要する時間です。また、津波【浸水開始】時間、第一波【到達(出現)時間】、最大波【到達(出現)時間】、津波【終息(収束)】時間があります。時間ごとの変化を示すものですので、是非、理解しておいて頂きたいと思います。
<2022年1月16日>越村俊一教授、河北文化賞受賞
災害科学国際研究所の越村俊一教授が第71回河北文化賞を受賞しました。『リアルタイム津波浸水被害予測システムの開発と運用による災害レジリエンス向上への貢献』が高く評価されました。(津波研究関係では、第67回:災害科学国際研究所、第56回:首藤伸夫教授が受賞)
越村教授は、2004年のインド洋大津波や2011年の東日本大震災などの巨大津波災害を経験する中で、災害時には津波の高さや到達時間だけでなく、どのような範囲でどのような津波被害になるのかをいち早く予測することが重要であるとの認識を持っていました。津波被害をリアルタイムで予測できるシステムを開発・研究するため、2012年から計算科学に加えて、理学や数学などの関係分野の研究者や民間企業との産学連携の研究チームを発足しています。2015年には総務省のG空間構築事業に採択され、地震発生から迅速に津波の被害を予測する技術システムを提案しています。この研究成果を踏まえて2018年には東北大学と国際航業、エイツー、日本電気が共同で民間会社「RTi-cast」を設立しました。同社は内閣府の防災部門と契約を結び、南海トラフの地域に加えて東日本へ対象を広げ、津波予測システムとして実装されています。大規模な地震発生が起きると自動で津波の高さや浸水範囲、浸水範囲内の人口や建物被害を予測し、30分以内に情報を配信できるシステムです。これらの実績とこの成果が災害レジリエンス向上へ貢献するということで高い評価を頂きました。レジリエンスとは、しなやかさや回復力という意味を持つ言葉で、事前防災に加えて、発災後に、予測情報をもとにできるだけ対応を早め、2次被害などを抑止し、早い復旧・復興を目指すことを目的としています。
<2022年1月9日>千島海溝・日本海溝での巨大地震津波の被害想定
日本海溝・千島海溝沿いの巨大地震対策検討ワーキンググループは令和2年4月21日に中央防災会議「防災対策実行会議」において設置が決定され、検討が続けられてきました。 このほど、日本海溝・千島海溝で想定すべき最大クラスの地震・津波の検討が進んだことから、これに対する被害想定、防災対策の検討を行い、その結果が昨年12月21日に発表されました。
延べ9回の会議で議論を行い、さまざまな状況を想定して、被害の様相と定量的な被害結果がまとまりました。季節や時間帯ごとに発生の条件を設定し、最悪の場合、死者が19万9千人に上るとの想定を出しました。ただし、避難意識を向上させれば8割を低減できるとの評価も出しています。今回は、地域性を考慮し冬期での低体温症要対処者も推定しており、日本海溝モデルで4万人、千島海溝モデルで2万人という推定結果が出ています。津波堆積物の調査から、二つの巨大地震は、直近で17世紀にあったとする痕跡があり、3~400年間隔で発生しているとみられることから、それぞれの地震発生の可能性は切迫していると言えます。
地域住民や地元自治体は、冬の地震発生を想定して、防寒着を着る時間や、積雪などによる避難時間への影響などを考慮した避難訓練を実施したり、寒さをしのぐ物資を確保したりと、より一層の対策を連携しながら進める必要があります。
<2022年1月2日>2022年の予定
今年は東日本大震災から11年、復興と次への防災に向けて、継続・発展の10年の節目からの最初の年が始まりました。今年の予定をいくつか紹介させていただきます。
昨年仙台で開催された『21世紀文明シンポジウム』、今年は2月に東京で開催されます。テーマは「迫り来る巨大災害への備え~首都直下地震や南海トラフ地震の減災復興戦略」です。
3月6日、仙台防災未来フォーラムが仙台国際センター展示棟で開催されます。恒例のサバメシ・ハンドブック配付も行う予定です。東北大学災害科学国際研究所関連では、定例シンポジウム、BOSAIフォーク、イオン共同研究部門活動報告などを予定しています。
国際的には、6月に国連防災機関グルーバルプラットフォーム(インドネシア)及び9月アジア防災閣僚会議(オーストラリア)が予定されています。
東北大学災害科学国際研究所は、4月に発足10年を迎えます。7部門37分野で発足した研究所も、産官学の連携を強めながら、被災地での復興支援や国内外の災害対応、防災活動の推進に邁進して参りました。昨年から研究部門の再編成や防災実践推進部門を新設し、災害科学の深化と共に実践的防災学の展開を進めています。
10年前、2012年を振り返りますと風水害が多く発生していました。 5月6日、茨城県つくば市付近で風速70~92m/秒に達する竜巻が発生し、大きな被害が発生、7月の2012年九州豪雨では、活発化した前線により九州地方で記録的な大雨となり、矢部川などで堤防決壊がありました。